カナダ大自然の価値と、それを破壊するバイオマス発電の課題を啓発 ~パタゴニア国内全店舗にて展示「原生林を燃やす私たちの電気」を開催
経産省あて署名2万筆集まる、トークイベントでは参加者から自分たちが使う電気に高い関心も
環境問題に関する調査・研究や政策提言を行う一般財団法人 地球・人間環境フォーラム(GEF)は、2025年1月~4月にわたり、日本全国のパタゴニア国内直営店全店舗(24店舗)にて、輸入木質バイオマス発電の問題を啓発する展示「原生林を燃やす私たちの電気」を開催しました(詳細1)。
トークイベントでは自然写真家・伊藤健次さんや、持続可能な森林経営を日本で最も早くから実践している速水亨さん(速水林業代表)に登壇いただき、2024年9月のカナダ・ブリティッシュコロンビア(BC)州の視察について振り返り、議論をしました。
日本のFIT制度で支援されている、輸入木質バイオマス発電
~二酸化炭素排出量や生物多様性への悪影響等を訴える展示をパタゴニア店舗にて開催
バイオマス発電は、FIT制度(再生可能エネルギー固定価格買取制度)によりカーボンニュートラルな再生可能エネルギーとして、消費者負担の下で推進されてきましたが、木質バイオマス(木材)を燃やした際のCO2排出量は石炭火力よりも多いことがわかっています。さらに、燃料生産地では原生林伐採や大量の環境法違反が発生しており、地域環境に大きな影響を与えています。
現在、日本の木質ペレット輸入元第2位がカナダで、ほとんどがBC州から来ています。同州には、絶滅危惧種の森林トナカイなど貴重な大型野生動物が生息し、膨大な炭素を蓄える原生林が広がっていました。しかし長年の製材・紙パルプ向けの伐採により急速に減少し、今、日本向け木質ペレットの需要が、残された森への脅威になっています。

昨年9月にはパタゴニア環境助成金プログラムの支援を受け、ペレット生産地での現状と課題を日本に持ち帰り、広く伝えることを目的に自然写真家・伊藤健次さんや、持続可能な森林経営を日本で最も早くから実践している速水亨さん(速水林業代表)に同行いただき、GEFスタッフが現地の原生林やペレット工場の視察を行いました。

この度、本視察で撮影した写真と解説パネルを使った展示「原生林を燃やす私たちの電気」を実施し、BC州の森の美しさと価値、そして現在進行形で迫る危機と、日本で私たちが使う電気とのつながりを発信し、輸入木質バイオマスの課題を啓発しました。
自然写真家・伊藤健次さん、速水林業代表・速水亨さん登壇のトークイベントを開催 BC州視察で見えてきた現状や課題をディスカッション ~好評につき、4月上旬にオンラインでもイベント開催決定!
パタゴニア国内直営店のうち5店舗で開催されたトークイベントでは、世界的ベストセラー「マザーツリー」の著者であるスザンヌ・シマ―ドさんが登場する動画(詳細2)の上映に続いて、GEFスタッフが日本の政策であるFITの仕組みやバイオマス発電の課題について解説しました。その上で、速水さん(仙台、大崎)と伊藤さん(福岡、札幌、梅田)がそれぞれの立場から、BC州視察について振り返りました。トークイベントは、予約枠を拡大するほど、興味関心を持つ参加者にあふれました。

速水さんは、「木質バイオマスは製材端材や林地残材を、できれば熱利用で使うのが良いが、バイオマス燃料用の伐採は本来行うべきでない」とした上で、BC州にとって林産業が主要産業であることを踏まえて、「森林の利用区分を詳細にすべきだ」などとコメントしました。
また、伊藤さんは「日本から遠い、カナダの中でも人の目の少ない遠隔地でペレットが作られている」様子を目の当たりにし、見えないことに思いを馳せることの大切さを訴えました。そして、「生きものは自然から与えられたものを様々なかたちで自然に返している。一方で、人間は何を返すのか?」と問いかけました。

