救急現場におけるリアルタイム映像伝送システムの実証実験を相模原市で開始

119番通報の現場と医療機関の間における安全で効果的な情報伝達の実現を目指す

 凸版印刷株式会社(本社:東京都文京区、代表取締役社長:麿 秀晴、以下「凸版印刷」)、北里大学(設置者:学校法人北里研究所、本部:東京都港区、理事長:小林 弘祐)、相模原市消防局(消防局:相模原市中央区、消防局長:小松 幸平)及びソフトバンク株式会社(本社:東京都港区、代表取締役 社長執行役員 兼 CEO:宮川 潤一、以下「ソフトバンク」)は、119番通報の現場と医療機関との間で、安全かつ効果的な情報伝達を実現することを目的に、セキュリティーを担保したリアルタイム映像伝送システムの実証実験(以下「本実証実験」)を、相模原市内において2023年7月24日(月)から開始します。

 本実証実験では、現場に到着した救急隊から、北里大学病院 救命救急・災害医療センター(所在地:神奈川県相模原市)の医師や看護師へ映像をリアルタイムに共有すると同時に、通報した生活者から通信指令室への映像伝送を可能にするシステムを構築します。また、このシステムの有用性やセキュリティーなどの評価を行います。

 2022年7月から、凸版印刷、北里大学およびソフトバンクは、北里大学病院内の医師や看護師と、北里大学病院所属のドクターカーがリアルタイム映像伝送システムを活用して、スムーズな状況把握やコミュニケーションを実現するための実証実験を行ってきました。1年間で126件の映像伝送を行い、ECMO(体外式人工心肺)など高度な医療処置の指示や判断にも活用し、使用した医療従事者の9割以上が効果を実感しています。これらの成果を踏まえ、本実証実験は相模原市と連携し実施することで、更なる社会実装を目指します。

図:本実証実験の概要図:本実証実験の概要


図:映像伝送イメージ図:映像伝送イメージ

■   背景

 現在、救急隊と医療機関の情報伝達は、電話(音声)や書面(紙)を用いて行われることがほとんどですが、5G(第5世代移動通信システム)などの普及により、近年は4Kや8Kの高精細な映像による精緻な情報伝達や、AIを活用した情報分析・伝達の高度化への期待が高まっています。また、救急医療の分野においては、消防庁による「救急業務のあり方に関する検討会」で、救急活動におけるICT(情報通信技術)の活用が検討されている他、病院や民間企業などが連携して、リアルタイムの映像を通して現場の状況や傷病者の状態を伝達する実証実験などが行われています。これらの取り組みをさらに加速させ、安全で安心な医療のDX(デジタルトランスフォーメーション)を実現するには、患者のプライバシー保護などのセキュリティーの確保が重要です。本実証実験では、このような背景の下、119番通報システムの進化を見据えて、セキュリティの確保の標準化と社会実装を自治体と連携して目指します。また、多彩な研究者や企業、大学、医療機関、行政機関が連携することで、学問の領域にとどまらない研究開発と社会実装を進めていきます。

 

■   本実証実験の概要

 医療従事者の本人確認や保有資格の確認ができる凸版印刷の「本人確認アプリ」(※1)と、スマホのカメラの映像を見ながらリアルタイムにコミュニケーションを取れるソフトバンクの「visuamall VISUAL TALK(ビジュアモール ビジュアルトーク)」(以下「VISUAL TALK」)(※2)を連携させ、必要な資格を保有する医療従事者が、現場の映像にアクセスできるリアルタイム映像伝送システムを構築します。三次救急医療機関(※3)である北里大学病院の医師や看護師が、救急現場に出動する相模原市消防局の救急車や通報者からの映像を確認する行為や、別室にいる他の医師などとの情報伝達にリアルタイム映像伝送システムを活用し、その有用性やセキュリティーなどの評価を行います。

本実証実験の期間: 2023年7月24日(月)~2024年3月15日(金) (予定)

本実証実験の対象者: 相模原市内で通報があった救急案件で、北里大学病院へ搬送するもの


■   各者の取り組み

・相模原市消防局

 相模原市の消防は、消防職員782名、消防団員1,399名の体制で「安全で安心して暮らしやすいまち さがみはら」の実現に向け、365日、昼夜を分かたず、災害活動、救急活動に取り組んでおります。救急出場件数は増加の一途を辿っており、令和4年中には42,060件と過去最多の出場件数を記録しています。救急活動は、適切な観察と判断、確実な処置の連続です。そうした活動を経て、適切な医療機関を選定し、医療機関へと安全かつ迅速に傷病者を搬送します。本実証実験においては、119番通報を受ける通信指令員が通報者からの映像提供を受け早期の情報収集を行い、現場に到着した救急隊員が医療機関の医師に対して現場活動のリアルタイム映像を提供します。これまで、119番通報、医療機関への情報提供は、いずれも通話により伝えられる口頭でのやりとりのみでしたが、リアルタイムな映像の共有により確実かつ質の高い映像情報を伝えられることで、通信指令員がより的確に現場の状況を把握することが可能となり、救急隊から医療機関への情報提供は、質・量ともに向上すると考えられます。この実証実験の目的が達成され、研究結果が救急隊の活動向上に繋がり、より多くの命が救われるよう、協力して参ります。


