JICA海外協力隊 第3回社会還元表彰 入賞者発表
~60周年を迎える今年、初となる審査員特別賞を創設~
「信頼で世界をつなぐ」をビジョンに掲げ、日本の政府開発援助(ODA)実施機関として開発途上国への国際協力を行っている独立行政法人国際協力機構(理事長:田中明彦、本部所在地:東京都千代田区、以下:JICA)が実施するJICA海外協力隊事業は2025年に60周年を迎え、本年1月から周年事業を展開しています。本年実施する第3回社会還元表彰は60周年事業として、対象とする隊員経験者をこれまでの帰国後10年から帰国後20年に拡大し、この度入賞者が決定しました。
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JICA海外協力隊帰国隊員社会還元表彰とは
JICAではJICA海外協力隊の事業目的の一つである「ボランティア経験の社会還元」事例を収集し好事例として紹介することで、協力隊経験者の社会還元の機運を高めると共に、より良い社会の実現を目指しています。このため、JICA海外協力隊経験者で、国内外・公私問わず社会課題の解決に取り組んでいる方を表彰する『帰国隊員社会還元表彰』を2023年より開始しました。
JICA海外協力隊経験者で国内海外、公私を問わず社会課題の解決に取り組んでいる方、企業・組織での業務、起業、個人・ボランティアでの活動等、すべての取り組みを対象とし、自薦、他薦を問わず応募者を募りました。応募を期待する事例としては以下のようなものをあげております。
●自ら企画する製品、サービス及びビジネスモデル等で社会課題の解決に取り組んでいる
●開発途上国の経済社会の発展又は復興に引き続き取り組んでいる
●地域経済の活性化や地域課題の解決に取り組んでいる
●居住地の在留外国人や職場内の外国人労働者の受入支援に取り組んでいる
●JICA 海外協力隊の派遣国と日本の架け橋になるような事業又は教育活動に取り組んでいる
今回の応募者のなかから、以下の方々が各賞の入賞者として選ばれました。
また、JICA海外協力隊発足60周年の記念事業として、第3回社会還元表彰ではより幅広い活動を対象とできるよう、応募対象者をこれまでの帰国後10年から帰国後20年までに広げると共に、審査員特別賞を創設しました。
7月14日(月)にJICA本部(麹町)にて開催予定の第3回社会還元表彰式においては下記の入賞者が一堂に会し、それぞれの活動についてプレゼンを実施し、審査員により大賞が決定される予定です。
●アントレプレナーシップ賞
氏名:星野 達郎(2013年度3次隊、グアテマラ、小学校教育)
取組名称:不登校オルタナティブスクール「NIJINアカデミー」
活動概要:
不登校問題の解決を目指し、2023年9月に開校したオルタナティブスクール小中一貫校。現時点で全国40都道府県から440名超が入学し、メタバース本校舎と全国20キャンパスをもつハイブリッド型教育機関。多様性・主体性・選択性を土台にし、多様な社会のステークホルダーと共創し日本中を学び場にする教育共創モデルを確立。公教育を持ち運び可能にした独自モデルにより、53の企業・機関と連携し学校の時間帯に新しい教育・市場を創出している。
関連リンク:https://www.nijin.co.jp/
●地域活性化賞
氏名: 庄田 清人(2014年度2次隊、マラウイ、コミュニティ開発)
取組名称:コミュニティ財団による地域の社会課題解決の仕組みづくり
活動概要:
2020 年 10 月にちくご川コミュニティ財団が休眠預金活用事業の資金分配団体に選定されたことにより、事業の企画・運営・管理を行うプログラムオフィサー(以下、PO)として同年 11 月に財団に入職。2021 年より理事/事業部長に就任し、財団独自の助成プログラムである「子ども若者応援助成」、「水害に対する災害支援助成」、「子どもの多様な学びの場を保障する基金による奨学金事業」、そして、休眠預金活用事業(2020 年度通常枠、2021 年度通常枠、2023 年度通常枠・随時枠、合計 4 事業)の事業統括をしている。
協力隊派遣中はコミュニティ開発隊員として、PCM を活用しながら地域住民とのパートナーシップのもと保健医療活動、スポーツを通した地域づくり活動を実施していた。その経験をもとに、財団の事業においても地域住民や NPO 等に伴走型の支援で関わり、住民参加型のワークショップの実施、関係者分析、問題分析、目的分析等をしながら、地域の社会課題を決するための包括的なプログラムの企画・運営・管理を行なっている。
関連リンク:https://c-comfund.com/
●多文化共生賞
氏名: 青木 由香(2005年度0次隊、ブラジル、日系日本語学校教師)
取組名称:CLD青少年のための学習支援・情報支援と市民性教育による社会変革への挑戦(Culturally LinguisticallyDiverse)
活動概要:
2010 年より外国につながる子どもたちの学習支援教室(中学生以上が対象)をスタートさせ、これまで約 260 人の子どもたちの進学を後押し。コロナ禍以降はオンライン学習支援も行い(小学生以上が対象)、外国人散在地域特有の課題解決にも取り組んでいる。また、子育て・教育・キャリアデザインに関する多言語資料(7 種類)の作成・配布(富山県からの受託事業)や高校進学説明会の開催(他団体との協働)などの教育情報支援も進めている。
