AWSとKEK、日本のアカデミアにおける研究DXを加速

アマゾンジャパン合同会社

  • 日本の創薬を支えるタンパク質の構造解析をAWSのクラウドで構築した「GoToCloud」プラットフォームを利用して7倍高速化、60%の管理コスト削減を実現、さらに85%の削減を目指す
  • AWSは日本で300万人以上が利用する学術情報ネットワーク(SINET6)に、AWS Direct Connectを利用して複数の100Gbps物理回線を新たに敷設
Amazon.com, Inc. の関連会社であるアマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社(以下、AWS)と高エネルギー加速器研究機構(以下、KEK)は、AWSクラウドを活用するKEKの「GoToCloud」*プラットフォームの構築および今後の展開について連携を強化することを発表いたしました。「GoToCloud」は、タンパク質の構造解析にかかる時間およびコストを大幅に削減し、構造生物学研究を含む日本の科学研究分野におけるデジタルトランスフォーメーション(研究DX)を加速させます。新型コロナウイルス感染症の世界的流行を背景に、ワクチン開発につながる抗体や薬剤のターゲットとして使われるタンパク質に関する研究が増加するに伴い、タンパク質の構造解析需要も拡大しています。KEKとAWS はこの度の連携強化により、生命の起源の理解や創薬研究など様々な研究領域において、タンパク質の構造解析を利用する全ての日本の研究者が、世界トップクラスの研究成果を数多く生み出していくことを支援します。

*GoToCloud: KEKがタンパク質の構造解析を行うためにAWSのクラウドサービスを活用して構築したプラットフォームで、他の研究機関などにも展開を進めるプロジェクト

タンパク質の構造は従来、X線結晶解析で調べられてきましたが、タンパク質の立体構造を3Dで詳細に解析するクライオ電子顕微鏡と呼ばれる生体分子観察技術も併用することで大幅な進展が達成されており、ここ4年間で国内だけでも台数は3倍以上になりました。クライオ電子顕微鏡によるタンパク質の構造解析の需要が急増する一方、撮影後の画像データの解析にかかる計算量が膨大であることが課題でした。KEKでは高まる需要に対応するため、早急に計算時間を短縮する必要があると考えました。そこで2021年、従来のオンプレミス型のインフラから、ストレージやコンピュートなど幅広く奥深いAWSのクラウドサービスを活用した「GoToCloud」環境の構築を開始しました。

KEKが構築する「GoToCloud」環境では、クライオ電子顕微鏡で取得した膨大な枚数のタンパク質粒子の2D画像から、立体構造を決定する高度なデータ解析計算やデータ管理を高速かつ高コストパフォーマンスに行うため、AWS ParallelCluster によるクラウド High Performance Computing (HPC) 環境、Amazon FSx for Lustre による高速処理用ストレージ、およびAmazon Simple Storage Service (Amazon S3) による低コストの大容量データ保管用ストレージが活用されています。特に AWS ParallelCluster では、Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2) の多様なインスタンスタイプを活用し、処理内容に応じて適切なCPUやGPUを必要な時に必要な量を確保することで、計算資源の最適化が図られコスト削減にもつながっています(図表参照)。AWSのクラウドサービスで構築した「GoToCloud」環境では、これまでKEKが活用してきたオンプレミス環境と比較して、およそ半年の運用ですでにインフラ構築や管理に要するコストを60%削減しており、今後さらに85%の削減を目指しています。そしてタンパク質の構造解析計算の主要部分に要する時間についても、約7分の1の短縮を実現しています。また「GoToCloud」環境では、高性能のリモートディスプレイプロトコルであるAWSのNICE-DCVによるリモートデスクトップ機能で、同一環境を複数のユーザー向けに共有・複製し、解析環境と入出力データを共有することが可能となり、世界中の研究者や製薬会社とアクセス管理などのセキュリティを確保したうえで、構造解析に関連する研究の連携が容易となりました。さらに、コロナ禍においても在宅勤務でのデータ解析やワークショップ開催、学術指導もオンラインで簡便に行えるようになりました。
 

