資生堂、有用成分を素早く肌の隅々まで浸透させより高いスキンケア効果を期待できる新化粧水処方技術を開発 ~美白有効成分m-トラネキサム酸が、素早くより多く、肌内部へ浸透することを確認~

株式会社資生堂

 資生堂は、化粧水に含まれる有用成分を効率よく均一に肌内部へ浸透させ、隅々まで届ける、より高いスキンケア効果が期待できる新たな化粧水処方技術を開発しました。水をはじく性質をもつ肌の上では、化粧水の塗布膜が不均一な状態になりやすいことに着目し、特定の自然由来成分を用いて肌と親和性の高いベシクル構造※1を構築することで、肌の上に均一な塗布膜を広範囲に形成することに成功しました。また、新規に確立した分析技術※2を用いて、美白*有効成分m-トラネキサム酸※3の浸透促進評価を行ったところ、本技術を活用した製剤では、一般的な化粧水処方技術を活用した製剤と比較して、素早くより多く、肌内部へm-トラネキサム酸が浸透することを確認しました。

今後、本技術を、お客さまがより一層高い効果を実感できる、新しいスキンケア製剤の開発へと応用していきます。研究成果の一部は、第33回国際化粧品技術者会連盟バルセロナ大会2023(IFSCC※4 Conference 2023) (2023/9/4~9/7)にて発表しました。

*美白とは、メラニンの生成を抑え、シミ・そばかすを防ぐこと。

※1 ベシクル構造:分子内に親水基と疎水基の両方を持つ両親媒性の脂質や界面活性剤の二分子膜からなる小胞体のこと。脂質小胞体ともよばれる。

※2 資生堂、肌内部へ浸透した有用成分の分布を 細胞レベルの解像度で可視化し、機能性や安全性の加速へ(2024年)

https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000003768&rt_pr=trp98

※3 メラニンの生成を抑え、シミ・ソバカスを防ぐ効能効果を持つ医薬部外品の有効成分として2002年厚生労働省から認可された資生堂独自開発の美白有効成分。m‐トラネキサム酸の m はメラニンの生成を抑える効果を表しています。

※4 IFSCC: The International Federation of Societies of Cosmetic Chemists

《研究の背景》

 これまで、当社のスキンケア製剤における化粧水処方技術は発展を続け、様々な処方を生み出してきました(図2)。今でも多くの化粧水に活用されているミセル可溶化技術※5から、エモリエント効果の付与やべたつかずなめらかな塗布後の感触を実現した処方技術に続き、今回は有用成分をすばやく浸透させることでより高いスキンケア効果を期待できる処方技術を開発することを目指しました。肌表面にある角層は、油と親和性が高く、水をはじく性質があるため、水を多く含む化粧水は肌上で不均一な状態になりやすいことから、有用成分を効率よく均一に肌へ浸透させることは難しいとされてきました。そこで、生物が持つ特徴的な構造などを模倣する「バイオミメティクス」※6に着目し、肌を模した構造体を有することで肌との親和性を高め、化粧水有用成分の浸透性も高められるのではないかと考え、本研究を進めました。

※5界面活性剤の複数の分子が水中で集合して小さな粒として分散し、香料などの油性成分を粒の中に取り込む技術。

※6バイオミメティクス(生物模倣):生物が持つ特長的な構造や機能を新しい技術の開発やものづくりに活かそうとする科学技術。

※7ポリグリべシクル:自然由来成分のポリグリセリン脂肪酸エステルから形成される構造体。

《細胞膜を模したベシクル構造の開発と活用した化粧水製剤の特徴》

 当社のこれまでの化粧水研究の知見をもとに研究を進めました。表面張力が低い液体は疎水性の肌表面に素早く展開し、ムラなく広がることにより、有用成分が効率よく肌に浸透することが期待されます。低い表面張力をもつ製剤を作り出すために、細胞膜の構造を模したベシクル構造に着目しました。また、環境や安全性への関心が高いお客さまのニーズに対応するため、自然由来成分である200種のポリグリセリン脂肪酸エステルからスクリーニングを行いました。その結果、細胞膜を模したベシクル構造を形成できる成分を見出し、製剤中にベシクル構造を作ることに成功しました(図3)。本技術を活用した製剤は、一般的な化粧水技術を応用した製剤と比べて、表面張力が低く(図4)、素早く液体が隅々まで肌上に広がることができるため、なじみが早く、高い浸透感を実現しました(図5)。

《製剤の薬剤浸透効果》

 ヒトの皮ふを用いてメラニン生成抑制効果を有するm-トラネキサム酸の浸透促進効果の評価を行ったところ、本技術を活用した製剤は、一般的な化粧水処方技術を活用した製剤と比較して素早くより多くのm-トラネキサム酸を肌へ浸透させることが、新規に確立した分析技術によって確認されました(図6,7)。本技術のベシクル構造は肌上に均一に展開する膜に形を変化することで、製剤の表面張力が著しく低下し、肌の隅々まで素早く広がり、しっかりと薬剤を肌に届けることができます。

《今後の展望》

 本技術は、水溶性の様々な薬剤に応用することが可能と考えられます。今後、使用感やスキンケアの効果に対する多様なお客さまニーズを満たし、お客さまのあらゆる肌悩みに対して有効なソリューションの提供を目指します。

R&D戦略について:

R&D戦略3本柱の1つである「Skin Beauty INNOVATION」のもと、お客さまの求める化粧品の価値を強みのマテリアルサイエンスで追求し実現する「化粧品処方技術」領域にて、本研究を進めました。

・2022年統合レポート(ビューティーイノベーション)

https://corp.shiseido.com/report/jp/2022/value_creation/innovation/?rt_pr=trp98

・キーワード

Skin Beauty INNOVATION、スキンケア、浸透

▼ ニュースリリース

https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000003784&rt_pr=trp98

▼ 資生堂 企業情報

https://corp.shiseido.com/?rt_pr=trp98

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会社概要

株式会社資生堂

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URL
https://corp.shiseido.com/jp/
業種
製造業
本社所在地
東京都中央区銀座7-5-5
電話番号
03-3572-5111
代表者名
魚谷 雅彦
上場
東証1部
資本金
645億円
設立
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