【レポート】8月19日(土) 子どもの『夏休み明けの不安』によりそい自殺を未然に防ぐため、千葉県柏市がアミュゼ柏にてゲートキーパー養成講座を開催【関連動画あり】
「みんなが無事に夏休み明けを迎えられるように」子ども・保護者・学校関係者 三者の立場から
相談することは、大人が思う以上にハードルが高い
前半は、我孫子市出身のシンガーソングライター悠々ホルンさんによる講演。10代の時に2度の自殺未遂を経験した悠々ホルンさんより、自身の体験やこれまで8,000通を超える手紙やメールを通じて受け取った当事者の声をもとに、子ども目線から夏休み明けの不安について語られた。
長期休み明けの登校は普段以上に負担感が大きい。そのうえ、いじめや人間関係の悩み、勉学のプレッシャー、体調不良など様々な不安やつらさが重なる中で、誰にも相談することのないままひとりで毎日を必死に耐えて過ごしている子が潜在的に少なくないとのことだ。不安になる理由が学校にあるとも限らないとのこと。不登校の子どもの場合、周囲から学校に行くことを期待されていると感じるプレッシャーが、節目の時期は強くなる傾向にある。
(写真)講演中の悠々ホルンさん
体調や行動にサインが表れる
大きな不安やストレスを抱えた結果として、体調や行動に異変が表れることがある。腹痛、食欲不振、学校への行きしぶり、部屋で暴れるなど、異変を子どもが声にできない代わりに無意識に出した<苦しい状況であることを示すサイン・SOSなのではないか>と子どもに目を向けてみてほしいと語った。
講演終盤には、子どもの異変を感じ取った場合の対応について話が及んだ。「行けなくなる子もいれば、無理して登校する子もいる。保護者の休んでいいよという言葉で休むことを許されたと感じる子もいるため、休む選択をすることに不安を感じる方も少なくないが、異変を感じたら理由が分からない場合でも まず安全安心の確保、声かけや寄り添いをお願いします。」と真剣に語った。
講演の初めと終わりには、自身の体験や当事者の声をもとにして作られた曲の弾き語りが披露され、聴きながら涙を流す参加者もいた。
(写真)弾き語る 悠々ホルンさん
子ども・保護者・学校関係者の立場から
後半は、参加者から寄せられた質問をもとに、子ども・保護者・学校関係者それぞれの立場から話が交わされるトークセッション。前半に講演をされた悠々ホルンさん、不登校・行きしぶりの子どもをもつ親の会「大人たちから変わろうの会」代表の野崎友美さん、スクールソーシャルワーカーの伴火穂さんが登壇された。
(写真)左から悠々ホルンさん、野崎友美さん、伴火穂さん
保護者としての葛藤と希望
自身も我が子の不登校と向き合ってきた経験を持つ野崎さん。我が子とのかかわりに悩み、「自分は親としてダメなのかもしれない。」と自責に苦しんだことがあるという。そんな時に支えになったのが、近所の方の笑顔だった。アドバイスされること以上に、安心して話を聞いてもらえることの大切さを身に染みて感じた。子どものことをひとりで抱え込んで悩む保護者が少なくない中で、「親の会などに参加して、分かち合える人や場所とぜひつながってもらいたい。」と笑顔で語った。
(写真)保護者の立場から語る 野崎友美さん
大人たちから変わる
また、代表を務める「大人たちから変わろうの会」を通じて様々な親子とかかわる中で、保護者の前向きな変化が子どもにも良い変化を与えることを何度も実感したという。「子どもの不安に寄り添うためにも、保護者も楽になってほしい。」と優しく温かなメッセージを参加者に届けた。
大人たちから変わろうの会は、我孫子市を中心に定期的に「お茶っこ会」「スマキャン(ゲームやキャンプを通じた居場所づくり)」等を開催している。柏市からも参加があり、保護者も子どもも参加歓迎とのこと。似た経験を持つ方同士だからこそ多くを語らずとも共感し合えたりと、大切な居場所と感じている方が多いようだ。
詳しくは「大人たちから変わろうの会」ホームページより
https://otokawakai.amebaownd.com/
柏市の取り組み
