米国でのレドックスフロー電池を用いたNEDO実証事業で住友電気工業が「ISGAN Award 2024」を受賞しました
電力系統のレジリエンス確保に貢献できるベストプラクティスとして第15回クリーンエネルギー大臣会合にて表彰されました
NEDOと住友電気工業株式会社は、2015年から2021年まで米国・カリフォルニア州にて、カリフォルニア州政府とカリフォルニア大手電力企業と共同で、レドックスフロー電池(以下、RF電池)を用いた実配電系統でのマイクログリッド実証事業(以下、本実証事業)を実施しました。このたび、本実証事業による功績が認められ、RF電池によるシステムの運用を担当した住友電気工業が「ISGAN Award 2024」を受賞しました。
ISGAN Awardは、世界各国でのスマートグリッドに関する優れた取り組みを表彰するもので、10回目となる今回は「電力系統のレジリエンスのための柔軟性」をテーマに実施されました。国際資源情勢の変化や自然災害の頻発、被害の甚大化を踏まえ、電力インフラのレジリエンス向上の必要性が、日本だけではなく諸外国でもこれまでになく高まる中、本実証事業は電力系統のレジリエンス確保に貢献できる世界に共有すべきベストプラクティスとして高く評価されました。表彰式は、10月2日にブラジルで開催された第15回クリーンエネルギー大臣会合(CEM15)にて行われ、スマートグリッド開発における革新的かつ効果的な模範事例として世界に広くアピールされました。
1.概要
NEDOと住友電気工業は、2015年9月から2021年12月までカリフォルニア州サンディエゴにて、カリフォルニア州政府ビジネス・経済開発局(GO-Biz)の協力の下、カリフォルニア州の大手電力企業であるサンディエゴ・ガス&エレクトリック(SDG&E)と共同で、長寿命で大型化に適した定置用蓄電池「RF電池※1」を用いた実配電系統でのマイクログリッド実証事業※2を実施しました。住友電気工業は、SDG&Eの変電所内へRF電池によるシステムを構築し、その運用を担当しました。
動作上の制約が少なく、劣化率が低いという利点をもつRF電池を用いたシステムにより、平常時は電力市場取引で収益をあげながら、災害や計画停電などの非常時には自立電源として、停電あるいは停電予定地区に電力供給を行うマイクログリッド運用ができることを実証するという成果を得ました。
ISGAN Awardは、世界各国で実施されるスマートグリッドに関する優れた取り組みを表彰するもので、今年で記念すべき10回目の開催となり、「電力系統のレジリエンスのための柔軟性」をテーマに実施されました。国際エネルギー機関(IEA)傘下で、スマートグリッド関連技術の発展と普及を世界規模で促進することを目的に活動する公的ネットワークであるInternational Smart Grid Action Network(ISGAN)※3が、スマートグリッドの世界的な普及を推進する産業界の国際組織Global Smart Energy Federation(GSEF)※4と共同でISGAN Awardを運営しています。26の国と地域の政府や研究機関、産業界が参加する枠組みにおいて認められたことは、本実証事業の取り組みが国際的に高く評価されたことを示します。
このたび、本実証事業による功績が認められ、住友電気工業は「ISGAN Award 2024」において、多数の応募があった中で「Honorable Mention」(奨励賞)を受賞※5しました。日本企業としてISGAN Awardの受賞は3例目です。国際資源情勢の変化や自然災害の頻発や被害の甚大化を踏まえ、電力インフラのレジリエンス向上の必要性が、日本だけではなく諸外国でもこれまでになく高まる中、RF電池によるシステムを用いた本実証事業が、電力系統のレジリエンス確保に貢献できる世界に共有すべきベストプラクティスであると高く評価されました。
2.実証成果の概要
RF電池によるシステムは、実配電系統内で負荷調整と電圧制御のために活用され、電力量の取引市場であるエネルギー市場とアンシラリーサービス市場※6で収益向上に寄与することを実証※7しました。
また、カリフォルニア州で問題となりつつある自然災害や計画・輪番停電への対策としてマイクログリッド運用が注目される中、停電状態で補助電源を伴わずに蓄電池を起動するブラックスタートと、系統連系状態からマイクログリッドでの自立運転状態へ移行する際に需要家が停電を感じない無瞬断でのシームレス移行を安定的に行えることを追加的に実証※8しました。
