新型コロナウイルス:消耗症の子ども、670万人増加のおそれ【プレスリリース】

ユニセフなど国連4機関が新報告書

サン・ペドロの保健所で赤ちゃんにおかゆを与える母親。(コートジボワール、2020年5月撮影) © UNICEF_UNI330294_Frank Dejonghサン・ペドロの保健所で赤ちゃんにおかゆを与える母親。(コートジボワール、2020年5月撮影) © UNICEF_UNI330294_Frank Dejongh

【2020年7月27日 ニューヨーク 発】

2020年、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによる社会や経済への影響として、消耗症に苦しみ、重度の栄養不良に陥る恐れのある5歳未満の子どもが670万人増えると、ユニセフ(国連児童基金)は本日警鐘を鳴らしました。

医学専門誌ランセットで発表された分析によると、これらの80パーセントはサハラ以南のアフリカと南アジアの子どもであるとされています(半数以上は、南アジア)。

「最初のCOVID-19の症例が報告されてから7カ月が経ち、感染にとどまらないパンデミックの影響が子どもたちに及んでいることがますます明らかになっています」とユニセフ事務局長のヘンリエッタ・フォアは述べました。「家庭の貧困と食料不安の比率が高まっています。基本的な栄養サービスとサプライチェーンが中断し、食料価格は急騰しました。その結果、子どもの食事の質が低下し、栄養不良の割合が高まるのです」

消耗症は命を脅かす栄養不良の形態です。子どもは痩せ細り、弱くなり、死に至ったり、成長、発達、学習におけるリスクを高めます。ユニセフによると、パンデミック以前の2019年には4,700万人の子どもがすでに消耗症でした。緊急に行動しなければ、消耗症に苦しむ世界の子どもは年間で5,400万人に達し、2000年代以降見られなかった割合の高さを世界でもたらすでしょう。
 

モプティの自宅ですぐに食べられる栄養治療食(RUTF)を口にする、急性栄養不良に苦しむ生後6カ月のアイサタちゃん。(マリ、2019年10月撮影) © UNICEF_UNI287192_Dickoモプティの自宅ですぐに食べられる栄養治療食(RUTF)を口にする、急性栄養不良に苦しむ生後6カ月のアイサタちゃん。(マリ、2019年10月撮影) © UNICEF_UNI287192_Dicko

ランセットの分析によると、COVID-19の社会や経済への影響により、5歳未満の子どもたちが消耗症になる割合が、今年低・中所得国で14.3パーセント増える可能性があります。このような栄養不良の増加によって、子どもの死亡数は1カ月あたり1万人以上増加し、その半数以上がサハラ以南のアフリカで起こると推定されます。

一方、子どもの消耗症の増加は氷山の一角に過ぎないと各国連機関は警鐘を鳴らしています。COVID-19による食事の質の低下と栄養サービスの中断の結果、その他の形態の子どもと女性の栄養不良(発育阻害、微量栄養素欠乏症、過体重と肥満など)も増加します。ユニセフはパンデミック初期の段階から、命を守る不可欠な栄養サービスの提供範囲(カバレッジ)が全体で30パーセント低下していることを示唆しています。一部の国で、これらのサービスの中断率は、ロックダウンの下75~100パーセントに達しています。例えばアフガニスタンとハイチでは、感染の恐れと医療従事者の防護具の不足により、子どもたちの重度の消耗症治療のための入院が、それぞれ推定40パーセントと73パーセント減少しました。ケニアでは、入院が40パーセント減少しました。また、COVID-19により、世界で2億5,000万人以上の子どもがビタミンAを補給する機会を失っています。

各国における消耗症の増加予測と、栄養サービスの年平均25パーセントの減少予測を合わせると、5歳未満の子どもの死亡が年間12万8,605人増える恐れがあります。これは、ビタミンA補給、重度の消耗症の治療、幼児の栄養改善の促進、妊娠中の女性への微量栄養素補給の提供が15~50パーセント中断するという予測を反映したものです。
 

エル・ファーシルの栄養不良の子どもたちのためのセンターで、母乳育児や栄養ある食事、保健衛生の大切さについて、カウンセラーから話を聞く重度の栄養不良の子どもを持つ母親たち。(スーダン、2019年11月撮影) © UNICEF_UNI233942_Nooranエル・ファーシルの栄養不良の子どもたちのためのセンターで、母乳育児や栄養ある食事、保健衛生の大切さについて、カウンセラーから話を聞く重度の栄養不良の子どもを持つ母親たち。(スーダン、2019年11月撮影) © UNICEF_UNI233942_Nooran

