イエメン:紛争による子どもの死傷者が1万人に~経済崩壊の深刻な影響も【プレスリリース】

公益財団法人日本ユニセフ協会

地雷を踏み両足を失った17歳のイブラヒムくん。手術を受け、義足を装着し歩けるようになった。(2021年10月14日撮影) © UNICEF_UN0538380_地雷を踏み両足を失った17歳のイブラヒムくん。手術を受け、義足を装着し歩けるようになった。(2021年10月14日撮影) © UNICEF_UN0538380_

【2021年10月19日 ジュネーブ 発】

紛争下にあるイエメンを訪問したユニセフ(国連児童基金)広報官のジェームズ・エルダーが、国連の定例記者会見で報告した要旨を以下の通りお知らせします。

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2015年3月に戦闘が始まって以来、イエメンで死傷した子どもの数が1万人に達するという、不名誉な節目を迎えました。これは、毎日4人の子どもが死傷していることに相当します。この数はもちろん、国連が確認できた件数です。さらに多くの、家族しか知らない、記録されることのない子どもたちの犠牲があります。
 

首都サヌアにある仮設教室として設置されたユニセフのテント中で、授業を受ける子どもたち。(2021年10月11日撮影) © UNICEF_UN0536759_首都サヌアにある仮設教室として設置されたユニセフのテント中で、授業を受ける子どもたち。(2021年10月11日撮影) © UNICEF_UN0536759_

今回、イエメンの北部および南部を訪問し、何人もの子どもたちに出会い、小児科医や教師、看護師などから話を聞きました。彼らの生活は、崩壊の瀬戸際にあるこの国の状況を映す鏡のようでした。

世界最悪と言われるイエメンの人道危機は、4つの脅威が悲劇的に重なり合って起こっています。それは、(1)暴力的で長期化する紛争、(2)経済の崩壊、(3)あらゆる支援システム(保健、栄養、水と衛生、保護、教育など)の荒廃、そして(4)支援のための資金不足です。

イエメンの現状を表す主な数値は以下の通りです。
  • 子どもの5人に4人に相当する1,100万人以上の子どもたちが人道支援を必要としている
  • 40万人の子どもたちが重度の急性栄養不良に苦しんでいる
  • 200万人以上の子どもたちが学校に通っておらず、さらに400万人が中途退学の危機にある
  • 教師の3分の2にあたる17万人以上が、4年以上にわたって定期的な給与を受け取っていない
  • 170万人の子どもたちが、暴力のために国内避難民となり、特にマリブ周辺での暴力の激化に伴い、自宅から避難する家族がさらに増えている
  • 1,500万人もの人々(そのうち半数以上の850万人が子ども)が、安全な水、衛生設備を利用できない状況にある

現在の資金規模では、戦闘が終結しない限り、ユニセフはこうした子どもたちすべてに支援を届けることはできません。つまり、さらなる国際支援がなければ、この危機に何の責任もない多くの子どもたちが命を落とすことになるのです。

こうした状況の中でも、ユニセフは以下のような活動を続けています。
  • 4,000カ所のプライマリー・ヘルスケア・センターと130カ所の栄養治療センターで、重度の急性栄養不良の治療を支援
  • 四半期ごとに150万世帯の約900万人を対象に緊急現金給付支援を実施
  • 500万人以上の人々に安全な飲料水を提供
  • 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックに対応し、COVAXを通じた新型コロナワクチンの輸送を支援
  • 戦闘で負傷した子どもたちを含む、最も弱い立場にある子どもたちに対して、心理社会的支援や地雷リスク教育、直接的な支援を実施
  • 数千人のコミュニティ保健員の研修や派遣を通じて、遠隔地の農村部に暮らす200万人以上の人々に保健・医療サービスを提供
  • 今年だけでも、62万人の子どもたちが公式および非公式教育を受けられるよう支援し、500万人以上の子どもたちにポリオを含むワクチンを提供
 

栄養不良で首都サヌアの病院に入院している、生後10カ月のハウラちゃん。(2021年10月10日撮影) © UNICEF_UN0536104_Ahmed栄養不良で首都サヌアの病院に入院している、生後10カ月のハウラちゃん。(2021年10月10日撮影) © UNICEF_UN0536104_Ahmed

こうした努力にもかかわらず、イエメンの人道状況は非常に深刻です。経済は危機的状況にあり、暴力が激化した2015年以降、GDPは40%も下がっています。膨大な数の人々が職を失い、家庭の収入は激減しています。多くの医療従事者、教師、エンジニア、ごみ収集作業員など公務員の約4分の1が、不定期にしか払われない給与に頼っています。

学校が避難所として使用されていたり、破壊されていたりすることで、教室には200人もの子どもがすし詰めになり、そこで教えているのは無給の教師です。重度の栄養不良の乳児の治療をしていた小児科医は、今年一度も給与を受け取っていませんでした。それでも、彼女は地域に貢献し続けています。しかし、こうした人々は自分の子どもを養うために、宝飾品から調理用の鍋まであらゆるものを売らざるを得ないのです。

イエメンの子どもたちは、食べ物がないから飢えているのではなく、家族が食べ物を買う余裕がないから飢えているのです。おとなたちが続ける戦争によって、子どもたちが飢え、最大の敗者となっているのです。
 

アデンにある病院の栄養不良病棟で過ごしている親子。(2021年10月13日撮影) © UNICEF_UN0538422_アデンにある病院の栄養不良病棟で過ごしている親子。(2021年10月13日撮影) © UNICEF_UN0538422_

ユニセフは、2022年半ばまでのイエメンでの活動資金として、2億3,500万米ドル以上を緊急に必要としています。資金が確保できなければ、厳しい状況下にいる子どもたちへの重要な支援を縮小または停止せざるを得なくなります。

資金は非常に重要です。しかしそれだけではなく、戦争を終わらせなければなりません。ユニセフは、あまりにも長く戦闘を続けている紛争当事者と、彼らに影響力を持つ人々に、戦闘の停止を強く求めます。

イエメンは、子どもにとって世界で最も困難な場所です。そして、信じられないことに、その状況はさらに悪化しています。                   

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■ ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念を様々な形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。 https://www.unicef.or.jp/
※ ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する33の国と地域を含みます
※ ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています

■ 日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、先進工業国33の国と地域にあるユニセフ国内委員会のひとつで、日本国内において民間として唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。 https://www.unicef.or.jp/

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URL
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業種
官公庁・地方自治体
本社所在地
東京都港区高輪4-6-12 ユニセフハウス
電話番号
03-5789-2016
代表者名
赤松良子
上場
未上場
資本金
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設立
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