モザンビーク:戦闘で避難民が40万人に急増 人道援助が急務に

国境なき医師団

モザンビーク北部のカーボデルガード州で、武装勢力による攻撃と政府軍との長引く武力衝突により、40万人余りの人びとが住まいを追われ、国内避難民となっている。人びとの多くは、過密状態での暮らしを強いられ、飲料水の確保にも窮する厳しい生活を送る。はしかや感染性の下痢症、新型コロナウイルス感染症など、さまざまな健康リスクに直面している。国境なき医師団(MSF)は、避難民への援助は基本的なニーズすら満たしていないと、現地当局に対し人道援助の規模拡大を支援するよう訴えている。

避難民が急増したカーボデルガード州で、10月28日にMSFが開設した移動診療所 © MSF避難民が急増したカーボデルガード州で、10月28日にMSFが開設した移動診療所 © MSF


激増する避難民

「先週だけでおよそ1万人の避難民が、ボートで海を渡り州都ペンバに到着しました。多くの人が脱水症状を起こしていて、中には海上で出産した女性や、致命的な重度下痢症に陥った人もいます。先月1カ月間に2万人が到着し、今後さらなる増加も予想されるため、現地の医療スタッフは緊張状態にあります」。カーボデルガード州でMSFのプロジェクト・コーディネーターを務めるジョアキム・グイナルトは話す。

ペンバ市とその周辺では、約10万人が校舎などの一時避難所や地域住民の家に避難しており、市の人口はそれまでと比べて3分の1ほど増加した。多くの避難民は、清潔な飲料水が手に入らず、また不衛生で過密な環境にいるため、マラリア、はしか、下痢症、新型コロナなどの感染症から無防備となっている。

医療サービスの縮小と雨期の到来

同州で2017年10月に始まった戦闘は激化する一方で、終結の気配はない。州の人口の5分の1近くが自宅を追われ、医療やその他のサービスをほぼ利用できていない。MSFも今年3月、州北部モシンボア・ダ・プライアで行っていた医療活動が中断に追い込まれ、5月には州中部マコミアでの武力攻撃で、MSFの診療所も略奪と放火の被害に遭ったため、同地域での活動も中止に追い込まれた。紛争が始まって以来、推定で20カ所余りの医療機関が破壊されている。

MSFは拠点をペンバ市内に移し、避難民や地域住民への医療援助を行っている。それでも州内での活動維持は困難が尽きない。運営面での制約や新型コロナによる渡航制限によって、ニーズが急増しているにも関わらず、最低限の人員で対応せざるを得ないからだ。
 

9月初旬、下痢症の発生に対応するため、移動診療所で診察を行うMSFのチーム © MSF9月初旬、下痢症の発生に対応するため、移動診療所で診察を行うMSFのチーム © MSF


国内避難民の急増を受け、MSFは9月にペンバからほど近いメトゥゲ地区で移動診療所を開設。今後は遠隔地でも医療を受けられるようにするため、10月28日に2番目の移動診療所も立ち上げた。また、避難所や医療施設で水と衛生設備の支援を行い、ペンバでは下痢症治療センターを運営している。来る雨期に備えて安全な水を確保するために、MSFはパートナーと共にメトゥゲ地区で150基のトイレを設置、27台の手動給水ポンプと5つの給水網の修復も行った。だが、この地域で増大するニーズからすれば、こうした活動はごく一部に対応したに過ぎない。

モザンビークでMSFの現地活動責任者を務めるアラン・カッサは次のように話す。「MSFは、カーボデルガード州での暴力と治安状況の悪化、そして雨期に避難民が急増していることを深く憂慮しています。人道援助の努力は続いていますが、基本的なニーズを満たすにも程遠い状況です。いますぐ行動しなければ、事態は急速に悪化しかねません。MSFは滞りなくスタッフの追加動員と物資の搬入が行えるよう、モザンビーク当局に対し支援を要請しています」

MSFは1984年にモザンビークで活動を開始。ペンバ市では、保健当局の支援を通じて上下水道の改善や、感染性下痢症の集団発生に備えた対応を行っている。MSFはマプトとベイラ市では進行性HIV、結核、肝炎などの患者や弱い立場にある人びとのケアを担っている。またすべてのプロジェクトで、MSFはモザンビーク保健省による新型コロナ対策を支援。感染制御、トリアージ、感染発生状況の監視などの予防措置を実施している。

 

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本社所在地
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代表者名
村田慎二郎
上場
未上場
資本金
-
設立
1992年12月