気候変動と商業的圧力が子どもたちを脅かすーユニセフ・ランセット・WHO新指標【プレスリリース】

日本の持続可能性は180国中159位

小学校の側にある屋台で購入したファストフードを食べるバンクラデシュの男の子たち。(2019年9月撮影) © UNICEF_UNI210978_Sujan小学校の側にある屋台で購入したファストフードを食べるバンクラデシュの男の子たち。(2019年9月撮影) © UNICEF_UNI210978_Sujan

【2020年2月19日 ニューヨーク/ロンドン/ジュネーブ 発】

子どもの健康、環境、未来を適切に守っている国はありません。ユニセフ(国連児童基金)、世界保健機関(WHO)、ランセットによって召集された、世界の、子どもと若者の保健専門家40人以上からなる委員会が本日、報告書「世界の子どもたちの未来のゆくえ」(原題:A Future for the World’s Children?)を発表しました。

本報告書は、世界のすべての子どもや若者の健康と未来が、生態系の劣化、気候変動、搾取的なマーケティング慣行の差し迫った脅威に晒されており、それによって子どもたちは、過度に加工されたファストフード、甘い飲み物、アルコール、タバコの消費を促されていると指摘しています。

「子どもと若者の健康は過去20年間で改善した一方で、現在の進歩は停滞しており、今や逆行しようとしています」と、元ニュージーランド首相で委員会の共同議長であるヘレン・クラークは述べました。「低・中所得国の5歳未満児約2億5,000万人は、発育阻害と貧困の代理指標から、自分の能力を最大限に伸ばすことができないリスクがあると推定されています。しかし、さらに大きな懸念事項は、世界のすべての子どもが今、気候変動と商業的圧力による脅威に実際に直面しているということです。国は、子どもと若者の健康へのアプローチを徹底的に見直し、今日の子どもだけでなく、将来引き継がれる世界を守らなければなりません」(クラーク)。

【気候変動の激化はすべての子どもたちの未来を脅かす】
 

干ばつによって家を追われ、国内避難民キャンプの移動式クリニックで重度の影響で急性栄養不良の治療を受けるソマリランドの3歳の男の子。(2019年4月撮影) © UNICEF_UN0304530_English干ばつによって家を追われ、国内避難民キャンプの移動式クリニックで重度の影響で急性栄養不良の治療を受けるソマリランドの3歳の男の子。(2019年4月撮影) © UNICEF_UN0304530_English

本報告書には、180カ国の新しいインデックスが記載され、子どもの豊かさが比較できるようになっています。具体的には、子どもの生存と幸福をはかる指標として保健、教育、栄養、持続可能性の代理指標として温室効果ガス排出量、そして公平性や所得格差を含んでいます。(注)

報告書によると、最貧国は子どもの健康的な生活を支援するためにより多くのことを行う必要がありますが、特に裕福な国々による過剰な二酸化炭素の排出は、すべての子どもの未来を脅かしています。現在の予測通り、2100年までに地球温暖化による気温上昇が4度を超えると、海面上昇、熱波、マラリアやデング熱などの病気の拡散、栄養不良により、子どもたちに壊滅的な健康被害をもたらすことになります。

インデックスは、ノルウェー、韓国、オランダの子どもたちが生存と幸福の可能性が最も高いことを示しています(日本は180カ国中7位)が、一方で、中央アフリカ、チャド、ソマリア、ニジェール、マリの子どもたちはその可能性が最も低くなっています。しかし、1人当たりの二酸化炭素排出量を加味した場合、それら上位の国は下位に転じます:ノルウェーは156位、韓国は166位、オランダは160位です(日本は、180カ国中159位)。米国、オーストラリア、サウジアラビアは、最も排出の多い10カ国の中に含まれます。

「人道危機、紛争や自然災害によって開発が妨げられている国で暮らす人々は20億人以上いますが、いずれの国でも、気候変動に関連する問題が増えています」と委員会の共同議長であるセネガルのアワ・マリ・コルセック大臣は述べました。「最貧国のいくつかは二酸化炭素排出量が最も少ない国のひとつであるものの、その多くは急速に変化する気候により最も厳しい影響に晒されています。子どもたちが生き延び、成長するためのより良い条件を国が整えていくことで、世界の子どもたちの未来は犠牲にはなりません」  

2030年までの1人当たりの二酸化炭素排出量の目標達成や、子どもの豊かさの指標においても順調(上位70以内)に進んでいる国は、アルバニア、アルメニア、グレナダ、ヨルダン、モルドバ、スリランカ、チュニジア、ベトナム、ウルグアイのみです。