同じく本日発表されたランセット報告書の解説で、ユニセフ、FAO(国連食糧農業機関)、国連WFP(国連世界食糧計画)、世界保健機関(WHO) の各機関の長は、パンデミックが、特に低・中所得国において、幼い子どもの栄養状態を悪化させると警鐘を鳴らしました。食事の質の低下、栄養サービスの中断、パンデミックによる影響のために、より多くの子どもと女性が栄養不良に陥っています。
 

 

各国連機関は、現在から年末まで、最も脆弱な国々で母子の栄養を守るため、緊急に24億米ドルの資金支援を要請します。国連4機関の長は、政府、市民、ドナー、および民間部門に対し、以下の方法で子どもの栄養の権利を守るよう呼びかけます:
  • 食品生産者、加工業者、小売業者を保護することにより、COVID-19対応の基盤として、栄養価が高く、安全で手頃な価格の食事へのアクセスを守る。貿易禁止を阻止し、食品市場を必須サービスに指定する。
  • 母乳育児の保護、乳児用調製粉乳の不適切なマーケティングの防止、栄養価の高い多様な食品への子どもと女性のアクセス確保など、母子の栄養サポートに投資する。
  • 他の命を守る栄養サービスを拡充しながら、子どもの消耗症の早期発見と治療のためのサービスを再開・拡大する。
  • 休校の間、宅配や持ち帰り用の配給、現金またはバウチャーを通じて、弱い立場に置かれた子どもたちへの栄養価が高く安全な学校給食の提供を維持する。
  • 最も貧しく最も影響を受けている世帯に対し、栄養強化食品へのアクセスを含む、栄養価の高い食事と基本的なサービスへのアクセスを守るための社会的保護を拡大する。
 

首都ヌアクショットでカメラに笑顔を見せる男の子たち。(モーリタニア、2020年7月15日撮影) © UNICEF_UNI350994_Pouget首都ヌアクショットでカメラに笑顔を見せる男の子たち。(モーリタニア、2020年7月15日撮影) © UNICEF_UNI350994_Pouget

ユニセフの「再創造 (Reimagine)」キャンペーンは、パンデミックが子どもたち、特に最も弱い立場に置かれた子どもにとって長期的な危機にならないようにすることを目的としています。ユニセフは、COVID-19の影響下にある世界において行動を起こし、取り戻し、世界を再創造するユニセフの取り組みへの参加を、保護者、政府、市民、ドナー、民間部門に対して緊急に呼びかけています:

・行動を起こす(Respond)
感染症の蔓延を防ぎ、患者を助け、人々の命を守るために自らの命を危険にさらしながら最前線で働く労働者たちを守るために行動しなければなりません。

・取り戻す(Recover)
感染拡大のペースが鈍化したとしても、各国は引き続き子どもたちへの影響を緩和し、生じた被害に対処しなければなりません。地域社会はまた、再建と感染再燃の防止のために、国境を越えて協力しなければなりません。

・再創造する(Reimagine)
COVID-19から何かを学んだとしたら、それはシステムや政策が、危機下だけでなく、常に人々を守らなければならないということです。世界がパンデミックから回復し始めた今こそ、より良い社会の土台を築く時です。

「子どもたちがパンデミックの隠れた被害者になることを容認してはなりません。短期的視野と長期的視野の双方をもつことによって、パンデミックとそれが子どもに及ぼす二次的影響によってもたらされる課題に取り組むだけでなく、子どもと若者の明るい未来を形づくっていかなければならないのです」(フォア)

* * *

■ 新型コロナウイルスに関するユニセフの情報はこちらからご覧いただけます。
特設サイト: https://www.unicef.or.jp/kinkyu/coronavirus/
各種ガイドライン: https://www.unicef.or.jp/kinkyu/coronavirus/info/

■ ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念を様々な形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。( www.unicef.org )
※ ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する33の国と地域を含みます
※ ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています

■ 日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、先進工業国33の国と地域にあるユニセフ国内委員会のひとつで、日本国内において民間として唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。( www.unicef.or.jp )

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会社概要

公益財団法人日本ユニセフ協会

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URL
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業種
官公庁・地方自治体
本社所在地
東京都港区高輪4-6-12 ユニセフハウス
電話番号
03-5789-2016
代表者名
赤松良子
上場
未上場
資本金
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設立
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