LGBTQ+の学校体育・スポーツ現場の改善に向けて学生やアスリートが啓発教材を共同企画・制作。誰もがスポーツを楽しめる環境づくりに向けLGBTQ+当事者やアスリートによるトークイベント開催

~現場への普及に向けて啓発動画&フライヤーを教育機関などへ提出・配布~

インクルーシブ社会の啓発・実現を目指すNPO法人プライドハウス東京は、現役学生を含む若者とアスリートが共同で企画・制作した学校等におけるLGBTQ+の理解促進を目的とした啓発動画教材を公開しました。今後、現場への普及に向けて啓発動画を掲載したフライヤーを学校や大学のダイバーシティ推進室等に提出していく予定です。尚、本動画の公開に際して、LGBTQ+インクルーシブな環境を整えるための具体的アクションについて学生やアスリート等が話し合うトークイベントを2025年2月28日(金)に開催しました。

■学生を含む若者とアスリートが啓発教材を共同企画・制作。学校体育やスポーツ現場における課題を可視化。

近年、各分野でDEI・ハラスメント対策が広がる中、学校・スポーツ現場における対応が重要になっています。学校の授業では性のあり方について学ぶことが想定されておらず、生徒と教員・指導者間だけでなく、生徒間でも部活・体育の更衣室など様々な場面で意図しないハラスメントや差別的発言が生まれている状況です。また、スポーツ分野では、LGBTQ+について調べたり情報を集めたりした経験のあるコーチ・指導者は3割*となっており、誰もが自分らしく学校やスポーツを楽しめる環境作りが重要になっています。( *日本スポーツ協会)

このような状況から、プライドハウス東京は学生を含むユースが主体となって、LGBTQ+の課題に対してスポーツ界からアクションするアライアスリートと共に具体的な対策を企画・制作するプロジェクトを実施。複数の大学から参加した当事者を含む学生などのユース及び元日本代表を含むアスリートからなるプロジェクトメンバーが、学校等におけるLGBTQ+への理解促進と啓発を目的とした啓発動画を制作しました。

■実体験に基づいた課題・モヤモヤを動画で再現・可視化。

具体的には、ユースの実体験に基づいて「更衣室での身体へのコメント、生徒間や指導者による差別的発言、見た目やジェンダーに基づく固定観念、教員間でのアウティング」など、冗談や無意識的な発言からでも当事者が傷付いてしまう学校体育・スポーツ現場での6つの課題・シーンを動画で再現。学校や職場だけでなく、移動中や休憩中など隙間時間でも気軽に視聴できるようにスマホ動画として制作しました。


制作動画の配布用フライヤー

【制作動画一覧】

事例①「更衣室での身体への視線/コメント」
https://youtube.com/shorts/KV5IENl415g

事例②「見た目やジェンダーに基づく固定観念」
https://youtube.com/shorts/Ge1WLH5H-xw

事例③「生徒間での差別的発言」
https://youtube.com/shorts/IYYOL7S0nL4

事例④「指導者による差別的発言」
https://youtube.com/shorts/8hJ-bUu_-Y8

事例⑤「体育の場での男女に基づくチーム分けやルール設定」
https://youtu.be/kVBJ4dffpsc

場事例⑥「教師間でのアウティング」
https://youtu.be/_m5dAByTO4E?feature=shared

本啓発動画は、各教育機関・施設内で配布・掲示いただくなど現場での普及を目的に、QRコードをスマホで読み込むとすぐ視聴できるフライヤーとしてまとめ、学校や大学のダイバーシティ推進室などに提出していく他、関連団体とも連携予定です。尚、現時点で愛知県、岐阜県の学校や行政を中心に累計約800回、延べ参加者10万人の出張授業・研修等を実施してきたNPO法人ASTA、中央大学ダイバーシティセンターにご協力いただき講義や居場所スペース等で配布いただく予定です。

啓発動画教材の披露の様子


■生徒間での課題。体育現場で見過ごされがちな言動とは。

第1部では当事者学生2名とアライアスリートでパワーリフティング選手/元パラカヌー選手の中嶋明子氏、元フェンシング男子サーブル日本代表 徳南堅太氏、現役15人制ラグビー選手でプライドハウス東京・理事の村上愛梨が登壇。啓発動画の「更衣室での身体への視線/コメント」と「生徒間での差別的発言」をテーマに、体育/スポーツ現場で起こりやすい課題と解決アクションについて話し合いました。

