「無園児家庭の孤独感と定期保育ニーズに関する全国調査」結果発表。働く親のための保育園から、全ての子どものための保育園へ!

親が子育てで孤独を感じやすく、56.4%が定期保育サービスの利用を希望。一時預かりの利用は1割にとどまる

認定NPO法人フローレンス

親子の笑顔をさまたげる社会課題の解決に向けて、孤独な子育てや子どもの虐待死問題、経済的に困難を抱える家庭やひとり親家庭への支援などに取り組む認定NPO法人フローレンス(東京都千代田区、代表理事:駒崎弘樹)は、株式会社日本総合研究所に委託し、全国の未就学児の保護者2,000名にアンケート調査を実施。未就園児(無園児)家庭の子育ての現状と定期保育サービスの利用ニーズを明らかにしました。
また、仮に保育所等で無園児家庭の子どもたちを受け入れる場合を想定し、未就園児(無園児)家庭が希望する利用率・利用頻度のパターンごとに、保育所等のキャパシティ及び必要財源を試算いたしました。

  • 「無園児」とは
普段保育所・幼稚園等に通園していない就学前の児童を指します。本アンケート調査は、0歳以上の未就学児を育てる保護者を対象としています。
  • 保護者アンケート調査 概要
コロナ禍でますます深刻化する孤独・孤立の問題。子育て環境についても例外ではありません。

保育園や幼稚園に通っていない未就園児(無園児)家庭は社会的とのつながりが希薄になりやすく、特に、専業主婦家庭では、平日の子育ての分担を母親ひとりで対応している割合が高く、精神的な負担や子育てについての悩み、不安を感じる割合も高いと言われています。

そこで、保育園、幼稚園などを定期的に利用している家庭と、そうでない家庭(=無園児家庭)を比較し、生活実態や精神的な状態、保育所等の利用ニーズに迫りました。

<調査概要>
調査方法:インターネット上での回答
調査期間:2022年3月3日(木) ~3月7日(月)
調査対象:長子が未就学児の保護者(父親又は母親)
調査対象者数:2,000件
  • ​保護者アンケート調査 結果サマリ
●未就園児(無園児)家庭の方が、親が子育てで孤独を感じやすい
未就園児(無園児)家庭の方が、定期的に保育サービスを利用している家庭よりも「子育ての中で孤独を感じる」と回答した割合が10.6ポイント高く、未就園児(無園児)をもつ低年齢家庭では「子育ての中で孤独を感じる」と回答した人が5割以上を占めました。

 


 

●子育てで孤独を感じている家庭ほど定期保育サービスの利用意向が高い
子育ての中で孤独を感じている家庭の70.6%が定期保育サービスを「利用したい」と回答。

 

 

「子どもに手をあげてしまいそうなことがある」「子どもを怒鳴ってしまうことがある」といったリスク行動が見られる家庭の方が、そうでない家庭と比べて定期保育サービスを「利用したい」割合が高い傾向も見られます。


●未就園児(無園児)家庭の過半数が定期保育サービスの利用を希望
未就園児(無園児)家庭の56.4%が定期保育サービスの利用を希望。利用する場合の希望頻度としては、週1~2日、1回あたり3~5時間が多く、現行制度よりも低頻度・短期間での利用ニーズが寄せられています。一方で、実際に一時預かりサービスを利用したことがある未就園児(無園児)家庭は1割強にとどまりました。

 


●子どもへの愛着度と、定期保育サービスの利用意向の相関
「子どもがかわいくてたまらない」に対して「あてはまらない」と回答した方の7割以上が「定期保育サービスを利用したいと思わない」と回答しました。皮肉にも、子どもへの愛着度が低い家庭ほど定期保育サービスの利用意向が低いことが明らかになりました。

定期保育サービスの利用が任意の場合、親が自発的に利用する必要があります。例えば、ネグレクトが疑われるような、子どもへの愛着度が低い家庭は、自発的な利用をしない可能性があり、外部から積極的に利用を促す必要性が考えられます。
 

  • 未就園児(無園児)家庭の保育ニーズに関する推計(キャパシティ・財源試算)
未就園児(無園児)家庭が希望する利用率・利用頻度のパターンごとに、保育所等のキャパシティ及び必要財源を試算いたしました。

