【武蔵野大学】小学生のやり抜く力(粘り強さ)が自尊感情を介して 学校・生活満足度の向上と関連する可能性を解明

学校法人武蔵野大学

武蔵野大学教育学部幼児教育学科(東京都西東京市)今福 理博准教授と学部生の赤塚 愛梨さん※1は小学1~6年生を対象に(1)やり抜く力※2(粘り強さ)が高い児童ほど、自尊感情※3や学校・生活満足度が高くなること、(2)やり抜く力と学校・生活満足度の関係に自尊感情が媒介していることを解明しました。本研究結果は、やり抜く力が高い児童は学校・生活満足度が高く、その関係に自尊感情の高さが関与する可能性を示しています。 ※1 2020年研究当時 教育学科保育・幼児教育専修(現 幼児教育学科)4年生、2020年度卒業
本研究の成果は、2022年10月27日、国際科学誌「Child Care in Practice」のオンライン版に掲載されました。

本研究のイメージ本研究のイメージ


【1.背景】
教育分野では、やり抜く力や粘り強さなどの特性が注目されています。やり抜く力の高さは、教育のアウトカム(学習に対する態度、学業成績、生活満足度など)の良好さと関係するとされています。また成人では、やり抜く力が自尊感情を媒介して生活満足度と関連することがわかっています。しかし、小学生において、この関係性については明らかになっていませんでした。
 

【2.研究手法・成果】

本研究では、小学1~6年生107名とその保護者を対象に「日本語版Short Grit (Grit-S)尺度」、「日本語版Rosenberg自尊感情尺度」、「OECD生徒の学習到達度調査(PISA調査)で使用された学校所属感と生活満足度の尺度」を用いて、やり抜く力(努力の粘り強さ、興味の一貫性)、自尊感情、学校満足度、生活満足度を評価し、各尺度の得点の関連を調べました。

その結果、以下の3点が新たに明らかになりました。
1)粘り強さが高い児童ほど、自尊感情が高く、学校満足度及び生活満足度が高くなる
2)粘り強さの高さと学校満足度の高さの関係は、自尊感情の高さに媒介される(図1)
3)粘り強さの高さと生活満足度の高さの関係は、自尊感情の高さに媒介される(図2)
 

図1.やり抜く力-自尊感情-学校満足度の関連図1.やり抜く力-自尊感情-学校満足度の関連


 

図2.やり抜く力-自尊感情-生活満足度の関連図2.やり抜く力-自尊感情-生活満足度の関連


以上の結果は、粘り強さを持つ小学生ほど、自尊感情が高くなり、学校や生活の満足度が高くなる可能性を示しています。


【3.波及効果、今後の予定】
これまでの研究では、児童のやり抜く力と生活満足度の関係についてのメカニズムはよく分かっていませんでした。本研究は小学生において、やり抜く力(粘り強さ)と学校・生活満足度との関係が自尊感情を媒介としていることを明らかにしました。

本研究の成果を教育実践に応用する観点からは、やり抜く力に関する教育的介入が自尊感情や学校・生活満足度の育成につながる可能性が考えられます。例えば、大人が児童の目標達成までの過程を「がんばっているね」などと褒めることで、児童のやり抜く力は促されるかもしれません。また、個人内でやり抜く力がどのように発達変化していくかを縦断的に検討することで、その促進要因をより実践的に明らかにすることができると考えます。
児童のやり抜く力への介入と効果検証に関する研究は未解明な点が多くあります。児童の自尊感情や学校・生活満足度を育成するために、今後もやり抜く力、粘り強さに関する理論的・応用的研究を進めていきたいと考えています。


 【論文タイトルと著者】
タイトル: The mediating role of self-esteem in the relationship between
persistence and satisfaction with school and lifein elementary school children
(小学生のやり抜く力と学校・生活満足度との関係における自尊感情の媒介的役割)
著者: Masahiro Imafuku and Airi Akatsuska
掲載誌: Child Care in Practice
DOI: https://doi.org/10.1080/13575279.2022.2124956


 

【研究プロジェクトについて】
本研究は、以下の研究課題によって行われました。
(1)文部科学省研究費補助金 若手研究(No. 19K14392,代表:今福 理博)
(2)武蔵野大学 大学研究費2020(代表:今福 理博)


【用語説明】
※2 やり抜く力:長期的な目標に対する粘り強さや情熱。主に努力の粘り強さと興味の一貫性
※3 自尊感情:自分に対する肯定的な態度


 【研究者のコメント】
■武蔵野大学教育学部幼児教育学科 准教授 今福 理博
幼児期・児童期におけるやり抜く力、粘り強さは、将来の教育のアウトカム(学習に対する態度、学業成績、生活満足度など)を予測する重要な要因であるといわれています。本研究は、小学生のやり抜く力(粘り強さ)、自尊感情、学校・生活満足度の関連性を実証しました。今後も教育に貢献する研究成果を発表できるように努めたいと思います。

 
【今福 理博プロフィール】

武蔵野大学教育学部幼児教育学科准教授。京都大学博士(教育学)。京都大学大学院教育学研究科特定助教、日本学術振興会特別研究員(PD、東京大学大学院総合文化研究科)を経て現職。発達心理学を専門に、乳幼児の社会性や言語の発達を研究。著書に『赤ちゃんの心はどのように育つのか:社会性とことばの発達を科学する』(ミネルヴァ書房)、共著書に『ベーシック発達心理学』(東京大学出版会)、『はじめての発達心理学』(ナカニシヤ出版)など。 


【関連リンク】
■今福 理博の実践・研究に関するプレスリリース:
・「絵本でたくさんの言葉に触れる!発達心理学を研究する今福 理博准教授が絵本『どこかな どこかな?』を発刊」(2021年5月31日)

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000028.000067788.html

・「早産の赤ちゃんの社会性発達に関わるリスクマーカーを発見(2021年4月15日)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000020.000067788.html

・「身体の中の感覚に気づきやすい人ほど、表情模倣が起こりやすく、他人の視線にも敏感であることを解明」(2020年11月17日)
https://newscast.jp/news/8583136

■武蔵野大学教育学部幼児教育学科HP:
https://www.musashino-u.ac.jp/academics/faculty/education/child_development/


【武蔵野大学について】

武蔵野大学武蔵野キャンパス武蔵野大学武蔵野キャンパス

1924年に仏教精神を根幹にした人格教育を理想に掲げ、武蔵野女子学院を設立。武蔵野女子大学を前身とし、2003年に武蔵野大学に名称変更。2004年の男女共学化以降、大学改革を推進し12学部20学科、13大学院研究科、通信教育部など学生数13,000人超の総合大学に発展。2019年に国内私立大学初のデータサイエンス学部を開設。2021年に国内初のアントレプレナーシップ学部を開設し、「AI活用」「SDGs」を必修科目とした全学共通基礎課程「武蔵野INITIAL」をスタートさせる。2023年には国内初のサステナビリティ学科を開設する。2024年の創立100周年とその先の2050年の未来に向けてクリエイティブな人材を育成するため、大学改革を進めている。武蔵野大学HP:https://www.musashino-u.ac.jp

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業種
教育・学習支援業
本社所在地
東京都江東区有明三丁目3番3号
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-
代表者名
西本 照真
上場
-
資本金
-
設立
1924年04月