「更衣室での身体への視線/コメント」については、「体育の現場では体型をいじる発言や無許可での接触が更衣室などで頻繁に見られる」と当事者学生が指摘。日常生活では当然守られるべきルールが、スポーツの場では軽視されがちであるという問題に触れました。

「生徒間での差別的発言」では、スポーツが身体的な活動であることから性別が強調されやすく、「男らしさ/女らしさ」といった価値観が日常生活以上に強調される場面が多いことを動画で再現しました。こうした発言は軽い冗談として発せられることが多く、問題が見過ごされやすい現状があります。

当事者学生とのトークセッション

中嶋氏は、「スポーツにおいて『男らしさ』『女らしさ』は必要なく、それぞれが自分らしさを前面に出し、ベストパフォーマンスを発揮することが大切」であると同時に、体育の現場では性別による固定観念が課題として特に浮かび上がりやすく、それを伝えることの難しさ、指導者による適切なアプローチが求められるとコメント。

徳南氏は「指導の場面ではどのように伝えれば相手が理解しやすいかを考え、言葉を噛み砕いて伝えることが優先されることもある」と、指導者側の立場についても説明しました。

パワーリフティング選手/元パラカヌー選手の中嶋明子氏
元フェンシング男子サーブル日本代表 徳南堅太氏

スポーツを楽しむために——「安心できる環境」の重要性

無意識の差別的発言や態度について、解決のためにアプローチできることは何か。当事者学生は「知識の背景まで理解する教育の必要性」の他、「自分の過去の言動を振り返ること」といった個人の意識を変えるだけでも大きな変化に繋がると述べました。

さらに、ミスジェンダリング(本人の性自認と異なる性でその人を扱うこと)や自分の存在を否定される環境でスポーツを続けることの難しさを強調した上で、「そこに居続けることができる安心な環境」がスポーツ現場において前提条件であってほしいと伝えました。

指導者の立場としても、中嶋氏は「相手の反応をよく観察し、それぞれにあったアドバイスができること」そして「スポーツは本来だれでも楽しめるものであり性別・年齢は一切関係ない。今、目の前の人と一緒に楽しめることが重要。」とコメント。徳南氏も「指導者、教師、保護者といった大人たちが課題について知ること、発信すること」の必要性を語りました。

■指導者・教員と学生間の課題。体育・スポーツ現場で起こる無意識の差別とその影響。

第2部では、当事者学生2名と元車いすバスケットボール日本代表 豊島英氏、元女子サッカー選手 株式会社wagamama共同代表 下山田志帆氏が登壇し、「教員間のアウティング」「指導者による差別的な発言」「見た目やジェンダーに基づく固定観念」「体育の場での男女に基づくチーム分けやルール設定」の4つの啓発動画をテーマに話し合いました。

第2部トークセッションの様子

「教員間のアウティング」では、悪気なく行われてしまうことが多いアウティング(本人の同意を得ずに、その人の性的指向や性自認等について第三者に暴露すること)は重大な人権侵害行為であり、学生からの信頼や安心感を損ない、深刻な影響を及ぼすと指摘。一方で、「指導者がインクルーシブな姿勢を持つことで、ユースにとって強力な支えとなり得る」と述べ、体育現場の課題解決に向け、指導者の役割に注目する重要性を訴えました。

また、学生からは「部活やスポーツ現場では仲間意識や協調性が重視されるが、ときにはそれが同調圧力になってしまうため、相談された時の大人の対応が重要。その人が勇気を出して伝えていることを意識して欲しい。」とコメントがありました。
さらに「指導者の差別的発言」では、学生が差別的な発言を受けると反応ができなくなることを動画で再現しました。

豊島氏はアスリートとして、指導者の発言が選手や学生だけでなく周りにいるすべての人に影響を与えるほどの重大性があること、そして指導者や教員は現場の選手・学生の声に耳を傾けられているかを見つめなおす必要性があるとも述べました。

元車いすバスケットボール日本代表 豊島英氏
教材動画の放映の様子


指導者や仲間ができる具体的なサポート

最後に、LGBTQ+の学生が安心してスポーツを楽しむために指導者や仲間ができる具体的なサポートについて話し合いました。

当事者学生からは以下のような意見が挙げられました。

「LGBTQ+に詳しい人が一人いるだけでも周囲の意識が変わる」

「困ったときに相談しやすい環境の必要性と外部にも相談できる場所があること」

「男女二元論や恋愛至上主義といったマジョリティ側の常識を前提とした発言をしないように気をつける」

「定期的に話し合う場を設けて体育現場におけるルールやシステムのアップデートを続ける」

指導者・アスリートの立場からは、周りにも当たり前にLGBTQ+の方がいることを理解する・知っておくこと、当事者が相談しやすい環境づくりの必要性について豊島氏が触れました。

