【国立科学博物館】ブラジル調査隊の寄贈標本から新種鉱物を発見 ~世代を超えた連携による標本登録で実を結んだ新種発見~
独立行政法人国立科学博物館(館長:篠田謙一)地学研究部の宮脇律郎(地学研究部長)らはブラジルミナスジェライス州のニオブ鉱床の標本から新種鉱物「水酸ケノパイロクロア石(学名hydroxykenopyrochlore)」を発見しました。このたび、その記載論文がカナダ鉱物学会誌Canadian Mineralogist誌に掲載発表されます。
〇研究の背景
1987年から1989年にかけて、科学研究費助成事業として東京大学・サンパウロ大学合同調査隊により採集された資料の主要部が2014年に当館に寄贈されました。これを機に、当時調査隊に加わっていた堀内弘之博士(元 東京大学・弘前大学)を当館の客員研究員として招き、2年にわたり資料の再評価・分析による標本登録を進めました。その中に、新種鉱物を見いだし、審査に必要なデータを整え、国際鉱物学連合 新鉱物・命名・分類委員会に申請(IMA 2017-030a)の後、公式な新種承認を受けました。
今回の新種発見は、科学研究費助成事業、大学による調査研究、博物館への標本寄贈と客員研究員制度が見事に連携した成果です。この新種はパイロクロア石超族パイロクロア石族に属するニオブと希土類元素(いずれも資源として注目されるレアメタル)を主成分とするものです。2010年に、パイロクロア石超族の分類命名規約が改訂され、この規約がカナダ鉱物学会誌に掲載・公開されたため、この新種の記載論文を同誌に投稿し2020年11月に掲載受理されました。このたび論文は早期電子版として公開され、同誌59巻3号にも掲載される見込みです。
○研究のポイント
[参考図]
登録番号NSM-FM160011。この黄褐色の標本は、水酸ケノパイロクロア石とバリウムに富む水和ケノパイロクロア石、重晶石、磁鉄鉱の細かい結晶の集合体。肉眼で結晶粒子を見分けることは困難で、特に水酸ケノパイロクロア石と水和ケノパイロクロア石は同一の結晶(図2)を構成するので、電子顕微鏡などでしか区別できない。(1円硬貨の半径は1cm。)
[用語解説]
国際鉱物学連合 科学の最も古い分野の1つである鉱物学を推進するため、1958年に設立。38の国と地域の鉱物学会または鉱物学関連団体が加盟。鉱物学の着実な発展のため、委員会と作業部会を設け、4年に1回、総会として国際会議を開催し、国際的な鉱物学者の相互交流を通じて学術の進歩を促進する。日本からは日本鉱物科学会が加盟。加盟金は日本学術会議が負担。
新鉱物・命名・分類委員会 2006年の国際鉱物学連合神戸大会で、新鉱物委員会と分類委員会が合併。新種の記載、種の再定義、種の抹消ならびに命名規約、分類規約を司る。新種鉱物の記載など、学術誌等に先立ち委員会の承認を要する国際制度を維持管理する。現委員長:宮脇律郎(国立科学博物館)。現日本代表委員:門馬綱一(国立科学博物館)。
[掲載論文]
【題 名】 Hydroxykenopyrochlore, (□,Ce,Ba)2(Nb,Ti)2O6(OH,F), a new member of
the pyrochlore group from Araxá, Minas Gerais, Brazil (ブラジルミナス・ジェライス産パイロクロア石族新種鉱物、水酸ケノパイロクロア石)
【著者名】Ritsuro Miyawaki, Koichi Momma, Satoshi Matsubara, Takashi Sano, Masako Shigeoka, and Hiroyuki Horiuchi (宮脇律郎・門馬綱一・松原 聰・佐野貴司・重岡昌子・堀内弘之
【掲載誌】Canadian Mineralogist
DOI: 10.3749/canmin.2000094
なお、新種の記載論文は、新種発見の発端となった調査隊のブラジル側の貢献者、サンパウロ大学の故Kenkichi Fujimori教授(日系2世)に捧げられる旨、論文の最後の謝辞に記された。
■国立科学博物館:https://www.kahaku.go.jp/
■国立科学博物館 筑波研究施設:https://www.kahaku.go.jp/institution/tsukuba/
1987年から1989年にかけて、科学研究費助成事業として東京大学・サンパウロ大学合同調査隊により採集された資料の主要部が2014年に当館に寄贈されました。これを機に、当時調査隊に加わっていた堀内弘之博士(元 東京大学・弘前大学)を当館の客員研究員として招き、2年にわたり資料の再評価・分析による標本登録を進めました。その中に、新種鉱物を見いだし、審査に必要なデータを整え、国際鉱物学連合 新鉱物・命名・分類委員会に申請(IMA 2017-030a)の後、公式な新種承認を受けました。