2020 年からは、一方的な「支援」からの脱却を目指し、「市民性教育事業」を開始。外国につながる子どもたちだけでなく、地域の日本人やいわゆる支援者をも対象として、「ともに地域の未来を築く主体となる」ための各種講座やワークショップ、地域社会への発信を狙ったフィルム・フェスティバルや SDGs フォーラム・アート展等を開催。教育関係者だけでなく、企業・経済団体やまちづくり関係組織、自治会等地域住民等と、多文化共生の意識と課題を共有してきた。2023 年度には、地元の外国につながる若者たちによる富山県民対象の学びのニーズ調査を行い、分析結果を踏まえて、富山県における学びの選択肢創造のための提言書を県知事に提出。外国につながる若者たちが持つ力と可能性を大きくアピールした。
2024 年度からは、JICA 北陸と「共創の未来とやま」協働事業を開始し、企業等も巻き込んで、地域の多文化共生の実現を目指したネットワークを形成中であり、(いわゆる外国人労働者に期待されている業種・職種だけでなく)地域社会の様々な業種やサービスで外国につながる若者たちが活躍できるよう取り組みを始めている。
関連リンク:https://www.alece.org/
●開発協力実践賞
氏名: 近藤 咲(2016年度1次隊、グアテマラ、小学校教育)
取組名称:グアテマラの子どもの教育向上を通した幸縁(しえん)活動
活動概要:
NPO法人幸縁にて以下の事業を実施。
1 奨学金事業:活動地の小学6年生を対象とした中学3年間の学費サポート。活動理念は「真に学習意欲のある子供に学びの機会を提供する」こと。(2025 年2 月実績:27 人)
2 国際交流事業:同世代の日本人とグアテマラ人がオンラインで英語交流する取り組み。活動理念は「国内公教育との連携を主とし、より多くの子供に国際教育の機会を届ける」こと。(2025 年 2 月実績:全国 24 校の小中高校および大学(延べ 2500 人の児童生徒学生)と交流。このうち約半数とリピート交流)
3 英語プログラム事業:上記国際交流の実施には、グアテマラ奨学生たちの英語継続学習は欠かせない。そこで二ヶ月間1クールの指導期間を年3回設け、団体独自の教材を作成しオンラインで英語指導を実施。活動理念は「活動地で需要が高い英語教育の提供と顔が見える国際協力をお茶の間からできる場を提供する」こと。(2025年2月実績:国内外で日本人の英語指導ボランティア75 人(うち 8 割がリピート参加))
4 現地学習塾事業:活動地公立小学校の学習環境は、6年間の学習単元を全て修了しないまま卒業となるのが日常である(そのため優秀とされる小6児童でも四則演算がままならなく日常使いの単語のスペルミスが相次ぐ)。そこで基礎学力の向上とリーダーシップの育成を目的とした活動地初の学習塾を開校。指導分野は算数、音読、作文、読書(+読み聞かせ)、音楽、図工、特別活動。(2025 年 2 月実績:)28 人の塾生と 7 人の現地スタッフとともに活動中)
関連リンク:https://www.shien100.org/
●審査員特別賞(共生社会)
氏名:安田 一貴(2011年度1次隊、ウズベキスタン、青少年活動)
取組名称:笑顔の向こうに繋がる未来プロジェクトPLAY&PHOTO Studio【出張写真撮影】
活動概要:
病気や障がいがあり、写真スタジオへ行くことが難しい子どもとその家族のもとへ出張し、子どもの特性や家族のニーズに寄り添い、心に残る写真撮影体験を届ける活動に取り組む。
協力隊や理学療法士の経験を活かし、病気や障がいの特性に合わせ、遊びを取り入れながら、医療的ケアやリスク管理等に配慮し、ただカメラのシャッターをきるのではなく、こころを和ませ、安心できる居心地の良い空気感を創り、その子らしさ、その家族らしさを撮影。
七五三、卒業入学、成人のお祝い等の撮影では、ヘアメイクや着物や振袖を着たいという希望に対して美容師や服飾デザイナーと連携し、バリアフリー仕様の衣装を製作し、レンタルや着付、ヘアメイクの対応も実施。
写真撮影を通じて得られる、その子らしさ、家族らしさを感じられる特別な瞬間を届け、時を経て、その写真を見て蘇る思い出、そこで生まれる会話、こころに残るストーリーを届ける写真を目指す。
関連リンク: https://playphotostudio.com
●審査員特別賞(スポーツと開発)
氏名:糸井 紀(2013年度1次隊、エクアドル、水泳)
取組名称:パラリンピック等の水泳国際審判員として多文化共生社会づくりに取り組んでいる
活動概要:
日本人唯一のパラ水泳の国際審判員として、各種の障がいを持つ水泳選手のための国際大会に7回選出され、東京パラリンピック・パリパラリンピックなど各種大会を成功に導いた。そのなかで途上国の選手・審判員・関係者に対して、協力隊経験で身につけたコミュニケーション・異文化理解の能力を発揮し、国際大会運営での各種問題について現状を分析し目的や課題を明らかにして、共に解決していくサポートを実施。これらの経験を講演などを通じて共有し、選手・審判員・関係者が多文化共生社会づくりでの課題解決を行えるようにし、競技が円滑に行えるよう支援したり、将来の国際協力に携わる人材を育成したりしている。
今後は2025年 東京デフリンピック、2026 年 愛知・名古屋アジア大会等を通して国際審判員として活動し世界の共生社会づくりを支援するとともに、各種講演会で講演し国際協力の分野で活躍できる人材を育成する予定。
