オープンバンキングの浸透により銀行と企業の相互接続が増える中、接続先企業のセキュリティ強化が銀行にとっての重要課題に――アクセンチュア調査レポート「バンキング テクノロジービジョン2019」

カスタマイズされたサービスをリアルタイムに提供されることを望む顧客ニーズにより、銀行での最新技術の導入が加速

アクセンチュア株式会社

アクセンチュア(NYSE: ACN)が毎年発表している、今後3年間の銀行業界における主要なテクノロジートレンドを予測する調査レポート「Banking Technology Vision 2019(以下、バンキング テクノロジービジョン2019)」によると、銀行の保有する顧客データや機能を外部企業に開放する「オープンバンキング」の動きが世界各地で加速しているのに伴い、銀行は自行のみならず、接続先企業を含むエコシステム・パートナーのセキュリティも強化していく必要があることが明らかになりました。
本レポートによると、顧客は自分のデータが銀行で安全に保管されていると信頼している一方で、業界がオープンバンキングに移行する中、銀行はこの信頼を維持するため、堅牢なセキュリティと優れた顧客体験を両立させることが求められています。回答した銀行の経営幹部およびIT担当幹部の92%は、銀行のエコシステム・パートナーにおける顧客からの信頼獲得が「とても重要」または「極めて重要」と述べている一方で、「自行のエコシステム・パートナーが、セキュリティに関するコンプライアンスや復旧への対応に真摯に取り組んでいる」と感じている回答者は31%にとどまりました。

アクセンチュアの銀行グループのグローバル責任者であるアラン・マッキンタイヤー(Alan McIntyre)は次のように述べています。「エコシステム・パートナーのネットワーク内で最も留意すべき部分が、セキュリティと言えるでしょう。オープンバンキングが世界の潮流となり、銀行と外部企業との相互接続が増える中、これらのつながりに起因するリスクにさらされる危険も増加しています。顧客は銀行を信頼し、商品やサービスの提供を受ける代わりに個人情報を提供してもよいと考えています。この信頼を維持するために、銀行は自行のみならず、そのエコシステムへと範囲を広げ、セキュリティへのアプローチを見直していく必要があります。そのためには、コンプライアンスを中心としたアプローチから、積極的なサイバーセキュリティ対策を講じるスタンスへと、シフトすることが求められるでしょう」

アクセンチュアの年次調査レポート「バンキング テクノロジービジョン2019」は、25人以上の有識者で構成される諮問委員会による分析、テクノロジー分野の有識者や業界の専門家へのインタビュー、および約800人の銀行の経営幹部およびIT担当幹部を対象とした調査結果に基づいて作成されています。今年のレポートは「ポストデジタル時代の到来 – 次への備えはできているか(The Post-Digital Era is Upon Us – Are You Ready for What’s Next?)」をテーマに、銀行が競合する、伝統的な銀行、フィンテック企業、巨大テクノロジー企業、または新規参入企業などとの差別化を図るために検討すべき評価項目として、「自身を守るために全体を守る(Secure Us to Secure Me)」などを含む、5つのテクノロジートレンドを挙げています。

そのトレンドの一つである「『私』を理解せよ(Get to Know Me)」によると、銀行が新しいテクノロジーを採用する主な目的は、顧客との親しい関係を取り戻し、小さな町の銀行での取引に似た体験を再現することです。回答者の大半が、デジタル動態統計の活用により、潜在的な顧客ニーズ発掘に向けた新たな市場機会の見極めが可能になる(85%)、また顧客を理解するためのより強力な手段となる(83%)と考えています。顧客行動への理解を深めることで、銀行はクレジットカード詐欺などから顧客を守ることなどが可能になります。

前述のマッキンタイヤーはまた次のように述べています。「銀行は各種デジタルツールで顧客のリアルタイムな情報を捕捉することで、今までは把握しきれなかった顧客ニーズの特定に役立てることができます。これによって銀行は、一人ひとりの顧客に特化した『セグメント・オブ・ワン』という夢のような商品やサービスの実現に大幅に近づくのです」

顧客の需要や技術革新により、銀行にはさらなる顧客体験の向上が求められており、カスタマイズされたサービスをリアルタイムで提供することが、競争力を高めるカギとなります。5つのテクノロジートレンドの一つである「マイマーケット(MyMarkets)」では、5Gネットワークの普及により、銀行は顧客に最も関連性の高い商品やサービスを最適なタイミングで提供することが可能になると示されています。回答者の78%が、5Gは銀行業界に革命をもたらし、金融アドバイスをシームレスに提供できる高速の動画伝送など、商品やサービスの新しい提供方法が可能になると述べています。また回答者の55%が、5Gが業界に大きな影響をもたらすのは3年以内と考えているほか、20%は4〜5年以内と回答しています。

