2025年3月の国内景気は前月から横ばい 人出増加が好材料も、価格高止まりが抑制要因 トランプ関税の不確実性で先行き不透明

TDB景気動向調査(全国)― 2025年3月調査 ―

株式会社帝国データバンク

株式会社帝国データバンクは、全国2万6,674社を対象とした2025年3月の国内景気動向を調査・集計し、景気DIとして発表いたしました。

■調査結果のポイント

  1. 2025年3月の景気DIは前月から横ばいの43.5となった。国内景気は、人出の増加が下支えしたが、食品や原材料の価格の高止まりが抑制要因となった。今後の景気は、IT関連の設備投資などが支えるものの、世界経済の不確実性が高まり、横ばい傾向が続くと見込まれる。

  2. 10業界中7業界が改善、2業界が悪化。インバウンドや外出機会の増加がプラス材料。地域別では6地域が悪化、『四国』など4地域が改善した。都道府県別では22道府県が悪化、23府県が改善。関税の引き上げや利上げ前の駆け込み受注がみられたものの、公共工事は低調に推移し地域経済の景況感を下押しした。規模別では「大企業」が2カ月ぶりに悪化、「中小企業」「小規模企業」はともに横ばいとなった。

  3. [今月のトピックス]2025年度も前年同様に高い水準の賃上げが期待されるが、企業からは「賃上げ疲れ」といった声も寄せられた。


< 2025年3月の動向 : 横ばい >

2025年3月の景気DIは前月から横ばいの43.5となった。国内景気は、人出の増加が下支えしたが、食品や原材料の価格の高止まりが抑制要因となった。

3月は、日経平均株価が31日に今年最大の下げ幅を記録するなど、金融市場で米国の経済政策変更による影響を大きく受けた。また、食品や原材料などの価格の高止まり、人材確保の困難さは、引き続き幅広い業種の収益を圧迫し、景況感を下押しした。他方、インバウンドや再開発需要、人出の増加は景気を押し上げたほか、年度末や新生活需要が小売業や不動産業を中心に景況感を下支えした。関税引き上げや利上げ前の駆け込み受注もプラス材料だった。

 

< 今後の見通し : 横ばい傾向で推移 >

今後の国内景気のカギは、実質賃金の増加と個人消費の拡大という好循環である。一方で、米国の関税引き上げによる世界経済の減速は、景気のマイナス材料となりうる。

また、家計の節約志向や借入金利の上昇なども下押し要因となろう。しかし、インバウンド需要や物価高対策、大阪・関西万博のほか、IT関連の設備投資は底堅く推移するとみられる。今後の景気は、設備投資などが支えるものの、世界経済の不確実性が高まり、横ばい傾向が続くと見込まれる。

業界別:10業界中7業界が改善、インバウンドや外出機会の増加が下支え

 

10業界中7業界が改善、2業界が悪化。インバウンドや外出機会の増加、自動車関連の需要増、都市の再開発などがプラス材料だった。他方、燃料・原材料価格の上昇、人材確保の難しさなどは悪材料となった。

 

『製造』(39.6)…前月比0.2ポイント減。4カ月連続で悪化。新築戸建の低迷や家具需要の落ち込みが目立つ「建材・家具、窯業・土石製品製造」(同1.7ポイント減)は2カ月ぶりに悪化。建設機械向け受注の悪化や北米市場が停滞といった声もある「機械製造」(同1.0ポイント減)は、5カ月連続で下落した。また、「飲食料品・飼料製造」(同0.8ポイント減)はコメや野菜などの高騰が響き4カ月連続で落ち込んだ。他方、生産・出荷量DIが3カ月連続で上向いた「輸送用機械・器具製造」(同3.0ポイント増)はメーカーの生産復調がみられたほか、関税引き上げ前の需要増もあり2カ月ぶりに持ち直した。

 

『サービス』(48.7)…同0.3ポイント減。3カ月連続で悪化。「娯楽サービス」(同2.5ポイント減)は、生活必需品の価格上昇により消費が抑制され3カ月ぶりに下向いた。人材が集まらず業務が滞るといった声のある「メンテナンス・警備・検査」(同2.4ポイント減)は、2カ月ぶりに落ち込んだ。また、受注に向け低価格化が進んでいるという声も聞かれる「情報サービス」(同1.0ポイント減)は、高水準ながら2カ月連続で悪化した。他方、春休みを迎え「旅館・ホテル」(同1.1ポイント増)は4カ月ぶりに改善。「教育サービス」(同2.9ポイント増)は、塾の短期講座や自動車教習所の需要などが押し上げ要因だった。

 

『小売』(39.2)…同0.6ポイント増。3カ月ぶりに改善。「自動車・同部品小売」(同4.0ポイント増)は、活況な中古車市場や関連するメンテナンス需要がけん引し5カ月ぶりに40台へ回復した。イベント需要やスキンケアニーズなどが好調な化粧品小売を含む「医薬品・日用雑貨品小売」(同1.5ポイント増)は2カ月ぶりに上向いた。家計の節約志向が高まるなか、春の値上げ前の駆け込み需要から「飲食料品小売」(同1.0ポイント増)は2カ月連続で改善した。

 

