不正発覚による倒産、過去最多の300件 「粉飾」、資金繰り支援の過程で表面化相次ぐ
コンプライアンス違反企業の倒産動向調査(2022年度)
帝国データバンクでは、架空の売り上げの計上や融通手形などの「粉飾」をはじめ、過積載や産地偽装などの「業法違反」、所得・資産の隠蔽などの「脱税」などのコンプライアンス違反が取材により判明した企業の倒産を「コンプライアンス違反倒産(以下、コンプラ違反倒産)」と定義。2022年度(2022年4月~2023年3月)の同倒産(法的整理のみ、負債1000万円以上)について分析した。
なお、本調査は2005年4月より集計を開始しており、前回調査は2021年4月9日。
<調査結果(要旨)>
コンプライアンス違反が確認された企業の倒産は最多の300件、2年連続で増加
業種別では、『サービス』『建設』『運輸・通信』が目立つ
違反類型では「粉飾」「業法違反」のほか、雇調金などの「不正受給」が目立つ
集計期間:2005年4月~23年3月31日
集計対象:負債1000万円以上法的整理による倒産
調査機関:帝国データバンク
注1:「コンプライアンス違反」は、意図的な法令違反や社会規範・倫理に反する行為などを指す
注2:同一企業に複数のコンプライアンス違反がある場合は、主な違反行為で分類
コンプライアンス違反が確認された企業の倒産は最多の300件、2年連続で増加
2022年度のコンプライアンス違反倒産は300件と前年度から96件(147.1%)増加し、2年連続で前年度を上回った。また、これまで最多であった2015年度の289件を上回り、2005年4月の集計開始以来、最も多くなった。
これまでピークであった2015年度以降、コンプラ違反倒産は、緩やかな減少傾向を示していた。特に2020年は、コロナ対策の給付金やゼロゼロ融資など各種支援策が企業に幅広く行き渡り、一時的に倒産が抑制されたことで、コンプラ違反による企業の倒産が表面化しづらくなっていたとみられる。しかし、新型コロナが収束に向かい、全体の倒産件数が上向いてきているなかで、コンプラ違反が明らかになり、信用を失うケースが散見されるようになった。
業種別では、『サービス』『建設』『運輸・通信』が目立つ
2022年度に発生したコンプラ違反倒産の300件を業種別にみると、『サービス業』が88件(構成比29.3%)で最多となり、全体の約3割を占めた。次いで、『建設業』が59件(同19.7%)、『運輸・通信業』が54件(同18.0%)と続いた。
業種細分類別にみると、『サービス業』では「老人福祉業」が35件にのぼった。特に、(株)ステップぱーとなー(東京都、22年8月破産)グループの連鎖倒産が30件を超え、全体を押し上げた。『運輸・通信業』では、「貨物運送」が36件(構成比66.7%)と半数以上を占めた。
2021年度と比べて件数が増加したのは、『建設業』『運輸・通信業』『サービス業』『その他』の4業種だった。とりわけ『サービス業』は53件(251.4%)増、『運輸・通信業』は28件(207.7%)増となった。一方、前年度から減少したのは『製造業』『卸売業』『不動産業』の3業種。横ばいは『小売業』の1業種だった。
違反類型では「粉飾
」「業法違反」のほか、雇調金などの「不正受給」が目立つ
違反類型別にみると、「資金使途不正」が69件(構成比23.0%)で最も多かった。次いで「粉飾」が62件(同20.7%)と続いた。コロナ禍以前に増加傾向を示していた「粉飾」は、20年度以降、ゼロゼロ融資等の資金繰り支援の効果もあり件数は減少に転じていたが、ここにきて再び増加の兆しをみせた。借入金の返済が厳しくなり、金融機関に対して追加支援を申し入れた際に不適切な会計処理が明らかになるケースが多くみられた。また、コロナ禍で雇用調整助成金など各種助成金などの「不正受給」による倒産が前年から倍増した。
「粉飾」を業種別にみると、「卸売業」の構成比が33.9%と他の業種と比較して高かった。なかでも架空取引や融通手形を使用していたケースが目立った。「業法違反」では、「運輸・通信業」が構成比60.7%と突出していた。長時間労働など違法な営業活動が発覚して、行政処分を受けた企業が多数発生した。
2022年度は倒産件数が3年ぶりに増加に転じると同時にコンプラ違反の倒産も急増した。これまでコロナ禍での資金繰り支援に支えられて倒産件数は抑制され、コンプラ違反企業も表面化しづらい状態が続いていた。しかし支援策の段階的な終了に伴い、粉飾決算をはじめとするコンプラ違反が露見するケースは増加傾向にある。今後も厳しい経営環境のなかで、企業存続のためコンプラ違反に手を染めていた、あるいは染めはじめるケースが表面化していくことが考えられる。
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