国内景気は2カ月ぶりに改善も小幅にとどまる 災害復旧工事や観光関連がプラスとなったが、耐久消費財の不調が抑制要因に
2024年11月の景気動向調査
株式会社帝国データバンクは、全国2万6,880社を対象とした2024年11月の国内景気動向を調査・集計し、景気DIとして発表いたしました。
<調査結果(要旨)>
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2024年11月の景気DIは前月比0.1ポイント増の44.4となり、小幅ながら2カ月ぶりに改善した。国内景気は、復旧工事などがプラスとなった一方で、耐久消費財の不調なども響き、わずかな改善にとどまった。今後は個人消費の動向が最も重要なポイントとなるなか、底堅く推移していくと見込まれる。
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『建設』『サービス』など6業界が改善。工事関連や都市再開発などが好材料となり、運輸関連にも波及した。他方、原材料価格の高止まりや不安定な気候などは下押し材料だった。地域別では、10地域中5地域が改善、3地域が横ばい、2地域が悪化した。半導体関連やインバウンド需要が地域経済の好材料となった一方で、地元業者が担う設備投資の減少は悪材料だった。規模別では、「中小企業」は改善、「大企業」と「小規模企業」は横ばいとなった。
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半導体関連の設備投資や観光需要、再開発、各種イベントなど地域特有の明るい声も寄せられた。
< 2024年11月の動向 : わずかに改善 >
2024年11月の景気DIは前月比0.1ポイント増の44.4となり、小幅ながら2カ月ぶりに改善した。国内景気は、災害復旧工事などがプラスとなった一方で、耐久消費財が不調だったことなども響き、わずかな改善にとどまった。
11月は、建設関連や観光産業などが押し上げ要因となったほか、半導体向け需要の増加もプラス材料だった。また、冬物が動き出したことでアパレル小売は大きく上向いた。ただし、家計の節約志向は高く家電や自動車など耐久消費財の販売が不調だった。さらに、人手不足や原材料価格の高騰なども下振れ材料となった。
< 今後の見通し : 底堅く推移 >
今後は、個人消費の動向が最も重要なポイントとなり、冬季賞与など実質賃金の継続的な上昇が消費意欲の持続に直結する。さらに、金利や為替レート、株価、税制の見直しなども注視する必要があろう。プラス要因としては、観光産業の伸長や人手不足に対応する設備投資の拡大、リスキリングの浸透が労働市場の効率性を向上させる可能性がある。さらに生成AIの普及や半導体の需要拡大による技術革新は成長のけん引役となる。マイナス要因では、物流コストの上昇やインフレの進行が企業の収益を圧迫し、消費者の購買意欲を削ぐ要因となりうる。また、米新大統領の経済政策や中東情勢などはリスク要因である。今後の景気は、底堅く推移していくと見込まれる。
業界別:10業界中6業界で改善、『建設』『サービス』などが押し上げ要因に
『建設』『サービス』など6業界が改善。工事関連や都市再開発などが好材料となり、運輸関連にも波及した。加えて、インバウンド需要ほか季節需要の動き出しもプラスに働いた。他方、原材料価格の高止まりや不安定な気候などは下押し材料だった。
・『建設』(48.1)…前月比0.3ポイント増。2カ月ぶりに改善。防災・災害復旧工事などが押し上げ要因となったほか、ホテルの新規出店や関連した設備投資、再エネ関連が好調といった声が聞かれた。加えて、半導体工場などの大規模開発や大都市圏での再開発などは引き続き好材料となった。他方、資材価格や人件費の高騰、職人不足、低調な戸建て着工戸数の推移などは悪材料としてあげられた。
・『サービス』(49.9)…同0.1ポイント増。2カ月ぶりに改善。好調なインバウンドほか国内旅行や出張需要も押し上げ要因となり「旅館・ホテル」(同3.1ポイント増)は3カ月連続で改善し、60台へ回復。忘年会なども行われ始め「飲食店」(同1.3ポイント増)は、3カ月ぶりに上向いた。また、IT投資意欲は継続して旺盛といった声もある「情報サービス」(同0.3ポイント増)は、エンジニア不足などあるなか3年2カ月連続で50以上を維持している。他方、節約志向や屋外レジャーを中心に不安定な気候が悪材料となり「娯楽サービス」(同2.1ポイント減)は2カ月連続で落ち込んだ。