イベントの最後には「原生林を燃やさないために、私たちができること」をテーマにグループセッションも行われました。参加者からは、「カナダの原生林を切って、電気を作るために日本で燃やしていることを知らなかった」、「自分が使っている電気がどのように作られているのか知ることの大切さを実感した。周りの人にも知らせたい」「自らの消費を見直すきっかけにし、まずは節電から始めたい」「日本の再エネを支える仕組みを変えることにも参加してみたい」などの声が寄せられました。
また、展示期間にあわせて、輸入バイオマスの支援停止を求めるオンライン署名(詳細3, 4)を実施、20,035件(2025年3月27日)もの声が集まっています。これらの署名は、経済産業大臣あてに提出していく予定です(2月11日に一次提出済)。
なお、パタゴニアの店舗で開催した対面トークイベントと同じ内容のイベントを、4月9日(水)にオンラインでも開催することが決定しました。当日は、伊藤さん、速水さんに加え、元朝日新聞記者で環境ジャーナリストの石井徹さんが登壇し、原生林の伐採やペレット工場周辺の状況をお伝えし、海外の貴重な森林を燃料にするバイオマス発電を「再エネ」として使うことの課題について考えます。
イベント詳細:https://www.gef.or.jp/news/event/250409bcforest_biomass/
(要参加申込、お申込みの方にはアーカイブ録画をご覧いただけます)
(詳細1)展示&トークイベント「原生林を燃やす私たちの電気」開催概要
展示:2025年1月14日~4月初旬
トークイベント:
2月5日(水) パタゴニア 仙台
2月9日(日) パタゴニア 東京・ゲートシティ大崎
2月14日(金) パタゴニア 福岡
2月22日(土) パタゴニア 札幌北
2月27日(木) パタゴニア 大阪・梅田
(詳細2)動画【カナダの森林学者が語る】原生林を燃やす私たちの電気
(詳細3)【署名】カナダの原生林を燃やす再エネ?! 地球温暖化を進め、地域住民の暮らしを脅かす輸入木質バイオマス発電の支援をやめてください! http://chng.it/JhpBVxZR9q
(詳細4)特設サイト「原生林を燃やす私たちの電気」 https://www.gef.or.jp/campaign2025_wood-biomass
【補足情報】
<バイオマス発電の問題点…石炭火力より多いCO2排出、低い発電効率とコスト高、生産地の課題>
バイオマス発電は、FIT制度によりカーボンニュートラルな再生可能エネルギーとして、消費者負担の下で推進されてきましたが、木質バイオマス(木材)を燃やした際のCO2排出量は、石炭火力よりも多いことがわかっています。またエネルギー効率が20ー30%と悪く、燃やした木材の7ー8割が熱として放出され、その多くがただ排熱として捨てられています。
バイオマス発電のコストの7割が燃料費で、輸入燃料のために年間3,000億円を超える賦課金が海外に流出しています。さらに北米の生産地では原生林伐採や大量の環境法違反が、最大の輸入元ベトナムでは認証偽装が問題になってきました。
このように様々な観点から、輸入木質バイオマス発電は再エネとして不適格で持続可能でないという問題が、GEFを含む国内外の環境団体から指摘されています。新規だけでなく既認定案件についても、持続可能性、エネルギー自給、賦課金の海外流出の観点から早急に見直すべきであり、FIT/FIPの支援対象から外すことが求められます。
<地球・人間環境フォーラム これまでの輸入木質バイオマス発電関連活動>
地球と人間が共生する環境づくりのため、地球環境問題に関する科学的調査・研究、その成果の普及・啓発、政策提言、および連携の場づくりに取り組む非営利の環境団体。
当団体では、2017年より政府に対する政策提言、議員向けの勉強会実施、投資家・金融機関との面談、バイオマス発電関連事業者向けのセミナー開催、メディア向けブリーフィング等、輸入木質バイオマスの持続可能性や透明性の課題について啓発に取り組んできました。
輸入木質バイオマスのGHG排出量が多く、気候変動の誤った解決策(False Solution)であることや、原料である木材やペレット生産地の課題(生物多様性の損失、度重なる環境法違反、人権・社会的リスクが存在すること)を訴えています。
活動実績掲載ページ:https://www.gef.or.jp/activity/forest/biomass-energy/
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