図表:AWSのクラウドサービスを活用して構築されたKEKの「GoToCloud」環境図表:AWSのクラウドサービスを活用して構築されたKEKの「GoToCloud」環境


今後さらに機械学習などを含むAWSのクラウドの活用を進め、KEKはタンパク質の立体構造1つを明らかにする時間を、2週間から1日程度まで縮めることを目指しています。データ解析の自動化が進むことによりKEKは、日本および世界の科学や医療に寄与する研究成果創出への取り組みを一層加速させることができるほか、AWSのプロトタイプの開発支援の仕組みを活用したユーザインターフェースの開発により、研究者の「GoToCloud」環境の利用を容易にします。

高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所 教授/構造生物学研究センター センター長 千田 俊哉氏は次のように述べています。「ライフサイエンスの更なる進歩だけでなく、未だに治療法のない疾病を治すために、革新的な新薬をより早く、より効率的に開発することが求められています。タンパク質の立体構造情報は、これらの進歩には欠くことのできないものです。AWSは、世界のライフサイエンスおよびヘルスケア業界にとって信頼できる技術およびイノベーションのパートナーであり、唯一無二の信頼性、セキュリティ、およびデータプライバシーを提供しています。クラウドの拡張性と敏捷性を利用することで、複雑な作業を自動化し、コスト効率よく研究を加速させ、科学者がタンパク質の立体構造解析を高速化させることでライフサイエンス研究や創薬プロジェクトがさらに発展することを期待しています」

KEKとの連携強化に加えAWSは本日、AWS Direct Connectにより日本のアカデミア全体に対する支援も一層強化することを発表いたしました。日本全国にある900以上の大学や研究機関が参加し、300万人以上のユーザーを擁する学術情報基盤「学術情報ネットワーク(SINET6)」への支援の一環として、複数の100Gbps物理回線接続を追加構築します。国立情報学研究所(NII)が運用・整備し、本格運用が開始されたSINET6とAWSのアジア太平洋(東京)リージョンの間には、10Gbps複数本の専用回線がすでに敷設されています。この度AWS Direct Connectを利用して複数の100Gbps物理回線を新たに敷設することで、日本の大学や公的研究機関は従来よりも10倍のネットワーク帯域となる回線環境でSINETクラウド接続サービスの利用が可能となります。KEKは、この高速なSINET6とAWS間の100Gbps回線を日本で最初に利用する研究機関の一つになる見込みで、クラウド上で大容量のデータを扱うことが可能となります。

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 執行役員 パブリックセクター 統括本部長 宇佐見 潮は、次のように述べています。「KEKとの連携強化により、タンパク質の構造解析を加速させる挑戦に貢献でき、日本の研究分野におけるDXを支援できることを光栄に思います。また、今回発表したSINET6とAWSのアジア太平洋(東京)リージョン間のネットワーク増強により、SINET6の超高速・大容量という利点とAWSクラウドの俊敏性・柔軟性の利点が組み合わさり、日本の研究開発がより一層加速すると確信しています。今後も引き続きAWSは、KEK様および他の大学・研究機関との連携強化と、SINET6への投資により、日本の研究DXを支援していきます」

クライオ電子顕微鏡について
精製したタンパク質などの生体高分子を溶かした液体を急速に凍らせ、液体窒素で-200℃ぐらいの低温に保ったまま観察できる透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて取得した2D画像から、コンピューターによる画像処理で生体高分子の立体構造を決定します方法(この技術を開発した3名は2017年、ノーベル化学賞を共同受賞しています)。タンパク質は、電子顕微鏡内部の高真空にさらされると干からびて形が変わってしまいますが、薄い氷の中に閉じ込めて保護・固定して観察します。歴史の長いX線によるタンパク質の構造解析では、良質な結晶が必須で作成する負担が大きいですが、クライオ電子顕微鏡ではその必要がないため、結晶化が困難な巨大なタンパク質やその複合体の構造解析に力を発揮しています。ただ氷の中のタンパク質の向きはまちまちであるため、別々に撮影した膨大な数の2D画像からタンパク質の向きがそろったものをうまく重ね合わせて立体構造を再現する複雑な計算をしなければなりません。そのため、膨大な計算資源が必要になります。