●保育所等空き定員数は今後も継続的に増加することが見込まれる
厚生労働省や総務省、文部科学省などの調査をもとに保育所等空き定員数を試算した結果、2022年時点ですでに計46万人程度の空きがあり、その後も増加傾向であることがわかりました。待機児童が多く発生していた0歳児、1・2歳児においても、今後継続してそれぞれ10万人以上の空き定員数が見込まれます。

 

 

 


また、保育所等の空き定員を利用して、未就園児を受け入れることが可能であるかどうか試算した結果、地域及び学年区分を加味しない場合、2022年度時点ですでに未就園児計145万人全員を週1回受け入れることが可能な状況であることが分かりました。

 

 

●少子化に伴う補助額相当分の活用で、未就園児(無園児)の定期保育ニーズ*を充足できる
厚生労働省や総務省、文部科学省などの調査をもとに、未就園児受け入れに伴う財源を試算したところ、2028年には少子化に伴い減少する国の保育園等への補助額相当分で、未就園児の定期保育に必要な財源を補える見込みであることが分かりました。

 

  • 私たちの提言
まずは待機児童問題が解消している地域で、空き定員枠を活用して、希望する誰もが週1~2日からでも保育園を利用できるようにしてください


現在、保育園は、親の就労などの理由により、「保育の必要性」が認められないと入園できません。
そのため、多大な苦労を伴って、「保活」をせざるを得ない状況があります。
一方、「保活」のハードルの高さに入園を諦め、家の中で、誰にも知られることなくお子さんと親御さんが孤立を深めているご家庭もあります。

無園児家庭は、「孤独な子育て」に陥りやすく、24時間小さな子どもと過ごすことでストレスがかかり、虐待リスクも高まることがあります。
虐待リスク行動がエスカレートしていても、家庭が地域から孤立し閉ざされていると、気づくことができず痛ましい事件が後を絶ちません。

もしも、週1日でも2日でも保育園を利用することができれば、保育士が家庭内のリスクや異変に気づくことができ、早期に支援につなげることができます。
保育園は、保育を提供するだけでなく、子育ての「セーフティネット」としての重要な役割を担っているのです。

乳幼児期から保育園を利用することで、子どもの発達や養育など子どもに関する専門知識をもつ保育士や、地域の子育て仲間とつながることができ、「孤独な子育て」に陥りにくくなります。また、ネグレクトなど適切な養育が受けられていない子どもに対しても、保育園への定期的な通園がセーフティネットとなりえます。

先日の厚生労働省の発表によると、出生率が6年連続で低下し、2021年の出生数も81万人と過去最少となりました。
先程の調査結果にもあったように、保育園には無園児を預かるキャパシティが出てきました。待機児童対策が急務だった保育の現場はいま、少子化の加速で地域によっては定員割れが続々と発生しています。東京23区内でも、定員に空きが出ている保育園もあります。

今年3月の厚労省の調査研究事業による調査結果でも、少子化によって運営維持が難しくなると答えた保育施設は過半数にのぼりました。

保育園が閉園になるということは、地域の子育てを支える重要なインフラを失うということです。
今こそ、保育園を「保育を必要とする全ての子どもたちと親たちのセーフティネット」として、間口を広げていくことを提案します。

まずは待機児童問題が解消している地域で、空き定員枠を活用して保育の必要性認定のない専業主婦家庭などでも、希望する誰もが週1~2日からでも保育園を利用できるようにしてください。

私たちは、現状の制度を見直し、希望する全ての家庭が保育園を利用できるよう、引き続き国に対して提言活動を行ってまいります。

 
  • 「保育の必要性認定」の壁に阻まれ窮地に陥った経験のある当事者より
「私には5歳の長女と4歳の双子の男児がいます。
3人の保育園入園が決まったときは、子どもたちを死なせずにここまで生かすことで精一杯だった私が、『もう、誰かに頼っていいよ』と自治体から認められたような気持ちでした。

トータル2年3ヶ月の自宅保育でした。
今でも思い出すと胸がぎゅーっと締め付けられるようなあの日々は、何かのボタンが一つ掛け違っていれば、何かのタイミングが1分1秒ズレていれば、私も虐待死事件の母親となっていたかもしれません。そんな脆い危険な状態と紙一重でした。