『不動産』(47.6)…同0.1ポイント増。3カ月ぶりに改善。「地価の上昇が好材料」や「金利上昇を見越し購入の動きが活発」といった声が寄せられた。また新生活を控え、貸家業が好調だった。加えて、大都市圏以外の地方部においても開発需要が景況感を押し上げた。他方、高まり続ける物件価格に対して消費者の購入意欲が追いつかず、一部では売れ行きが鈍いという懸念も表れた。

規模別:「大企業」が2カ月ぶりに悪化、コスト増加が下押し要因に

 「大企業」は2カ月ぶりに悪化、「中小企業」「小規模企業」はともに横ばいだった。『不動産』で規模間のバラツキがみられた一方で、『サービス』は全規模で悪化した。規模間格差は5.2と4カ月ぶりに縮小した。

 

「大企業」(47.9)…前月比0.3ポイント減。2カ月ぶりに悪化。6業界が悪化、4業界が改善した。原材料費や人件費、運送費などの上昇が収益を圧迫。『不動産』は物件による売れ行きの違いが拡大するなど、3カ月連続の悪化となった。

 

「中小企業」(42.7)…同横ばい。「大企業」で悪化した『不動産』は都市部への賃貸回帰などで家賃の引き上げが好材料だった。他方、アパレル製造のほか電気機械や自動車関連が悪化するなど、『製造』が下押しした。

 

「小規模企業」(41.6)…同横ばい。6業界が改善、4業界が悪化した。『小売』は自動車部品など期末セールの売り上げが好調だった一方で、印刷業は需要が大きく減少し2年1カ月ぶりに20台へ落ち込んだ。

地域別:10地域中6地域が悪化、4地域が改善

 

『東海』『北関東』など6地域が悪化、『四国』など4地域が改善した。都道府県別は22道府県が悪化、23府県が改善。関税の引き上げや利上げ前の駆け込み受注がみられたが、低調な公共工事は地域経済の景況感を下押しした。

 

・『東海』(43.1)…前月比0.4ポイント減。4カ月連続で悪化。域内4県中3県が悪化した。「新築マンション、オフィスビルなど建築が頭打ち」で建材関連が大きく悪化した一方で、自動車製造は電子部品関連が好調だった。

 

・『北関東』(40.7)…同0.7ポイント減。2カ月ぶりに悪化。域内5県中3県が悪化、1県が改善した。農産物の価格高騰などで飲食料品製造が悪化したほか、物件数不足や低調な公共工事などを受けて『建設』も下押しした。

 

・『四国』(41.4)…同1.1ポイント増。2カ月連続で改善。7カ月ぶりに域内4県がすべて改善し、ブロック別順位も前月の9位から7位に上昇した。「仕事自体は多い」との声が聞かれ、『小売』や『サービス』が全体を押し上げた。

【今月のトピックス】寒波や大雪などによる影響

  • 帝国データバンクが試算した賃上げ率は平均4.50%だった。連合の第2回集計結果は平均5.40%(中小企業は平均4.92%)

  • 2024年度と同様に高い水準の賃上げが期待されるが、企業からは「賃上げ疲れ」といった声も寄せられた

【調査先企業の属性】

1.調査対象

2万6,674社、有効回答企業1万716社、回答率40.2%

2.調査事項

景況感(現在)および先行きに対する見通し

経営状況(売り上げ、生産・出荷量、仕入れ単価・販売単価、在庫、設備稼働率、従業員数、時間外労働時間、雇用過不足、設備投資意欲)および金融機関の融資姿勢について

3.調査時期・方法

2025年2月14日~2月28日(インターネット調査)

【景気動向指数(景気DI)について】

■TDB景気動向調査の目的および調査項目

全国企業の景気判断を総合した指標。国内景気の実態把握を目的として、2002年5月から調査を開始。景気判断や企業収益、設備投資意欲、雇用環境など企業活動全般に関する項目について全国2万7千社以上を対象に実施している月次統計調査(ビジネス・サーベイ)である。

■調査先企業の選定

全国全業種、全規模を対象とし、調査協力の承諾が得られた企業を調査先としている。

■DI算出方法
DI(ディフュージョン・インデックス〈Diffusion Index〉)は、企業による7段階の判断に、それぞれ以下の点数を与え、これらを各選択区分の回答数に乗じて算出している。

景気DIは、50を境にそれより上であれば「良い」、下であれば「悪い」を意味し、50が判断の分かれ目となる(小数点第2位を四捨五入)。また、企業規模の大小に基づくウェイト付けは行っておらず、「1社1票」で算出している。

■企業規模区分

企業の多様性が増すなか、資本金や従業員数だけでは計りきれない実態の把握を目的に中小企業基本法に準拠し、全国売上高ランキングデータを加え下記の通り区分している。

■景気予測DI

景気予測DIは、ARIMAモデルと構造方程式モデルの結果をForecast Combinationの手法で算出。破線は予測値の幅(予測区間)を示している

【TDB景気動向調査ご協力企業さま募集】
当調査は全国で2万7千社を超える企業にご協力いただいている、月次の景況調査では国内最大の統計調査です。
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会社概要

株式会社帝国データバンク

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URL
https://www.tdb.co.jp/index.html
業種
サービス業
本社所在地
東京都港区南青山2-5-20
電話番号
03-5775-3000
代表者名
後藤 信夫
上場
未上場
資本金
9000万円
設立
1987年07月