・『製造』(40.8)…同横ばい。厳しさの続く「繊維・繊維製品・服飾品製造」(同1.0ポイント増)はインバウンド需要のほか、冬物製品が動き出した。インフルエンザの流行により医療器具関連などが押し上げ要因となった「精密機械、医療機械・器具製造」(同2.6ポイント増)は2カ月ぶりに改善した。「飲食料品・飼料製造」(同横ばい)は、水揚げ量の不足や米など原材料価格の高騰に関する声が複数寄せられた。他方、「輸送用機械・器具製造」(同0.8ポイント減)は2カ月ぶりに悪化した。さらに、資材価格の高騰に加えて自動車生産の停滞なども響き「化学品製造」(同0.5ポイント減)や「電気機械製造」(同1.3ポイント減)は、ともに7カ月ぶりに落ち込んだ。
・『小売』(39.4)…同0.3ポイント減。3カ月連続で悪化。販売価格の高騰などで買い控えが生じる「家電・情報機器小売」(同5.0ポイント減)は3カ月連続で悪化。「自動車・同部品小売」(同3.0ポイント減)は購買意欲の低迷や海外製品の価格高騰などを受け2カ月ぶりに下落した。また、仕入価格の高止まりの影響を受けるガソリンスタンドや花・植木小売などを含む「専門商品小売」(同0.8ポイント減)も悪化した。他方、冬物食材の動き出しや好調な惣菜需要などがプラスに働き、「飲食料品小売」(同0.6ポイント増)と「各種商品小売」(同2.8ポイント増)はそれぞれ上向いた。
規模別:「中小企業」はマンション建設や不動産関連がけん引役
「中小企業」は改善、「大企業」と「小規模企業」は横ばいとなった。「中小企業」は、住宅建設や家賃の上昇などを受けた『建設』や『不動産』がけん引役となった。「大企業」は物価の上昇が予想されるなかで、設備投資意欲が上向いてきた。
・「大企業」(48.3)…前月比横ばい。「受注が戻ってきた」など貨物輸送が堅調だった『運輸・倉庫』が2カ月ぶりに上向いた。また、「大企業」が先行して設備投資を実行する動きも好材料となった。一方で、飲食料品や灯油など『小売』が下押しした。
・「中小企業」(43.7)…同0.1ポイント増。2カ月ぶりに改善。マンション建設が上向いた『建設』のほか、問合せの増加や家賃の上昇がみられた『不動産』も改善した。一方で、『小売』は「生活関連の物価高」などが影響し、3カ月連続の悪化となった。
・「小規模企業」(42.7)…同横ばい。『運輸・倉庫』では、ドライバーなど人材不足が続いているほか、中国経済の影響により輸出入の荷動きが低調だった。損害保険代理を含む『金融』も下落した。一方で、ビルやマンションなどの『建設』は好調だった。
地域別:10地域中5地域が改善、半導体関連やインバウンドが好材料
『九州』など10地域中5地域が改善、『北陸』など3地域が横ばい、『南関東』など2地域が悪化した。都道府県別では26府県が改善、18都道県が悪化。半導体関連やインバウンド需要が地域経済の好材料となった一方で、設備投資の減少は悪材料だった。
・『九州』(47.2)…前月比0.8ポイント増。3カ月ぶりに改善。域内8県中6県が改善し、「宮崎」のみが悪化した。「熊本」はTSMCの効果や観光客の増加などもあり、7カ月ぶりに50台へと回復した。「人流の活発化」などで個人消費関連が好調だった。
・『北陸』(42.2)…同横ばい。域内4県中3県が悪化し、「福井」が改善した。公共工事の減少に加え、民間の設備投資意欲に伸び悩みがみられ、『建設』が4カ月ぶりに悪化に転じた。一方で、「福井」は『卸売』『小売』などが大きく上向いた。
・『南関東』(46.4)…同0.1ポイント減。2カ月連続で悪化。1都2県が悪化、「神奈川」が改善した。「残暑で重衣料需要が低下」などを受けた『小売』が低調だった。「神奈川」はベイスターズの優勝効果もあり横浜市の景況感が改善し、全体を押し上げた。
【今月のポイント】地域特有の景況感の要因
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半導体関連の設備投資や観光需要、再開発、各種イベントなど地域特有の明るい声も寄せられた
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特に、半導体製造拠点の新設においては、当該地域に限らず周辺地域へも地価上昇の波及効果が表れている
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