でも、紆余曲折を経て、保育園に通うことができました。
子どもたちにとっては、安心して自分の気持ちを話せる場所として、家庭と保育園の2つがあるように思います。
家族という社会だけではなくて、保育園という家庭とは違う社会で過ごすことによって、家の他にも安心できる場所があるということを本人たちは知れたのではと思っています。
だからこそ、保育を必要なご家庭に対して開かれた保育園であってほしいと強く望みます。我が家を救ってくれたのは間違いなく保育園でした。」


「関西で3人の子どもを育てています。
長男は夜泣きと授乳がとにかく頻回で、日中も抱っこしていないと寝てくれない子でした。夫と、すぐ近くに住んでいる実の母はフルタイムで働いていたため日中は私1人で長男を見る日々。常にイライラかボーッとしていて、産後うつ状態だったと思います。結局夜泣きは3歳直前まで、授乳は2歳半まで続きました。さらに長男はアレルギー持ちで通院ばかり。2歳をすぎるまで発語もなくひたすら私1人で喋りたおす毎日。近所にママ友が皆無だった私は、誰でもいいから大人と話したい、この子と2人きりじゃない空間で時間を潰したいと地域の子育てセンターや親子のつどいに行くも、初対面のママたちと何を話したらいいかも分からず、長男は極度の人見知りと場所見知りで大泣き、結局2人で泣きながら帰ったことも度々でした。

働いていない母親がどこにも預けず自分だけで四六時中子供を見るというのは、いくら愛情があると言えども限界があります。私のように実母や夫の両親が近くにいたとしても、親たちが現役で働いていることは往々にしてあり、親たちにも生活があるわけで、そんな中で孫の世話や家事手伝いの協力を仰ぐにも限界があります。
だからこそ、誰もが定期的に子どもを預けられる場所を作ってもらいたい。

今まさにお子さんと孤立してしまっている親御さん。社会から断絶され、先の見えない長く真っ暗なトンネルの中、今日一日をどうやり過ごそうかと毎日必死ではないでしょうか。
つらい、しんどい、消えて無くなりたい、子どもと居ても全然幸せを感じられない…そんな方が一日でも早く笑顔を取り戻せるよう、お子さんを預けられる場所、頼れる場所、サポートしてくれる存在と出会えることを願って止みません。」

 

 
  • 人口減少による保育施設への影響
厚生労働省の「令和3年度 子ども・子育て支援推進調査研究事業」の調査として行われた日本総研による「人口減少地域等における保育の提供に関する調査研究」(https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/column/opinion/detail/2021_13358.pdf)では、人口減少の影響で、利用する児童の確保への影響について、11.9%が「現在影響が生じている」、54.1%が「今後影響が生じる可能性がある」と回答しています。

また、施設の運営の維持が難しくなるかどうかについては、12.2%が「現在影響が生じている」、55.7%が「今後影響が生じる可能性がある」と回答しました。

 

 
  • ​参考資料
無園児*家庭の孤独感と定期保育ニーズに関する全国調査 報告書
https://florence.or.jp/cms/wp-content/uploads/2022/06/0615_report.pdf

*普段保育所・幼稚園等に通園していない就学前の児童のこと
  • ​認定NPO法人フローレンスについて
フローレンスは、日本初の訪問型病児保育事業団体として2004年に設立され、「みんなで子どもたちを抱きしめ、子育てとともに何でも挑戦でき、いろんな家族の笑顔があふれる社会」の実現に向け活動する、国内有数の認定NPO法人です。

子育てと仕事の両立、そして未来を担う子どもたちを社会で育むために、親子に関わる社会課題を数々の事業と政策提言によって解決しています。

待機児童問題解決のための「おうち保育園」モデルが、2015年度に「小規模認可保育所」として国策化されたほか、障害児に長時間保育を提供する日本初の「障害児保育事業」や、子どもの虐待問題解決のため「赤ちゃん縁組事業」、子どもの貧困を解決する「こども宅食事業」などの取り組みを加速しています。

フローレンスコーポレートサイトURL: https://florence.or.jp/

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医療・福祉
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電話番号
03-6811-0903
代表者名
赤坂 緑
上場
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資本金
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設立
2004年04月