今後も「プライドハウス東京」では、スポーツ現場におけるLGBTQ+の活動を支援するプログラムを企画・実施し、課題解決に向けて活動していきます。



【イベント概要】

◆日時:2024年2月28日(金)17:30~19:30

◆場所:成城大学/オンライン

◆登壇者:豊島英氏 元車いすバスケットボール日本代表/中嶋明子氏 パワーリフティング選手/元パラカヌー選手/徳南堅太氏 元フェンシング男子サーブル日本代表/下山田志帆氏 元女子サッカー選手 株式会社wagamama共同代表/村上愛梨 現役15人制ラグビー選手

◆参加者:スポーツ指導者、体育現場関係者、報道関係者

◆実施内容:アスリート・ユース登壇、動画発表、トークセッションなど


◆登壇者プロフィール

◆豊島英  元車いすバスケットボール日本代表

生後4ヶ月の時に髄膜炎を発症し、両足に障害を負う。2003年に地元である福島県のチームで活動を始め、2009年に宮城MAXへ移籍。その翌年、日本代表に選ばれると持ち前の「スピード」を活かしたプレーで各世界大会で活躍。2012年ロンドンパラリンピック、2016年リオパラリンピックに出場し、2017年より日本代表チームのキャプテンを務め、東京パラリンピックでは銀メダルを獲得。2021年10月に現役を引退した。

◆中嶋明子 
パワーリフティング選手/元パラカヌー選手

大学院博士課程に在学中、交通事故で胸髄を損傷し車椅子生活となる。その2年後にパラカヌーと出会い、日本代表選手を経験。2013年〜2017年まで世界選手権に出場(KL1/VL1)し、2016年、2017年にはVL1で2位となる。2016年よりパラパワーリフティングをトレーニングに取り入れ、2017年から同種目の日本代表に。現在はパラパワーリフティングに転向し、競技者と会社員の二足の草鞋で競技生活を続けている。

◆徳南堅太 元フェンシング男子サーブル日本代表

1987年8月生まれ、福井県池田町出身。フェンシング日本代表として50ヶ国以上を転戦し、2016年リオ五輪、2020年東京五輪にも出場。日本フェンシング協会理事や選手会初代会長として組織改革にも貢献。2024年10月に現役引退を発表し、パーソナルコーチングを開始。現在はスポーツ、教育、ビジネスを横断する活動を展開。挑戦と変革を続け、次世代のスポーツ振興と社会貢献に情熱を注いでいる。

◆下山田志帆 元女子サッカー選手 
株式会社wagamama共同代表

慶應義塾大学卒業後、2017-19年の2シーズンをドイツでプロ選手としてプレー。2019-23年の5シーズンを、日本・なでしこリーグ1部でプレーした。在独中の2019年に、現役選手としては日本で初めて、LGBTQ当事者であることを公表。同年に株式会社wagamamaを創業し、企業・自治体向けのDE&I研修・講演会事業や、アスリートやLGBTQ当事者視点のブランド運営を行っている。

◆村上愛梨 現役15人制ラグビー選手

横河武蔵野アルテミ・スターズ所属。元ラグビー15人制日本代表。2022年に代表クラスの現役選手としては初めて、同性パートナーがいることを公表。アスリートであり性的マイノリティ当事者でもある自身の経験について共有し、LGBTQに対して閉鎖的なスポーツ界から声を上げた。SNSでは、同性婚の自由をはじめとするLGBTQに関する発信を行うとともに、悩みを抱える当事者の声に耳を傾け、自身のプラットフォームを活用した積極的な活動を行なっている。

【NPO法人プライドハウス東京について】

LGBTQ+やソーシャル関連の活動を行うNPOや個人、企業とともに、「教育・多様性発信」「文化・歴史・アーカイブ」「ウェルネス・サポート」「アスリート発信」「祝祭・スポーツイベント・ボランティア」「居場所づくり」「仕組みづくり」「レガシー運営チーム」という個別テーマを掲げた8つのチームにわかれ、協働プログラムを企画・実施しています。

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会社概要

URL
https://pridehouse.jp/
業種
サービス業
本社所在地
東京都新宿区新宿 1-2-9 JF新宿御苑ビル2階
電話番号
-
代表者名
五十嵐ゆり、小野アンリ、野口亜弥
上場
未上場
資本金
-
設立
2023年02月