関連リンク:https://gifu-swim.com/9011/
●審査員特別賞(災害支援)
氏名:山路 健造(2014年度2次隊、フィリピン、コミュニティ開発)
取組名称:能登半島地震・奥能登豪雨で被災した外国人住民の居場所づくり
活動概要:
輪島市では、地震前に比較し外国人住民が約半分、98 人まで減った。能登地域の人口減が進む中、若い外国人材の果たす役割は大きく、彼らが安心して生活できるインフラを整えるための活動を、中心になってコーディネート。
地震直後は多文化人材の活躍の場や居場所づくりの目的で近隣県の外国人や、ウクライナ避難民による「多文化炊き出し」を実施し、被災した皆さんに提供したり、輪島市内の外国人住民に食材を提供し、炊き出しを行ってもらう事業等を実施。
また奥能登豪雨以降は緊急支援として外国人住民の戸別訪問や、土砂崩れで孤立した地域、停電や断水が発生した世帯への物資支援などアウトリーチを行った。さらに外国人住民へ災害時の情報源や平時・災害時それぞれでほしい情報、困ったときの相談相手などを尋ねるアンケートをやさしい日本語、英語、タガログ語、タイ語、ベトナム語、中国語で作成。輪島市内の外国人住民 88 人に送付し、ほぼ半数の 43 人から回答を得られた。このアンケートをもとに、彼らのニーズに合わせた支援(住宅の修復、冬用衣服の支援等)を実施した。そのほか地震や平時も含めて、「同じ国出身の友人・知人」に相談するという例が多く、「母語で情報を求めている」と分析。アンケートで Facebook 利用者が最も多かったことから、「のと多言語サポート」というページも作成し、情報発信を行っているほか、出身国ごとの料理イベントなどを開き、その参加者でSNSグループを作成し、生活情報の提供も行っている。今後はアンケート対象地域を珠洲市や穴水町、能登町の奥能登地域の外国人住民にも拡大し、今後はそれらの結果に基づき、ニーズを把握したうえで事業展開を実施し、外国人住民が母語で相談できる体制づくり、民生委員や老人クラブとの顔の見える関係づくりによる多文化防災を進めていきたいと考えている。
関連リンク:https://tabusapo.org/
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記念式典概要
日時:2025年7月14日(月)14時~(予定)
場所:独立行政法人国際協力機構(JICA)本部 二番町センタービル(麹町)
主催:独立行政法人国際協力機構青年海外協力隊事務局
後援:経団連、経済同友会、青年会議所、日本商工会議所、全国地方新聞連合会
本式典においては各入賞者が登壇予定です。個別取材のご案内も別途お送り予定です。
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【ご参考】
過去の大賞受賞者の活動紹介等はこちら。
第1回 徳島 泰(インスタリムCEO 2012年度1次隊、フィリピン、デザイン)
https://www.jica.go.jp/information/topics/2023/20230519_01.html
第2回 栗野泰誠(一般社団法人チョイふる 代表理事 2014年度2次隊、エチオピア、体育)
https://www.youtube.com/watch?v=EuGcnmIckP8&t=32s
社会還元表彰HPはこちら。過去の受賞者のインタビュー記事等もございます:
https://www.jica.go.jp/volunteer/obog/syakaikangen/
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JICA海外協力隊は2025年に60周年を迎えました
JICA青年海外協力隊事務局では2025年を60周年記念イヤーと位置づけ、「世界と日本を変える力」をテーマに1年かけて周年事業を実施いたします。4月には第3回JICA海外協力隊帰国隊員社会還元表彰の受賞者の発表、6月2日には同受賞者によるピッチ形式のプレゼンテーションによる公開選考及び大賞の発表、11月には海外協力隊60周年記念式典を予定しております。
※詳細は追ってご案内いたします。JICA海外協力隊60周年に関連した情報については、以下のとおり60周年特設サイトを開設し、随時掲載していきます。
特設サイト:https://www.jica.go.jp/volunteer/60th/
60周年記念ロゴ:

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独立行政法人国際協力機構(JICA)について
JICAは、開発途上国が直面する課題を解決するため、技術協力、有償資金協力、無償資金協力など日本の政府開発援助(ODA)を一元的に担う二国間援助の実施機関で、150以上の国と地域で事業を展開しています。 国際社会の課題は日本とも密接に関係しています。国内外のパートナーと協力してそれらの解決に取り組み、世界の平和と繁栄、日本社会の更なる発展に貢献します。 詳しくは https://www.jica.go.jp/index.html をご覧ください。
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