平常時は電力取引を行いながら、非常時にはマイクログリッド運用時の電源として停電地域に電力を供給することとその経済性が実証できたことで、RF電池によるシステムがこの種の用途に適していることが確認できました。
3.表彰式と成果の展開
ISGAN Award 2024の表彰式は、10月2日にブラジルで開催された第15回クリーンエネルギー大臣会合(CEM15)にて行われ、スマートグリッド開発における革新的かつ効果的な模範事例として世界に広くアピールされました。
今回実証された成果は、離島などにおいて、ディーゼル発電機のような従来電源が太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーに移行することに伴う系統の電力品質の課題解決にも応用可能です。国内の離島や地域マイクログリッドへ成果が展開されることにより、電力の安定供給と再生可能エネルギーのさらなる普及拡大に貢献することが期待されます。
(左から3番目:受賞者として登壇されたSUMITOMO ELECTRIC U.S.A., INC. 川端 茂 社長
右から2番目:ISGAN加盟国および日本を代表しプレゼンターを務められた経済産業省資源エネルギー庁 木原 晋一 資源エネルギー政策統括調整官)
【注釈】
※1 RF電池
バナジウムなどイオン(活物質)の酸化還元反応を利用して充放電を行う蓄電池で、電池反応を行うセル、活物質を含む電解液、電解液を貯蔵するタンク、電解液を循環させるためのポンプと配管から構成されます。電極や電解液の劣化がほとんどなく長寿命であり、電解液が不燃であることや常温運転が可能なことから耐火性・安全性の高い蓄電池です。充電残量を計測可能なほか、電解液の量を調整することにより出力(kW)と容量(kWh)を独立に設計できる特長もあります。
なお、今回の実証の目的で供したRF電池の容量は、2MW/8MWhです。
※2 実証事業
事業名:エネルギー消費の効率化等に資する我が国技術の国際実証事業/米国加州における蓄電池の送電・配電併用
運転実証事業
事業期間:2015年度~2021年度
事業概要:エネルギー消費の効率化等に資する我が国技術の国際実証事業
https://www.nedo.go.jp/activities/AT1_00175.html
※3 International Smart Grid Action Network(ISGAN)
スマートグリッド関連技術の発展と普及を世界規模で促進することを目的に活動する、国際エネルギー機関(IEA)の技術協力プログラムとして26カ国と欧州委員会が加盟する国際的なネットワークです。
日本からはNEDOおよび経済産業省が参加しています。
※4 Global Smart Energy Federation(GSEF)
スマートでクリーンな電力システムの構築に取り組む世界各国の民間企業・学術機関が連携する国際組織です。関連する政府・非政府組織の協働支援や、各国の関連技術・施策の共有を行っています。
※5 「Honorable Mention」(奨励賞)を受賞
(参考)住友電気工業リリース(2024年10月10日)「米国でのレドックスフロー電池を用いたNEDO実証事業で「ISGAN Award 2024」を受賞」
https://sumitomoelectric.com/jp/press/2024/10/prs103
※6 アンシラリーサービス市場
安定的な電力供給のために必要な電力の予備力や調整力を調達することを目的に運営される市場です。カリフォルニア州での電力需給は、全てCalifornia Independent System Operator (CAISO)の市場を介して行われ、アンシラリーサービス市場はCAISOによって運営されています。
※7 電力量の取引市場であるエネルギー市場とアンシラリーサービス市場で収益向上に寄与することを実証
(参考)NEDOニュースリリース(2018年12月18日)「米国初、レドックスフロー電池の電力卸売市場での運用を開始 」
https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_101032.html
※8 無瞬断でのシームレス移行を安定的に行えることを追加的に実証
(参考)NEDOニュースリリース(2022年1月27日)「日米初の蓄電池による実配電網でのマイクログリッド構築・運用に成功 」
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