シリア:北東部の避難民キャンプで深刻な人道危機

国境なき医師団

シリア北東部のハサカ県にあるアルホール避難民キャンプでは、予防できる病気で子どもが命を落とし、女性は不衛生な環境での出産を強いられているーー過激派勢力「イスラム国」とシリア民主軍(SDF)の最終戦が起きたデリゾールから逃げてきた人びとだ。このキャンプは現在7万3000人が滞在し、すでに満員の状態だ。住民の94%は女性と子どもで、現地の治安維持部隊によってキャンプ内に留め置かれている。国境なき医師団(MSF)は、キャンプの人びとが公平かつ人道的に必要な治療を受けられるよう強く求めている。

2月に新しくキャンプに到着した避難民は、場所が足りず、雨の野外で過ごした © MSF2月に新しくキャンプに到着した避難民は、場所が足りず、雨の野外で過ごした © MSF

 

公平に人道援助が受けられない

アルホール避難民キャンプの住民のほとんどは、2018年12月から2019年3月にかけ到着した人びとだ。激しい地上戦と空爆から避難したか、退去を迫られて自宅を離れた。多くは、戦闘の前線近くで数週間、食料も医療も足りない状態で過ごし、疲れ果てている。到着時に負傷していた人もいる。治安維持が民間人の保護やニーズよりも優先されるなか、自宅を離れ厳しい天候下で長い避難の旅をしてきたことで、人びとの健康はさらに悪化している状況だ。

シリアにおけるMFSの緊急対応責任者、ウィル・ターナーは、「避難者はトラックの荷台に詰め込まれた状態で着きました」と話す。「ほとんどの人は泥だらけで、多くはけがをしているか病気になっています。空腹で大勢の子どもが栄養失調になっていました」

食料、水、仮設住居、下水設備も医療も足りていない状況は、数ヵ月にわたって改善されず、人道危機の状態が続いている。基礎的な医療の一部は受けられるものの、その場所はキャンプ内に均等に設置されていないため、誰もが等しく利用できない。キャンプにはフェンスで仕切られた併設エリアがあり、シリア人以外の外国人が「第三国民」として収容されている。このエリアに住む1万1000人のうち、7000人は子どもだ。治安上の懸念から、現地当局はここに住む外国人に追加制限を課し、自由に移動できない。キャンプ内の基礎医療機関へ行くことができず、妊婦はテント内でお産をするしかない。

ターナー責任者は、「人道援助団体と資金拠出者の中にも、武装勢力とつながりがあるとみられた人たちには診療を提供したがらないところがあります」と話す。「医療を受けるのに条件があってはいけません。経歴、国籍、社会的地位、避難した理由に関わりなく、全ての人は必要な時に素早く医療・人道援助を受ける権利があります」

到着した人びとを受け入れトリアージするMSFチーム © MSF到着した人びとを受け入れトリアージするMSFチーム © MSF


気温の上がる夏を前に対応拡大を

キャンプ内の給排水と下水設備は、緊急事態でも最低限必要とされる基準を下回っている。キャンプ全域で水の供給は滞りがちで、多くのトイレが壊れていて、その結果、人びとは野外で用を足さざるを得ない。「水様性下痢の患者が多くいます。給排水・衛生環境が整っていないためです」とターナーは話す。

また、合併症のある患者はキャンプ外の病院に紹介してもらうための許可を簡単に得られず、治療が遅れる事もある。外の病院に移されたとしても、周辺地域の医療機関は混雑していて、空きのベッドがないことも多い。テントで亡くなる子どもたちの話も報じられている。

「この状況は悪くなる一方ではないかと懸念しています。夏になって気温が上昇し始めたときが心配です。人びとは生活基盤が整わない場所で暮らしているのですから。脱水症状や予防できる病気で、子どもたちを死なせてはいけません。見過ごされ、基礎的な医療を受けられなかったなど、理由にならないのです」

 MSFはキャンプ内外で医療活動を拡大し続けている。キャンプへ新たに到着する人の数は、ここ数週間で安定してきているが、住民のニーズは満たされているというには程遠い。より計画的で長期的な人道対応が必要だ。MSFは、アルホールの人道援助が拡充され、援助団体がキャンプ全域への通行を許可され、国際人道法とその原則に則って、人びとを公平かつ人道的な方法で治療できるように求めている。

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業種
医療・福祉
本社所在地
東京都新宿区馬場下町1-1  FORECAST早稲田FIRST 3階
電話番号
03-5286-6123
代表者名
村田慎二郎
上場
未上場
資本金
-
設立
1992年12月