ステップメールとは、顧客のニーズや行動に合わせて段階的にメールを配信するマーケティング手法です。リードナーチャリング・育成のために活用され、主にマーケティングの現場で活用されますが、インサイドセールスや広報PRの現場に取り入れて活用することも可能です。
本記事では、ステップメールとは、メールマガジンとの違い、メリットといった基礎的な知識から、ステップメールの作成方法、コンテンツの内容、役立つツール、効果を高めるポイントなどを分かりやすく解説します。
ステップメールを導入して見込み顧客を育成したいと考えているマーケティング担当者や、メールマーケティングの効果を最大化したいと考えている方、ステップメールを取り入れたいインサイドセールスや広報PR担当者の方はぜひ参考にしてください。
ステップメールとは
ステップメールとは、顧客の行動に合わせて、あらかじめ作成しておいたメールを段階的に自動配信する仕組みのことです。
例えば、資料請求をした顧客に対して、1日後に資料の補足説明、3日後に活用事例、7日後に導入事例といったように、段階的に情報を配信することで、顧客の理解を深め、購買意欲を高める効果が期待できます。顧客との関係性を構築し、育成していくための有効な手段として、主にマーケティングの現場で活用されている施策です。
広報PRの現場でも、「プレスキットをダウンロードしてくれた相手に対して、その後5回のメールで会社の詳細情報を解説する」など、ステップメールでコミュニケーションを取ることも検討できます。
メルマガとの違い
ステップメールとメールマガジン(メルマガ)の違いについて気になる方も多いのではないでしょうか。両者の大きな違いは、配信のタイミングと内容です。
メルマガは、登録者全員に対して同じ内容のメールを定期的に配信します。ニュースレターやキャンペーン告知などが主な目的のことが多いでしょう。
一方、ステップメールは、顧客の特定の行動(資料請求、商品購入など)をきっかけに、個別のシナリオに基づいてメールを配信します。顧客一人ひとりに合わせた情報提供を行うことで、より効果的なコミュニケーションを実現します。
メルマガは広く情報を伝える手段、ステップメールは個々の顧客に合わせた育成手段といえるでしょう。
ステップメールを実施する3つのメリット
ステップメールは、見込み顧客との関係を深め、育成していくうえで多くのメリットがあります。本記事では、代表的な3つのメリットについて解説します。
メリット1.見込み顧客との接点を増やせる
ステップメールは、顧客の行動に合わせて複数回メールを配信するため、自然と見込み顧客との接点を増やすことができます。例えば、資料請求後すぐに送るお礼メール、数日後に送る資料の活用方法、さらに後日送る事例紹介など、段階的に情報提供を行うことで、見込み顧客の記憶に残りやすくなります。
継続的なコミュニケーションを通じて、企業と見込み顧客の間に信頼関係が構築され、その後のビジネスにつなげやすくなるでしょう。単発のメール配信に比べて、より深く、継続的な関係性を築ける点が大きなメリットです。
メリット2.見込み顧客のニーズに合った内容を配信できる
ステップメールは、顧客の行動に基づいて内容を出し分けて配信します。例えば、資料請求をした見込み顧客には資料に関連する情報、セミナーに申し込んだ見込み顧客にはセミナーの詳細情報といったように、個々のニーズに合わせた情報提供が可能です。
見込み顧客は自分にとって必要な情報、もしくは興味がある情報を受け取ることができるため、満足度向上やロイヤリティの向上につながるでしょう。画一的なメルマガ配信と異なり、個々の顧客に最適化された情報を提供することで、より高い効果が期待できます。
メリット3.適切なタイミングでアプローチできる
ステップメールは、あらかじめ設定したスケジュールに基づいて自動的にメールを配信するため、最適なタイミングでアプローチできます。例えば、資料請求直後のお礼メール、数日後のフォローアップメール、さらに後日の提案メールといったように、見込み顧客の購買意欲が高まるであろうタイミングを狙って情報を届けることができます。
手動でメールを送信する場合、タイミングを逃してしまう可能性がありますが、ステップメールであれば機会損失を防ぎ、効率的に見込み顧客を育成できます。
ステップメールを実施する際の3つの注意点
ステップメールは効果的なマーケティング手法ですが、実施にあたってはいくつかの注意点があります。これらを理解しておくことで、スムーズな運用と効果の最大化につながります。
注意点1.配信シナリオの作成が必要
ステップメールを効果的に運用するためには、綿密な配信シナリオの作成が不可欠です。誰に、いつ、どのような内容のメールを配信するのか、という流れを明確に設計する必要があります。
例えば、資料請求後すぐにサンクスメールを送り、3日後には資料の活用方法、1週間後には関連商品の紹介といった具体的な配信スケジュールと内容を決めていきます。このシナリオが不十分だと、顧客にとって不適切なタイミングでメールが届いたり、内容が重複したりする可能性があります。