【有害な商業マーケティングが子どもを食い物にする―小児肥満は11倍に増加】
 

SNSインフルエンサーが開いたファストフード店の料理の写真を見るカザフスタンの10歳の男の子。(2019年8月撮影) © UNICEF_UNI209813_KarimovaSNSインフルエンサーが開いたファストフード店の料理の写真を見るカザフスタンの10歳の男の子。(2019年8月撮影) © UNICEF_UNI209813_Karimova

また、本報告書は、有害なマーケティングが子どもにもたらす明らかな脅威についても強調しています。データによると、一部の国々ではテレビだけでも1年間で3万件もの広告が見られますが、米国では2年間で電子たばこ広告の若者への露出が250%以上増加し、到達人数は2,400万人以上に達しています。

委員会の著者の一人であるアンソニー・コステロ教授は、次のように述べています。「業界の自主規制は失敗しました。オーストラリア、カナダ、メキシコ、ニュージーランド、米国などにおける研究は、自主規制では子どもに広告を届ける商業的能力は妨げられていないことを示しています。例えば、オーストラリアの自主規制に業界が署名しているにも関わらず、子どもや若者の視聴者は、たった1年間で、テレビで放映されたサッカー、クリケット、ラグビーを見ている間に5,100万件のアルコール広告に晒されていました。そして、現実はさらに悪い状態かもしれません。というのも、子どもをターゲットにしたソーシャルメディア広告やアルゴリズムの大幅な増加に関するデータや数字がほとんど手元にないためです」

ジャンクフードや砂糖入り飲料の商業マーケティングの子どもへの露出は、不健康な食品の購入や過体重および肥満につながっています。子どもの肥満の驚くべき増加には、自己利益的なマーケティングが関わっているのです。肥満の子どもと若者の数は、1975年の1,100万人から2016年の1億2,400万人に増加しました。これは11倍の増加であり、個人と社会に課された大きな代償です。

【子どもと若者の健康に対する即時行動のためのマニフェスト】
 

 

委員会の著者たちは、子どもたちを守るために、子どもによって、そして子どものために推進される新たな行動を世界で呼びかけています。具体的な内容は以下のとおりです:
  1. 子どもたちがこの地球上で未来を築けるよう、最大限の緊急度で二酸化炭素の排出を停止する。
  2. 持続可能な開発を達成するための取り組みの中心に子どもと若者を置く。
  3. 子どもの健康と権利に向けて取り組むため、すべての部門において新たな政策と投資を行う。
  4. 子どもたちの声を政策決定に取り入れる。
  5. 子どもの権利条約の新しい選択議定書などを用いて、有害な商業マーケティングの国内規制を強化する。
 

小学校の売店でお菓子を買って食べる南アフリカの子どもたち。(2019年9月撮影) © UNICEF_UNI205791_Hearfield小学校の売店でお菓子を買って食べる南アフリカの子どもたち。(2019年9月撮影) © UNICEF_UNI205791_Hearfield

「気候危機から、肥満や有害な商業マーケティングに至るまで、世界の子どもたちは、ほんの数世代前には想像もできなかった脅威と闘わなければなりません」とユニセフ事務局長のヘンリエッタ・フォアは述べました。「今、子どもの健康について再考する時です。子どもの健康をすべての政府の開発課題の最上位に置き、あらゆる検討事項よりも子どもの幸福が優先されなければなりません」

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■ 注記:インデックスについて
・各国インデックスは、報告書の35〜38ページに記載されています。報告書は、 http://bit.ly/2u03HyQ よりご覧いただけます。
・上位10カ国、下位10カ国のデータ http://www.thelancet-press.com/embargo/childhealthINFOG.png
・世界各国のインデックスを示すインフォグラフ https://www.thelancet.com/infographics/child-health

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■ ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念を様々な形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。( www.unicef.org )
※ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する33の国と地域を含みます
※ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています

■日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、先進工業国33の国と地域にあるユニセフ国内委員会のひとつで、日本国内において民間として唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。( www.unicef.or.jp )

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会社概要

公益財団法人日本ユニセフ協会

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URL
http://www.unicef.or.jp
業種
官公庁・地方自治体
本社所在地
東京都港区高輪4-6-12 ユニセフハウス
電話番号
03-5789-2016
代表者名
赤松良子
上場
未上場
資本金
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設立
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