「日本経済学会 2023年度春季大会」における慶應義塾大学中嶋研究室との共同研究成果発表について

日本システム技術株式会社

当社と慶應義塾大学との間において実施中の後発医薬品(ジェネリック医薬品)普及に関する共同研究の

途中成果について、日本経済学会 2023年度春季大会にて発表いたしました。



■研究概要

 当社は医療ビッグデータ事業において、厚労省が掲げている目標である「2023年度末までに全ての都道府県でジェネリック医薬品(※1)の使用割合80%以上」に有効な施策を提案するべく、2022年7月より慶應義塾大学との間においてジェネリック医薬品普及に関する共同研究を実施しております。

https://www.jast.jp/news/14800/ 参照)


 この度、本研究の途中成果につきまして、2023年5月27日(土)~5月28日(日)に開催されました、「日本経済学会 2023年度春季大会」にて発表をいたしました。


■演題

Heterogeneous Adoption and Supply Constraints in Generic Pharmaceuticals


■概要

本研究では、レセプトデータ(※2)を利用し、患者に処方されたオーソライズドジェネリック(以下、AG)(※3)とジェネリック医薬品の普及率の関係を調査しております。調剤レセプトデータを用いた分析の結果、抗生剤のAGにおいて、調剤薬局でAGを処方することがジェネリック医薬品の普及率を28.5%増加させるという結果が得られました。また、調剤薬局ごとに異なる抗生剤のAG使用の有無は、薬局と患者のそれぞれの要因と関連することを発見しました。


我が国のジェネリック医薬品の一部には、先発医薬品企業が製造・販売するAGと呼ばれるジェネリック医薬品が存在し、その他のジェネリック医薬品と同一の価格で販売されています。先行研究から患者はAGが先発品と同一という信頼感からAGをより好むということが示唆されています(※4)。しかしながら、AGの使用がジェネリック医薬品普及とどのように関連しているのかは不明です。そのため、本研究では日本の抗生剤に注目し、調剤薬局におけるAGの使用がジェネリック医薬品普及にどのような効果を与えるか検証しました。


本研究の新規性はジェネリック医薬品普及における患者と薬局の2つの役割を同時に検討した点にあります。患者はAGを好む一方で、薬局は常に患者の好むAGを処方するとは限りません。そのため、AGがジェネリック医薬品普及に与える効果検証のためには、患者のAGに対する好みだけではなく、AGを処方する薬局の行動についても考慮する必要があります。本研究では、患者と薬局それぞれの行動を経済学的に分析することで、AGのジェネリック医薬品普及に対する効果について検証しました。


分析の結果から、調剤薬局における抗生剤のAG利用はジェネリック医薬品使用率を平均して28.5%上昇させることが分かりました。一方で、この効果は都道府県ごとに異なることが分かりました。この都道府県ごとの効果の差は、AGを受け取る患者の要因と、処方する薬局の要因の2つに分けられ、特に薬局の規模(※5)やチェーン店舗薬局(※6)がこの異質性を説明することが分かりました。これらの結果は、薬局のAG導入が仕入れコストやサプライチェーンに大きく依存することを示唆するものであり、我が国の更なるジェネリック普及に対する有効な検討材料を提示するものです。


■今後の展望

本研究の結果は、AGとその他のジェネリック医薬品が同一の価格で販売されるという我が国の特殊な取引慣行がもたらしたものです。更なるジェネリック医薬品普及のため、(1)薬局・患者のAG使用に関する要因の更なる解明、(2)薬価政策・後発品加算政策との関連について研究を行います。

また、AGの導入は各地域の調剤薬局の経営方針に大きく左右されるという結果をもとに、各地域の保健事業に対する有効なご提案を検討してまいります。


■未来共創Labについて

当社は医療ビッグデータ事業として、医療現場や各種保険者様が抱える課題の解決へ向けて、メディカルビッグデータ(レセプト、健康診断データ等)を利用した医療DXを推進しております。当社データの価値を高め、お客様の課題を解決するための可能性を広げるべく、今後も本研究における分析を進めてまいります。

また未来共創Labでは、SDGs(Sustainable Development Goals)目標3「すべての人に健康と福祉

を」、目標9「産業と技術革新の基盤を作ろう」へ向けて、メディカルビッグデータを利活用した健康増進

 を目的とし、産学連携での商材開発・共同研究を実施しております。

■共同研究者

中嶋 亮 氏(詳細は以下のリンクよりご確認ください。)

https://lnk.jast.co.jp/service/954ad2cd

慶應義塾大学 経済学部 教授

<略歴>

1994年 京都大学農学部農林経済学科卒業

2004年 ニューヨーク大学経済学部博士課程修了(Ph.D. in Economics)

応用計量経済学を専門としており、2018 年に日本経済学会石川賞を受賞。

社会的相互作用の実証分析を研究テーマとして、人々が市場を超えたチャンネルで互いに影響しあうメカニズムと、その相互作用から発生する外部経済性についてデータでの検証を行ってきた。


■日本経済学会については以下のリンクよりご確認ください。

日本経済学会サイト:https://www.jeaweb.org/C00


※1:ジェネリック医薬品について

新薬(先発医薬品)の特許が切れた後に製造販売される、新薬と同一の有効成分を同一量含み、効き目が同

等な医薬品(厚労省より)のことです。


※2:レセプトデータについて

レセプトとは、患者が受けた保険診療について、医療機関が保険者(市町村や健康保険組合)に請求する医療報酬の明細書のことです。医科・歯科の場合には診療報酬明細書、保険薬局における調剤の場合には調剤報酬明細書、訪問看護の場合には訪問看護診療費明細書とも言います。1患者、1か月、1医療機関あたりで1件のレセプトにまとめられており、患者が医療機関を受診した原因となる疾病情報や、医療費を支払っている情報等を保持しています。当社ではこれらの各種情報をデータベース化して保持しています。


※3:オーソライズド・ジェネリック(AG:Authorized Generic)について

新薬メーカーから許諾を得て製造した、原料および製法が新薬と同一のジェネリック医薬品のことです。


※4:Aljoscha Janssen, Generic and Branded Pharmaceutical Pricing: Competition Under Switching Costs*, The Economic Journal, Volume 133, Issue 653, July 2023, Pages 1937–1967, https://doi.org/10.1093/ej/uead021


※5:各調剤薬局における総処方件数として定義しています。


※6:調剤基本料3におけるグループ薬局をチェーン店舗として定義しています。


【本件に関するお問い合わせ】

日本システム技術株式会社 未来共創Lab

お問い合わせ:https://www.jastlab.jast.jp/contact/

未来共創Labサイト:https://www.jastlab.jast.jp/


▼日本システム技術株式会社 企業情報
 https://www.jast.jp/


以上


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会社概要

日本システム技術株式会社

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https://www.jast.jp/
業種
情報通信
本社所在地
大阪府大阪市北区中之島二丁目3番18号 中之島フェスティバルタワー29階
電話番号
06-4560-1000
代表者名
平林 武昭
上場
東証プライム
資本金
15億3540万円
設立
1973年03月