複合発酵技術を活用した水循環システムを東急のオープンイノベーションラボ「SOIL」に導入
~循環型社会の実現に向けた都心エリアで初めての試み~
東急株式会社(以下、東急)、株式会社長大(以下、長大)、東建産業株式会社(以下、東建産業)の3社は、水資源使用量の削減を通じた循環型社会の実現を目指し、東急が渋谷で運営するオープンイノベーションラボ「SOIL(Shibuya Open Innovation Lab)」に、複合発酵技術を活用した水循環システム※1を2025年4月2日から導入しました。
2050年には世界で50億人が水不足の状態に陥ると予測されており※2、水循環モデルを構築し、水資源を有効活用していくことが求められています。この取り組みは、「環境ビジョン2030」を策定し2030年までに連結グループ全体の水使用量を10%削減する目標を掲げている東急と、複合発酵技術※3の技術提供を行う総合建設コンサルタントの長大、複合発酵設備の稼働開始後の維持管理業務を担う東建産業が連携した、循環型社会の実現に向けたチャレンジです。
3社は2023年2月から約2年にわたり、沖縄県宮古島市にある東急グループ施設「まいぱり」宮古島熱帯果樹園で、このシステムに関する実証実験を行ってきました。その結果、安定的な稼働と高い汚水処理能力を確認できたことから、都心エリアでの稼働の検証を開始します。SOILでは、トイレやキッチンなどから排出される汚水を複合発酵設備で浄化し、トイレ洗浄用水として再利用します。浄化にあたっては、生物処理(複合発酵技術)を活用して残留性のある化学薬品を一切使用せず、微生物の働きによって再利用可能な水まで浄化することで、環境に優しい排水処理を実現します。
SOILでの複合発酵技術を活用した水循環システムの稼働を通して、不特定多数の利用者がいる環境下であっても、汚水の排出量、再生可能量、再生水の使用量のバランスを安定的に維持できるかを確認し、導入施設の環境に応じて循環量の調整を柔軟に設定できるシステムの構築を目指します。また、複合発酵技術で浄化された再生水の水質検査を定期的に実施し、精緻なデータを収集することで、安定した水処理を証明するエビデンスを蓄積したいと考えています。
3社は今回の取り組みを通じて、複合発酵技術を活用したシステムの運用スキームを確立し、今後は東急線沿線をはじめとしたさまざまなエリアの施設へ導入を拡大することで、循環型社会の実現に貢献してまいります。
■水循環システムの構成


※1 複合発酵技術を活用した水循環システムは特許申請中
※2 ユネスコ「世界水発展報告書(World Water Development Report)」
(https://www.unwater.org/publications/world-water-development-report-2018)
※3 植物由来の酵素を用い、環境中の多様な微生物の働きの活性化により複合的な発酵を促進させ
汚水を浄化する。従来の排水処理で課題となる悪臭や汚泥の発生を抑制することが可能な技術。
■取り組みの概要
・期間
2025年4月2日~2026年3月31日(予定)
・場所
SOIL(Shibuya Open Innovation Lab)
(東京都渋谷区渋谷三丁目6番14号 渋谷金王第二ビル)
・検証項目
(1)水循環におけるマテリアルバランスの検証
不特定多数の利用者がいる環境において、汚水を水循環システムで浄化して再利用する過程で、汚水の排出量、再生可能量、再生水の使用量のバランスが安定的に維持できるかを確認し、導入施設の環境に応じて循環量の調整を柔軟に設定できるシステムの構築を目指します。
(2)再生水の水質安定性の確認および数値化による証明
複合発酵技術で浄化された再生水の水質検査を定期的に実施し、より精緻なデータを収集。水質の安定性、安全性を証明するエビデンスを蓄積します。
■この取り組みで導入する水循環システムのスペック
(1)水循環率
約80% ※施設の想定水使用量1日あたり500リットルのうち、400リットルを循環
(2)搭載機能
①水循環量モニタリング設備
水循環モニタリング用のディスプレイを搭載し直近の循環量を表示します。
②異常検知用警備システム
水循環システムが安定稼働しているかを常時モニタリングし、緊急時には東建産業および関係者へ発報し緊急対応できる仕組みを構築予定です。
■SOIL(Shibuya Open Innovation Lab)について
SOILは、東急が運営する社会実装に特化した招待会員制のオープンイノベーションラボです。オープンイノベーションの土壌(SOIL)として、新技術の開発、展開を目的とした国内外のスタートアップ、大企業、投資家、メディア、官公庁などのプレーヤーがつながる場を提供し、日本社会にイノベーションを興していきます。
2025年4月から「渋谷金王第二ビル(東京都渋谷区渋谷三丁目6番14号)」に移転・リニューアルし、他企業との多様な社会実装用スペースを確保するとともに、地域に開かれた場として、地元や渋谷区と連携して先行的な取り組みやエリア価値を向上させる取り組みを実施していく予定です。SOILは今般の移転・リニューアルを通じて、さらなるイノベーションの創出に注力していきます。