顧客の行動や購買意欲の変化を考慮した、効果的なシナリオ設計を行い、開封率や返信率を見ながら効果検証をしつつ、タイミングなどを調節していきましょう。
注意点2.コンテンツの作成には時間がかかる
ステップメールは、顧客の行動に合わせて複数のメールコンテンツを作成する必要があります。例えば、資料請求のお礼メール、資料の解説メール、活用事例の紹介メールなど、段階的に配信するメールを事前に準備しておかなければなりません。それぞれのメールの内容を考え、作成する作業は、ある程度の時間と労力を要します。
特に、配信シナリオが複雑になるほど、作成するコンテンツの数も増えるため、計画的に進めることが大切です。コンテンツ作成に十分な時間を確保し、質の高いメールを作成することで、ステップメールの効果を最大限に引き出せます。
この後にも紹介しますが、広報PR部門で作成しているプレスリリースをはじめとした公式文書は、すでに社内で時間とコストをかけた情報がつまっています。これらのネタを活用することで、コンテンツ作成を効率化できます。
注意点3.ツールが必要
ステップメールを自動化するためには、メール配信ツールやMA(Marketing Automation)ツールなどの導入が不可欠です。これらのツールを利用することで、顧客の行動に合わせたメールの自動配信や、効果測定などが容易になります。
手動でメールを送信する場合、時間と手間がかかるだけでなく、配信ミスや遅延などのリスクも高まります。ツール導入にはコストがかかる場合もありますが、ステップメールの効率的な運用と効果最大化のためには、必要不可欠な投資だといえるでしょう。
ツールを選ぶ際には、必要な機能や予算などを考慮し、最適なものを選ぶことが大切です。開封率やURLのクリック率なども測定できる機能がついているツールを選ぶことで、効果検証がしやすくなります。
ステップメールの配信で役立つツール
ステップメールの配信を効率的に行うためには、適切なツールの活用が不可欠だと説明しました。具体的にどのようなツールを活用できるのか、ステップメールの配信に役立つ代表的な3つのツールを紹介します。
メール配信システム
メール配信システムは、メールの作成、配信、効果測定に特化したツールです。ステップメールの配信に必要な機能はもちろん、HTMLメールの作成、セグメント配信、効果測定レポートなど、メールマーケティングに必要な機能が豊富にそろっています。
比較的安価に導入できるものが多く、小規模なビジネスでも導入しやすいのが特徴です。ステップメールの配信だけでなく、メルマガ配信やキャンペーン告知など、幅広いメールマーケティング活動に活用できます。
例えば、到達率の高いメール配信、開封率やクリック率の分析、エラーメールの自動処理などの機能は、ステップメールの効果測定と改善に役立ちます。
MAツール
MAツールは、マーケティング活動の自動化を支援するツールです。ステップメールの配信だけでなく、Webサイトのアクセス解析、顧客行動の追跡、スコアリング、リードナーチャリングなど、より高度なマーケティング活動を自動化できます。
顧客一人ひとりに合わせた最適な情報提供を行うことができるので、見込み顧客の育成を効率的に進められるでしょう。高機能な分、導入コストはメール配信システムよりも高くなる傾向がありますが、高度なマーケティング戦略を実行したい企業にとっては有効な選択肢となります。
例えば、Webサイトへのアクセス履歴に基づいてステップメールの内容を出し分ける、特定の行動を起こした顧客に自動的にメールを送信するなどの機能は、顧客エンゲージメントの向上に貢献します。
SFAツール
SFA(Sales Force Automation)は、営業活動の効率化を支援するツールです。顧客情報の一元管理、商談管理、進捗管理など、営業活動に必要な機能が備わっています。ステップメールと連携することで、見込み顧客の情報を営業担当者にスムーズに引き継ぎ、その後の営業活動を効率的に行うことができます。
例えば、ステップメールを通じて見込み顧客の興味が高まった段階で営業担当者にアラートを送信し、タイムリーなフォローアップを促すことで、より精密なコミュニケーションがかなえられます。
ステップメールを作成する流れ6ステップ
次に、実際にステップメールを作成するときの具体的な流れを6つのステップに分けて解説します。
STEP1.配信目的を明確にする
まず、ステップメールを配信する目的を明確にしましょう。「資料請求後のフォローアップ」「セミナー参加後のアンケート回収」「商品購入後のクロスセル」など、具体的な目的を設定することで、配信するコンテンツやシナリオが明確になります。
目的が定まっていないと、内容に一貫性がなく、効果的な結果を得ることが難しくなります。例えば、資料請求後のフォローアップを目的とする場合、資料の補足情報や活用事例などを配信するコンテンツとして検討できます。
STEP2.メールを届ける相手を決める
次に、ステップメールを届ける相手を明確にします。届ける相手が曖昧だと、誰にも響かない内容になってしまう可能性があります。