高エネルギー加速器研究機構について
高エネルギー加速器研究機構(KEK)は、電子や陽子などを加速する粒子加速器と呼ばれる装置を使う加速器科学の世界的拠点の一つです。国内外の研究者と共同研究を行うとともに、共同利用の場を提供する大学共同利用機関法人として、素粒子、原子核の謎の探究や物質、生命現象の理解に取り組んでいます。ノーベル賞との関わりも深く、ここで行われた実験による成果で、物理学賞と化学賞が生まれています。前身の旧文部省高エネルギー物理学研究所は1971年に創設され、昨年50周年を迎えました。現在、茨城県つくば市と東海村に拠点を持っています。詳細については以下のURLをご覧ください。https://www.kek.jp

アマゾン ウェブ サービスについて
アマゾン ウェブ サービス(AWS)は約15年にわたり、世界で最も包括的かつ幅広く採用されたクラウドサービスになっています。AWSは、コンピューティング、ストレージ、データベース、ネットワーク、分析、機械学習および人工知能(AI)、モノのインターネット(IoT)、モバイル、セキュリティ、ハイブリッド、仮想現実(VR)および拡張現実(AR)、メディア、ならびにアプリケーション開発、展開および管理に関する200種類以上のフル機能のサービスを提供しています。AWSのサービスは、26のリージョンにある84のアベイラビリティーゾーン(AZ)でご利用いただけます。これに加え、オーストラリア、カナダ、インド、インドネシア、イスラエル、ニュージーランド、スペイン、スイス、アラブ首長国連邦を含む8つのリージョンにおける24のAZの開設計画を発表しています。AWSのサービスは、アジリティを高めながら同時にコストを削減できるインフラエンジンとして、急速に成長しているスタートアップや大手企業、有数の政府機関を含む数百万以上のアクティブなお客様から信頼を獲得しています。AWSの詳細については以下のURLをご参照ください。https://aws.amazon.com/

Amazon について
Amazonは4つの理念を指針としています。お客様を起点にすること、創造への情熱、優れた運営へのこだわり、そして長期的な発想です。Amazonは、地球上で最もお客様を大切にする企業、そして地球上で最高の雇用主となり、地球上で最も安全な職場を提供することを目指しています。カスタマーレビュー、1-Click注文、パーソナライズされたおすすめ商品機能、Amazonプライム、フルフィルメント by Amazon(FBA)、アマゾン ウェブ サービス(AWS)、Kindle ダイレクト・パブリッシング、Kindle、Career Choice、Fire タブレット、Fire TV、Amazon Echo、Alexa、Just Walk Out technology, Amazon Studios、気候変動対策に関する誓約(The Climate Pledge)などは、Amazonが先駆けて提供している商品やサービス、取り組みです。Amazonについて詳しくはAmazon Newsroom (http://amazon-press.jp)およびAmazon ブログ (http://blog.aboutamazon.jp)から。

すべての画像


ダウンロード
プレスリリース素材

このプレスリリース内で使われている画像ファイルがダウンロードできます

会社概要

アマゾンジャパン合同会社

5,383フォロワー

RSS
URL
http://www.amazon.co.jp/
業種
商業(卸売業、小売業)
本社所在地
東京都目黒区下目黒1-8-1 ARCO TOWER ANNEX
電話番号
-
代表者名
ジャスパー・チャン
上場
未上場
資本金
-
設立
-