■まいぱり実証実験の概要
・期間
2023年2月27日~2025年3月31日
・場所
「まいぱり」宮古島熱帯果樹園(沖縄県宮古島市下地字与那覇1210)
・検証項目
(1)「まいぱり」敷地内の施設から排出される汚水を、塩素などの化学薬品を使用せず、複合発酵設備で処理することで、再利用が可能なレベルまで浄化し、施設のトイレの洗浄用水として循環利用。
(2)再生水は農作物の成長を向上させるための土壌改良材となることが期待されるため、まいぱり果樹園に再生水を散水し、安全な農作物の成長の向上、土壌や海洋環境の改善、生物多様性保全への効果を測定。
※過去リリース https://www.tokyu.co.jp/image/news/pdf/20230227-1.pdf

■まいぱり実証実験の結果

・複合発酵設備での浄化前後の水質比較

・再生水の液肥活用検証対象区画

■東急株式会社 概要
本 社:東京都渋谷区南平台町5番6号
資本金:1,217億24百万円
設 立:1922年9月2日
従業員数:1,525名(2024年3月31日現在)
公式サイト:https://www.tokyu.co.jp/
環境方針:「なにげない日々が、未来をうごかす」をコンセプトに、公共交通や都市・生活インフラに関わる事業特性を生かし、お客さまをはじめとするパートナーと連携し、環境と調和する持続可能なまちづくりを進めていきます。
参考リンク
・環境ビジョン2030:https://tokyu.disclosure.site/ja/135/
■株式会社長大 概要
本 社:東京都中央区日本橋蛎殻町一丁目20番4号
資本金:10億円
設 立:1968年2月21日
従業員数:987名(2024年12月31日現在)
公式サイト:https://www.chodai.co.jp/
環境方針:人・夢・技術グループの一社として、「社員の創造性と、相互の信頼を育み、美しく、快適な地球環境づくりに邁進する世界の技術と頭脳の会社を創造する。」を経営理念とし、「水・食・環境・エネルギーの自立」をコンセプトとした社会インフラ構築に取り組んでいます。なお、2022年11月に複合発酵技術のサービスを提供する子会社を設立しています。
参考リンク
・人・夢・技術グループ 長期経営ビジョン2030 :https://www.pdt-g.co.jp/Portals/0/images/ir/plan/20190930.pdf
・人・夢・技術グループのサステナビリティー基本方針:https://www.pdt-g.co.jp/csr/
・長大のSDGsへの対応 :https://www.chodai.co.jp/csr/sdgs/
■東建産業株式会社 概要
本 社:東京都渋谷区渋谷一丁目24番8号 東急渋谷一丁目ビル3階
資本金:5千万円
設 立:1973年2月13日
従業員数:15名(2024年3月31日現在)
公式サイト:https://www.token-sangyo.co.jp/index.html
環境方針:東急建設グループの企業ビジョン『0へ挑み、0から挑み、環境と感動を 未来へ建て続ける。』のコンセプトのもと、再生水の有効利用に取り組み、水処理のスペシャリストとして「設計・施工・維持管理」まで一貫体制で対応すべく最先端技術の開発を進めてまいります。
参考リンク
・東急建設グループ 企業ビジョン「VISION2030」:https://www.tokyu-cnst.co.jp/company/vision/#vision
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