ステップメールを受け取る相手は、オンラインもしくはオフライン上で自社に関係する何かしらの行動をしています。「会社資料をダウンロードした人」「生成AIの活用方法に関するホワイトペーパーをダウンロードした人」「メディアリストの作成方法セミナーに応募した人」など、具体的にどのような行動をした人を受け手にするのかを明確にしましょう。
STEP3.メールを届ける相手のニーズを分析する
届ける相手が決まったら、彼らがどのような情報を求めているのか、ニーズを分析します。
オンラインでのアクセス解析、アンケート調査や過去の顧客データ分析などを通してメールを届ける相手のニーズを把握することで、より効果的なコンテンツを作成できます。
ニーズを無視した一方的な情報提供は、顧客からの印象を悪くし、メールをブロックされてしまう可能性もあります。
例えば、過去のアンケートで「商品の使い方がわからない」という意見が多かった場合、ステップメールで商品の使い方を解説する動画やFAQなどを配信することで、顧客のニーズに応えましょう。
STEP4.配信シナリオを設計する
メールを届ける相手のニーズを把握したら、具体的な配信シナリオを設計します。どのタイミングで、どのような内容のメールを配信するのか、という流れを明確にしていきます。
例えば、資料請求後すぐにサンクスメール、3日後に資料の活用方法、1週間後に導入事例といった具体的なスケジュールと内容を決めましょう。数日あけて送らなくても、「これから1週間毎朝◯◯に関するTIPSをお送りします」などと、スケジュールと内容をあらかじめ伝えるのもひとつの方法です。
STEP5.コンテンツを作成する
配信シナリオに基づいて、実際にメールのコンテンツを作成します。件名、本文、画像、動画など、顧客に魅力的に映るコンテンツを作成することで、開封率やクリック率の向上につながります。
コンテンツの内容だけでなく、デザインや構成にも気を配り、見やすく、分かりやすいメールを心がけましょう。長文のメールは読みにくいため、適度に改行したり、箇条書きを活用したりするなどの工夫が必要です。
次に紹介するように、プレスリリースを活用することで効率的に品質のよいコンテンツを作成できます。
STEP6.分析と改善をくり返す
ステップメールの配信後は、開封率、クリック率、コンバージョン率などのデータを分析し、効果測定を行います。分析結果に基づいて、件名や本文、配信タイミングなどを改善することで、ステップメールの効果をさらに高めていきましょう。
例えば、開封率が低い場合は件名を見直す、本文中のURLクリック率が低い場合は本文の内容やデザインを見直す、といった改善策を検討します。
ステップメールで配信するコンテンツの作り方
ステップメールで配信するコンテンツは、見込み顧客の興味を引きつけ、購買意欲を高める重要な要素です。ここでは、効果的なコンテンツを作成するための3つの方法を紹介します。
新規作成する
見込み顧客に最適な情報を届けるためには、ステップメール専用のコンテンツを新規作成するのが効果的です。例えば、資料請求のお礼メールに添付する解説動画、商品購入後のフォローアップメールに掲載する活用事例記事など、各ステップに合わせて最適な内容を作成します。
時間と手間はかかりますが、見込み顧客の状況やニーズに合わせた質の高い情報を提供できる分、高い効果が期待できます。文章だけではなく、画像や動画なども活用して、質の高いコンテンツを準備しましょう。
既存の資料を流用する
過去に作成した資料やコンテンツをステップメールに流用することも有効な手段です。例えば、過去のセミナー資料、ブログ記事、事例紹介などをステップメールの内容に合わせて編集し、活用することで、新規作成に比べて時間と手間を大幅に削減できるため、効率的にコンテンツを準備できます。
ただし、流用する際には、ステップメールの目的に合わせて内容を適切に修正することが重要です。古い情報や顧客のニーズに合わない情報は逆効果になる可能性もあるため、注意しましょう。
プレスリリースを活用する
新商品やサービス、その導入事例などに関するプレスリリースは、ステップメールのコンテンツとしても活用できます。プレスリリースには、商品やサービスの特徴、メリット、導入事例などが簡潔にまとめられているため、ステップメールで配信する情報としても活用しやすいでしょう。
特に、新商品やサービスに関する資料請求やセミナーなどに興味・関心を示しているユーザーに向けてのステップメールに活用することで、見込み顧客の関心を高める効果が期待できます。
ただし、プレスリリースの内容は一般的に広く公開されている情報であるため、ステップメールで配信する際には、見込み顧客にとってのメリットや具体的な活用方法などを加えることで、より価値のある情報として提供することが重要です。例えば、プレスリリースに記載されている導入事例を、より詳細に解説する記事をステップメールで配信することで、見込み顧客の理解を深めることができます。