・凸版印刷

 凸版印刷は、デジタル情報の伝達やDXに必要不可欠な「デジタル視覚データ」(画像や映像などの視覚で得る情報)の各種要素やパラメーター、プロトコルなどを「DX-E®(Elements)」と定義し、色や質感などを表現する「デジタル視覚データ」の品質管理基盤の構築に取り組んでいます。また、2021年5月から提供を開始した、スマホとマイナンバーカードのみで非対面での本人確認を可能にするスマホアプリ「本人確認アプリ」に、HPKI(※4)カード(医師資格証:医師資格を証明する電子的な証明書を格納したICカード)で医療従事者の本人確認と資格確認ができる新機能を追加しました。HPKIカード申請時に設定したPINコードを「本人確認アプリ」に入力し、スマホにHPKIカードをかざすと、医療従事者や関連する資格の保有者などとして認証されます。この仕組みにより、適切な情報アクセス制御が可能となり、安全で安心なオンライン医療サービスの提供を実現できます。本実証実験では、救急医療での活用に向けて「デジタル視覚データ」の品質管理に関する研究を行うとともに、「本人確認アプリ」とソフトバンクの「VISUAL TALK」を連携させます。


・北里大学/北里大学病院 救命救急・災害医療センター

 天国への階段を上り始めた重篤な患者を、この世に引き戻すことが救命救急センターの役割です。北里大学病院の救命救急センターは、1986年に開設され、地域医療への貢献を重視して、神奈川県相模原市を中心とした地域の救急医療の最後の砦としての役割を担ってきました。2014年の春には、免震構造を持つ新病院での診療を開始するとともに、名称を救命救急・災害医療センターに改めました。これは、災害時にも地域医療に貢献するという「報恩」「不撓不屈」の精神を貫く覚悟の現れです。学祖の北里 柴三郎博士が残した教えの一つである「事を処してパイオニアたれ」という開拓の精神を継承し、救急医療DXの新たな道を切り拓いていきます。本実証実験では、北里大学病院 救命救急・災害医療センターで、「本人確認アプリ」と「VISUAL TALK」を連携させたシステムの評価や検証を行います。なお、北里大学は、相模原市での本実証実験の概要などについて、第26回日本臨床救急医学会総会・学術集会(2023年7月27日~29日、帝京大学板橋キャンパス:東京都板橋区)にて学会発表を行います。


・ソフトバンク

 ソフトバンクは、「Beyond Carrier」戦略の下、従来の通信事業者の枠を超えて、幅広い産業分野における革新的なサービスの提供や、他社との共創による各業界のDXに注力しており、医療・ヘルスケア分野においても、データ分析に関する知見や5G、AIなどを活用したさまざまな取り組みを推進しています。また、ソフトバンクは、スマホのカメラの活用により、遠隔地にいるオペレーターとユーザーが同じ映像を見ながらリアルタイムにコミュニケーションを取れるサービス「VISUAL TALK」を開発し、2021年9月から提供しています。オペレーターがユーザーのスマホに、SMSで指定のURLを送り、ユーザーはそのURLをタップするだけで、映像の共有と通話やチャット、手書き機能を使った直感的なコミュニケーションを開始することが可能です。ウェブブラウザー上で操作を行うため、専用アプリのインストールは不要です。オペレーターは、ユーザーのカメラのオン・オフやズーミング操作、音声のオン・オフなどの制御を行うことができるため、スマホに不慣れなユーザーでも簡単に利用することができます。本実証実験では、「VISUAL TALK」と凸版印刷の「本人確認アプリ」を連携させて、救急現場へのカスタマイズに向けた開発を行います。

 


以 上



※1 本⼈確認アプリ

サービスサイト:https://solution.toppan.co.jp/secure/service/honninkakunin.html

プレスリリース:https://www.toppan.co.jp/news/2021/07/newsrelease210721_2.html

参考(公益社団法人 日本医師会による「オンライン診療時の医師資格と本人確認について 患者の安全・安心を確保するための提言」):https://www.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20201007_3.pdf


※2 VISUAL TALK

サービスサイト:https://www.visuamall.com/service/visualtalk/


※3 三次救急医療機関

一次救急医療機関や二次救急医療機関では対応できない、重症および複数の診療科領域にわたるすべての重篤な救急患者を24時間受け入れる体制と、高度な診療機能を有する医療機関


※4 HPKI

保健医療福祉分野の公開鍵基盤(Healthcare Public Key Infrastructure)

このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります

メディアユーザー登録を行うと、企業担当者の連絡先や、イベント・記者会見の情報など様々な特記情報を閲覧できます。※内容はプレスリリースにより異なります。

すべての画像


ダウンロード
プレスリリース素材

このプレスリリース内で使われている画像ファイルがダウンロードできます

会社概要

TOPPANホールディングス株式会社

154フォロワー

RSS
URL
https://www.holdings.toppan.com/ja/news/
業種
情報通信
本社所在地
東京都文京区水道1-3-3
電話番号
-
代表者名
麿秀晴
上場
東証プライム
資本金
1049億8643万円
設立
-