スクールソーシャルワーカー(以下、SSWと称す。)として多くの子どもに寄り添ってきた伴さん。SSWは、教職員と協働して子どもと家庭への支援をコーディネートする役割を担っている。伴さんは現在、柏市のSSWとして、また千葉県のSSWとしても活動中だ。冒頭では「チーム学校」というスローガンのもと、教職員のほか、福祉の専門職であるSSW、心理の専門職であるスクールカウンセラー(SC)、法律の専門職であるスクールロイヤー(SL)といった多職種による校内支援チームで児童・生徒のサポートに当たっていることが説明された。
また、柏市では「STANDBY」という匿名いじめ相談・報告アプリの導入が平成29年度より開始され、当初は市立全中学校21校(全学年)がその対象であったが、市立全小学校42校(6年生)、市立柏高等学校の生徒と対象を年々拡大しており、市が全国的に先駆けて、いじめ対策等に取り組んでいることが示された。
(写真)スクールソーシャルワーカーの立場から語る 伴火穂さん
選択肢を知ること
参加者から「学校をいつまで休ませたらよいだろうかと不安に思う。」と質問が寄せられた。特に、高校の場合は単位制であるため、進級や卒業の可不可に影響すると考えると、焦りを感じる保護者や子どもは少なくないであろう。伴さんは参加者の不安を丁寧に受け止めつつ、「先の見通しが立たないことは親も子も不安になる。どんな状況になったらどんな選択肢があるのかを前もって知っておくことが安心感につながる。」と伝えたうえで、「通信制の高校に転学した生徒、通っていた学校での卒業を望む本人の意向で休学を選んだ生徒もいる。視野を広げると選択肢は色々ある。」と語った。
2時間半にわたる研修の中で、細かくメモを取ったり深々と頷きながら話に耳を傾ける参加者の様子が幾度と見られた。今回の研修を企画した柏市福祉政策課の石川さんは「研修の必要性を改めて認識した。今後もテーマや内容を変えながら実施して参ります。」と力強く語った。この夏、子どもも保護者も無事に夏休み明けを迎えられることを願いたい。
動画 「Message-学校に通うお子さんのいるご家族へ-」
柏市では今回の研修以外にも、夏休み明けの不安に寄り添うことを目的に、8月1日より、柏市公式YouTubeチャンネル『The City of Kashiwa PR』にて、約14分の動画の配信を開始した。
タイトルは『Message-学校に通うお子さんのいるご家族へ-』
子どもの異変に気付くためのヒントや対応のヒントがストーリー仕立てで保護者目線から語られる。
(イラスト)動画のキャラクター 左から親カブ、子カブ、ご近所さん
動画はこちらから↓
企画/発行/著作:柏市福祉政策課
絵/文:悠々ホルン
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動画 作者からのコメント
■原案・イラスト / 悠々ホルンさん
私自身も動画の子カブのような経験を子どもの頃にしました。つらい状況の中で、誰かに「たすけて」と声にしたり相談することは、決して簡単なことではありません。ですが、子ども本人も意図しないところで声にならないサイン・SOSが出ていることがあります。それに気付き、どう対応していくか。親カブと一緒になって考えるキッカケになると嬉しいです。ちなみに、登場するキャラクターは、柏を代表する野菜の一つである「カブ」がモチーフになっています。
■企画 / 柏市福祉政策課 吉田悦子さん
子どもたちに「相談してくださいね」と促す取り組みは全国的に増えていますが、子どもたちの最も身近にいる家族に向けた情報発信はまだまだ少ないと感じています。私たちは、子どもたちに対してはもちろん、その周りにいる大人の方々までもが追い込まれることのないよう「生きやすい社会づくり」「支え合える社会づくり」の実現を目指して、今後も多様な取り組みを推進して参りたいと思います。今回の動画もその一助となりましたら幸いです。
問い合わせ
柏市福祉部福祉政策課
電話:04-7167-1131
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