ステップメールの効果を高めるポイント
ステップメールは、一度設定すれば自動的に見込み顧客を育成できる便利な仕組みですが、効果を最大限に引き出すためには、いくつかのポイントを押さえておくことが重要です。最後に、ステップメールの効果を高めるための5つのポイントを解説します。
ポイント1.ツールを活用する
ステップメールの効果を高めるためには、前述したようなメール配信システムやMAツールなどのツールを活用することが欠かせません。これらのツールを利用することで、メールの作成、配信、効果測定などが容易になり、効率的な運用が可能になります。
特に、MAツールは、顧客の行動履歴に基づいてメールの内容を出し分けたり、スコアリングを行ったりすることができるため、より高度なステップメールの配信が可能になります。
ツールを活用することで、手作業で行っていた作業を自動化し、より戦略的な活動に時間を使うことができるようになるでしょう。A/Bテスト機能があるツールを活用することで、件名や本文の異なる複数のメールを配信し、効果の高いパターンを特定するなどの効果検証も実現できます。
ポイント2.配信データを集計・分析する
ステップメールの配信後は、開封率、クリック率、コンバージョン率などのデータを集計・分析し、効果測定を行うことが重要です。これらのデータを分析することで、どのメールが効果的だったのか、どのメールに改善の余地があるのかを把握することができます。
分析結果に基づいて、件名や本文、配信タイミングなどを改善することで、ステップメールの効果をさらに高めていくことが重要です。開封率が低い場合は件名を見直す、クリック率が低い場合は本文の内容やデザインを見直す、といった改善策を検討していきましょう。
ポイント3.定期的に件名や内容を見直す
ステップメールの件名や内容は、定期的に見直すことが重要です。時間の経過とともに、顧客のニーズや市場の状況は変化するため、過去に効果的だった件名や内容が、現在も効果的とは限りません。
定期的に件名や内容を見直すことで、常に最新の情報を提供し、顧客の関心を維持することができます。特に、オウンドメディアへのURLを入れている場合、URL先の情報も確認するようにしてください。
また、季節に合わせて件名や内容を変更する、最新のトレンドを取り入れることもおすすめです。A/Bテストを行いながら、常にブラッシュアップをすることで効果を最大化していきましょう。
ポイント4.定期的に配信シナリオを見直す
ステップメールの配信シナリオも、定期的に見直すことが重要です。顧客の行動や反応を分析し、シナリオの改善点を見つけることで、より効果的な顧客育成が可能になります。
例えば、特定のステップで離脱率が高い場合は、そのステップの内容や配信タイミングを見直す、新しいステップを追加する、削除するなどの改善策を検討します。
また、市場の変化や競合の動向などを考慮し、シナリオ全体を見直すことも重要です。例えば、新しい商品やサービスがリリースされた場合は、それらに関する情報をシナリオに組み込むことで、顧客の関心を高めることができます。
ポイント5.社内で作成されているコンテンツを活用する
ステップメールのコンテンツをすべてイチから作成、検討しているとコンテンツの用意に多くの時間を費やします。
すでに紹介したように、プレスリリースをはじめとした社内で作成されているコンテンツを活用しながら、メールの文面を検討していくことがおすすめです。
開発の想いや、新サービスやキャンペーンに関するプレスリリース、その他自社ならではのデータを活用した調査リリースなどは、ステップメールに活用できる内容が多く含まれています。
ポイント6.セールスライティングを意識する
ステップメールのコンテンツを作成する際には、セールスライティングのスキルを意識することがおすすめです。単に情報を伝えるだけでなく、顧客の感情に訴えかけ、行動を促すような文章を作成することで、コンバージョン率を高めることができます。
例えば、顧客の課題を明確にし、その解決策として自社の商品やサービスを提案する、具体的な事例やデータを示すことで信頼性を高める、緊急性や限定性を伝えることで行動を促すなどのテクニックがあります。
セールスライティングのスキルを磨くことで、ステップメールの効果を大幅に向上させることができるでしょう。
ステップメールで見込み顧客を育成しよう
ステップメールは、見込み顧客との関係を深め、購買意欲を高める効果的なマーケティング手法です。適切なツールを活用し、顧客のニーズに合わせたコンテンツを配信することで、効率的に見込み顧客を育成し、ビジネスの成長につなげることができます。
マーケティングだけではなく、インサイドセールスでの顧客育成や、メディアキットをダウンロードした相手などへの広報PR担当者からのコミュニケーション方法としてもステップメールを活用することもできるでしょう。
本記事を参考に、ステップメールの活用を検討してみてはいかがでしょうか。
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