CCSの遮蔽層評価に関する発表が物理探査学会の「最優秀発表賞」を受賞
JOGMECがJAPEXと共同で実施した遮蔽層の力学特性評価に関する研究の成果について、令和4年度物理探査学会第147回秋季学術講演会(2022年11月16~18日)で行った発表が高く評価され、令和5年度物理探査学会総会(2023年5月31日)において最優秀発表賞を受賞したことが発表されました。受賞した発表概要は以下の通りです。
■発表タイトル
岩石物理モデルに基づくインデンテーション試験データの解釈~CCSのための遮蔽層評価に向けて~
■ 発表者
柏原功治(JAPEX)・長野優羽(JOGMEC)
■ 受賞概要
枯渇油ガス田を対象とした二酸化炭素の地中貯留(CCS)では、遮蔽層(二酸化炭素の密閉に寄与する不透過性の地層)の安定性や健全性が重要なポイントとなります。二酸化炭素の圧入に伴い遮蔽層の変形や破壊が生じると二酸化炭素の漏洩経路の一因となることが考えられます。
遮蔽層の地質サンプル(コア)が取得され力学特性評価が実施されていれば、これを利用し遮蔽層の安定性評価を実施できますが、費用がかかり、入手できる深度も限られるのが現状です。当該研究ではアジアのCCS実施想定サイトを対象に検討してきましたが、そのフィールドにおいてもコアの採取や力学特性評価は実施されていませんでした。そこで、掘削の際に生じ、入手が容易な掘りくず(カッティングス)を対象に力学特性を評価する手法を検討しました。
そのため、遮蔽層区間の掘削時に得られた大きさが数ミリ程度の掘りくずを対象にインデンテーション試験と呼ばれる試験を実施し、同時に試験面の鉱物分布情報を取得しました。そして、得られた結果を説明できる岩石物理モデルを構築し、遮蔽岩の力学特性を推定できる可能性を示すことができました。
本手法により、コアサンプルを用いて得られるものと同等の岩石力学特性パラメーターの絶対値を推定するには、まだ課題がありますが、その一方で、遮蔽層の力学特性の相対変化を連続的に評価できる利点もあります。JOGMECはこれらの技術を用いて、民間操業会社の協力を得ながら技術の汎用性を広げ、安定的なCCSプロジェクトの実施、エネルギーの供給に寄与する要素技術の普及を進めてまいります。
リリース本文はこちら↓
https://www.jogmec.go.jp/news/release/news_10_00117.html?mid=pr230607_01
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