前述のマッキンタイヤーはさらに次のように述べています。「銀行業界で進む創造的破壊は、業界全体の構造を変革するでしょう。SNSやモバイル、アナリティクス、クラウドといったテクノロジーはこの5年間で金融サービスを変革し、銀行運営の中核テクノロジーとなりました。銀行は、創造的破壊をもたらす次なるテクノロジーを習得する必要があります。アクセンチュアではこのようなテクノロジーは分散型台帳技術(Distributed Ledger Technology)、人工知能(AI)、拡張現実(Extended Reality:XR)、量子コンピューティング(Quantum Computing)であると位置付けており、総称して『DARQ』と呼んでいます。

また、回答者の47%は、今後3年間で自行に最も影響を与えるのはAIだと考えています。5つのテクノロジートレンドの一つである「DARQの力」では、銀行はAIを活用した運営を強化することでコストを20〜25%削減することが可能であると述べています。なお、半数以上の銀行が1事業部門以上でAIを検証中または導入している一方で、AIの導入予定がない、またはAI導入のための評価を実施していない銀行も20%存在しています。

また、DARQの4つのテクノロジーのうち、今後3年間で自行に最も大きな影響を与えるのは量子コンピューティングと述べた回答者は19%で、分散型台帳/ブロックチェーン技術は17%にとどまりました。ブロックチェーン技術の早期導入者(アーリーアダプター)が意欲を喪失しつつある可能性も考えられます。

テクノロジートレンド「『ヒューマン+』としての労働者(Human+ Worker)」では、銀行は顧客のニーズにあったイノベーションだけでなく、労働者のニーズにあったイノベーションにも対応していく必要があることが示されています。銀行経営幹部の74%は、デジタル化に対しては、行員の方が銀行組織よりもうまく対応しており、逆に行員は銀行組織が自分たちのレベルに追いつくのを待っている状況にあると考えています。テクノロジーの導入により組織が高度化し、行員の異動や配置転換が進むのに伴い、トレーニングやスキルアップも重要となっています。回答者の45%は、行員の40%以上がすでにスキルアップが必要とされる新たな役職に異動したと答えており、71%は、行員の40%以上が3年以内にスキルアップが必要とされる新たな役職に異動すると考えています。

アクセンチュアの「バンキングテクノロジービジョン2019」の関連情報はこちらからご覧いただけます。
https://financialservicesblog.accenture.com/japan/five-tech-trends-set-banks-apart-post-digital-era

調査方法
「バンキング テクノロジービジョン2019」レポートは、アクセンチュア・ラボとアクセンチュア・リサーチが毎年作成している「テクノロジービジョン2019」の情報を基にまとめられています。「テクノロジービジョン2019」の調査では、公的機関や民間企業、研究機関、ベンチャーキャピタル、ベンチャー企業に在籍する25人以上の有識者で構成される「テクノロジービジョン外部諮問委員会」から収集された知見を参考にしています。また、テクノロジービジョンの編纂チームは、テクノロジー分野の有識者や業界の専門家、アクセンチュアの経営幹部約100人に対するインタビューも実施しました。同時に、新しいテクノロジーの導入に関する実態を調査するために、アクセンチュア・リサーチが、世界27カ国、20の業界にわたる6,672人の企業経営層およびIT担当幹部を対象に、主要な課題と優先的に導入、投資すべきテクノロジーについてオンライン調査を行いました。回答者の大多数は年間売上高60億米ドル以上の企業に所属しているCクラスの経営幹部および部門長が占めています。

年次調査レポート「バンキング テクノロジービジョン2019」は、銀行業界の動向についてまとめたもので、日本を含む、北米、ヨーロッパ、アジア太平洋地域、アフリカ、南米25カ国の銀行の経営幹部およびIT担当幹部、約800人を対象とした調査結果に基づいて作成されています。今回の調査は、主要な課題と優先的に採用、投資すべきテクノロジーを特定するのに役立てられました。主な回答者は、年商5億ドル以上(大多数の企業は年商60億ドル以上)の企業の上級役職者および部門・部署の責任者です。

本プレスリリースは、2019年5月7日(現地時間)にアクセンチュアより発表した内容を日本語に翻訳したものです。原文のプレスリリースは、以下のURLよりご覧いただけます。(英語のみ)
https://newsroom.accenture.com/news/as-open-banking-creates-new-access-to-banks-networks-security-among-ecosystem-partners-will-become-a-key-concern-according-to-accenture-study.htm

アクセンチュアについて
アクセンチュアは「ストラテジー」「コンサルティング」「デジタル」「テクノロジー」「オペレーションズ」の5つの領域で幅広いサービスとソリューションを提供する世界最大級の総合コンサルティング企業です。世界最大の規模を誇るデリバリーネットワークに裏打ちされた、40を超す業界とあらゆる業務に対応可能な豊富な経験と専門スキルなどの強みを生かし、ビジネスとテクノロジーを融合させて、お客様のハイパフォーマンス実現と、持続可能な価値創出を支援しています。世界120カ国以上のお客様にサービスを提供する48万2000人の社員が、イノベーションの創出と世界中の人々のより豊かな生活の実現に取り組んでいます。
アクセンチュアの詳細は www.accenture.com を、アクセンチュア株式会社の詳細はwww.accenture.com/jp をご覧ください。

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