今回の新種発見は、科学研究費助成事業、大学による調査研究、博物館への標本寄贈と客員研究員制度が見事に連携した成果です。この新種はパイロクロア石超族パイロクロア石族に属するニオブと希土類元素(いずれも資源として注目されるレアメタル)を主成分とするものです。2010年に、パイロクロア石超族の分類命名規約が改訂され、この規約がカナダ鉱物学会誌に掲載・公開されたため、この新種の記載論文を同誌に投稿し2020年11月に掲載受理されました。このたび論文は早期電子版として公開され、同誌59巻3号にも掲載される見込みです。
○研究のポイント
- 科研費「ブラジル、ポッソス・デ・カルダスにおける希土類、放射性鉱物の調査研究」(課題番号63043014)において採集された鉱物資料の主要部が散逸することなく当館に寄贈された。
- 寄贈された鉱物資料は、調査隊に加わった堀内弘之客員研究員や前地学研究部長の松原聰名誉研究員を中心に精査され、300点あまりのまとまった外国産鉱物コレクションとして学術標本に組み入れられた。
- 標本登録での鉱物種の判定作業で、標本は精査され、希土類鉱物を専門とする宮脇部長の解析評価により、最終的に新種の発見という成果につながった。
- 今回の新種は、パイロクロア石超族の分類命名規約に基づき、水酸化物イオンに富み、陽イオンの欠乏が著しいニオブを主成分とするパイロクロア石超族の一員として命名された。
[参考図]
図1.「水酸ケノパイロクロア石(学名hydroxykenopyrochlore)」の模式標本。
登録番号NSM-FM160011。この黄褐色の標本は、水酸ケノパイロクロア石とバリウムに富む水和ケノパイロクロア石、重晶石、磁鉄鉱の細かい結晶の集合体。肉眼で結晶粒子を見分けることは困難で、特に水酸ケノパイロクロア石と水和ケノパイロクロア石は同一の結晶(図2)を構成するので、電子顕微鏡などでしか区別できない。(1円硬貨の半径は1cm。)
図2.「水酸ケノパイロクロア石(学名hydroxykenopyrochlore)」の反射電子像。写真の横幅は約0.3mm。バリウムに富む水和ケノパイロクロア石(淡灰色)が同じ1粒の結晶の核(中心部)となり、その外周に、新種、水酸ケノパイロクロア石(濃灰色)が成長している(直線的な縞模様)。この結晶を囲む磁鉄鉱(暗灰色)もろとも貫入した重晶石(明灰色)により破断されている。
[用語解説]
国際鉱物学連合 科学の最も古い分野の1つである鉱物学を推進するため、1958年に設立。38の国と地域の鉱物学会または鉱物学関連団体が加盟。鉱物学の着実な発展のため、委員会と作業部会を設け、4年に1回、総会として国際会議を開催し、国際的な鉱物学者の相互交流を通じて学術の進歩を促進する。日本からは日本鉱物科学会が加盟。加盟金は日本学術会議が負担。
新鉱物・命名・分類委員会 2006年の国際鉱物学連合神戸大会で、新鉱物委員会と分類委員会が合併。新種の記載、種の再定義、種の抹消ならびに命名規約、分類規約を司る。新種鉱物の記載など、学術誌等に先立ち委員会の承認を要する国際制度を維持管理する。現委員長:宮脇律郎(国立科学博物館)。現日本代表委員:門馬綱一(国立科学博物館)。
[掲載論文]
【題 名】 Hydroxykenopyrochlore, (□,Ce,Ba)2(Nb,Ti)2O6(OH,F), a new member of
the pyrochlore group from Araxá, Minas Gerais, Brazil (ブラジルミナス・ジェライス産パイロクロア石族新種鉱物、水酸ケノパイロクロア石)
【著者名】Ritsuro Miyawaki, Koichi Momma, Satoshi Matsubara, Takashi Sano, Masako Shigeoka, and Hiroyuki Horiuchi (宮脇律郎・門馬綱一・松原 聰・佐野貴司・重岡昌子・堀内弘之
【掲載誌】Canadian Mineralogist
DOI: 10.3749/canmin.2000094
なお、新種の記載論文は、新種発見の発端となった調査隊のブラジル側の貢献者、サンパウロ大学の故Kenkichi Fujimori教授(日系2世)に捧げられる旨、論文の最後の謝辞に記された。
■国立科学博物館:https://www.kahaku.go.jp/
■国立科学博物館 筑波研究施設:https://www.kahaku.go.jp/institution/tsukuba/
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