母乳育児の促進で年間82万人の乳児の命が守られる 乳幼児の2大死因や母親のがんリスクも減少 【プレスリリース】
医学専門誌『ランセット(The Lancet)』が発表、母乳育児欠如に関連する経済損失、年間3,020億ドル
※本信はユニセフ本部が発信した情報をもとに、日本ユニセフ協会が編集・翻訳したものです。
※本信の原文は、http://www.unicef.org/media/media_89978.htmlからご覧いただけます。
※『ランセット』の当該論文ページは、http://www.thelancet.com/series/breastfeedingからご覧いただけます。
【2016年1月29日 ワシントン・ニューヨーク発】
医学専門誌『ランセット(The Lancet)』により発表された論文の新シリーズによると、よりよい母乳育児の実践を促進することによって、年間82万人以上の子どもたち(内、9割は6カ月未満の乳児)の命を救える可能性がある、ということが明らかになりました。
母乳育児の増加により、5歳未満児の主な死因である、下痢の症例の半分近くを、そして呼吸器感染症の症例の3分の1を防ぐことができます。
ランセットの論文では、母乳育児の実践期間が1年増すごとに、母親の浸潤性乳がんの発症リスクが6パーセント減少するということも示しています。現在の母乳育児率から算出すると、毎年乳がんによる死亡を2万件近く防止できていることになりますが、母乳育児の実践が促進されることで、この数は倍増する可能性があります。より長期的な母乳育児は、卵巣がんの減少にもつながります。
「母乳育児に投資することは、経済的に豊かな国、貧しい国どちらにおいても、女性と子どもの健康に多大な効果があるのです」と、ユニセフの栄養部長のウェルナー・シュルテンクは述べています。「論文は、母乳育児は子どもたちの生存、健康、成長、発達の要であり、より豊かで持続可能な未来の実現に貢献するということに関し、決定的な証拠を提供しています」
ユニセフによると、ランセットの論文では、低所得、中所得、高所得の国いずれにおいても、母乳育児が女性や子どもの命を守る効果を有することを裏付けています。
母乳育児は、高所得国において乳幼児死亡率を減少させます。乳児突然死の36パーセントの減少と、未熟児の子どもに最もよく発生する腸疾患の60パーセント近くの減少につながります。より長期間にわたる母乳育児で育った子どもについては、その後の過体重や肥満のリスクも減少します。
今回の論文は、母乳育児の欠如に関連して生じる認知障がいが、所得能力に影響を与え、その損失が年間3,020億米ドルに達すると報告しました。低所得・中所得国では年間700億米ドル以上が、高所得国では年間2,300億米ドル以上が、母乳育児の実践不足により損失となっているのです。
ユニセフは、母乳育児の実践が母親や子どもの健康に与える複数のメリットや潜在的な経済的利益が、母乳育児を推進し、支援するための政府の政策や事業の後押しとなると述べています。
このことは、特に働いている母親にとって重要です。早期の職場復帰は母親が母乳育児を行う機会を減らす一方で、およそ60パーセントの国で、出産育児休暇がILO(国際労働機関)の推奨する最低14週間という基準に達していません。母乳育児を行っている母親が仕事に復帰しても、母乳を与えたり、搾乳したりするスペースが職場に用意されていません。
ユニセフのシュルテンク部長は、母乳育児率の改善は「持続可能な開発目標」の多く、特に健康や子どもの生存、教育に関連する目標を達成するための根本的な原動力になるという、ランセットの結論を強調しました。
「母乳育児は貧富にかかわらず、すべての子どもたちが最も健康的な人生のスタートを切るための、最も自然で、費用対効果が高く、環境にやさしく、容易に利用できる方法です。それを最優先にすることは、関係するすべての人々にとって互いに利益になるのです」
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■ユニセフについて
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公益財団法人 日本ユニセフ協会は、先進工業国36の国と地域にあるユニセフ国内委員会のひとつで、日本国内において民間として唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。 (http://www.unicef.or.jp/)
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