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業績のV字回復に貢献した傘メーカーの広報PR|株式会社ワールドパーティー

プレスリリース配信サービス「PR TIMES」を運営する株式会社PR TIMESは、サービスのご利用の有無にかかわらず、広報PRについて学びたい方を対象としたセミナーを定期的に開催しています。11月11日には神戸新聞社の後援で、「事業拡大につなげる広報・PRーメディアが取り上げたくなる視点とはー」をテーマにセミナーを実施しました。

第一部では、傘業界でシェアNo.1を誇る株式会社ワールドパーティーから、執行役員の角谷圭一朗さんと、広報PR担当の中村友香さんがご登壇。「Wpc.」という基幹ブランドに加え、男性用日傘ブランドなど、「傘はファッション」をテーマに幅広くブランドを展開している同社ですが、コロナ禍での売り上げは大きく落ち込んだそうです。しかし、そこで立ち止まらずにいくつもの施策を打ち出し、売り上げは2021年から2024年にかけてV字回復し、事業を成長させています。広報PRがいかに事業拡大に貢献しているのかについてお話しいただきました。

本レポートは、当日のお話を元にまとめています。

第二部:記者が取り上げたくなるプレスリリースのポイントとは|株式会社神戸新聞社

株式会社ワールドパーティー(大阪府大阪市):最新のプレスリリースはこちら

株式会社ワールドパーティー 執行役員 Wpc.事業本部 本部長

角谷 圭一朗(Kadoya Keiichiro)

四国大学卒業後、福岡県の染色工房でテキスタイルデザインや着物、ファッション雑貨などの幅広い商品企画、販売に従事。2008年にワールドパーティーに入社、営業職を経て17年にWpc.事業部長に。19年に執行役員COO/営業本部長就任、マーケティングから商品企画、営業、広報PRまで一括してWpc.事業部を掌握。

株式会社ワールドパーティー Wpc.事業本部 セールスプロモーション部 広報

中村 友香(Nakamura Yuka)

大学卒業後、金融機関での勤務を経て2018年に株式会社ワールドパーティーに入社。ECサイトの運営や受注業務、お客様対応を担当し、21年より現職。プレスリリース作成や取材対応、シーズンビジュアルの撮影立ち合いなど、広報業務全般を行う。22年に企画・販促を担当した「旅する喫茶 meets Wpc. クリームソーダアンブレラ」が累計販売数30万本を突破。

業績低迷から脱却させた広報PRの力

──コロナ禍による業績悪化を脱却するために、どんなことをされたのでしょうか。

角谷さん(以下、敬称略):ひとつは新しいブランドを展開したことです。それまでは2つのブランドしかなかったところ、基幹ブランドとは違ったターゲット層に向けたブランドなどを追加し、合計5つの新ブランドを一気にローンチ。さらに、従来は小売店の傘売り場に卸すのがメインでしたが、直営店をオープンしました。

これらの大規模投資に加え、もうひとつなくてはならない要素が、「広報PR活動」です。もともと商品やブランドには自信があったのですが、お客さまのほうから来ていただくプル型のマーケティングが主でした。そこで、広報PRを通して、情報をこちらからお客さまに伝えにいくプッシュ型のマーケティングも始めました。

中村さん(以下、敬称略):コロナ禍の業績の落ち込みのなかで広報PRを強化することになり、そのタイミングで私が広報の担当になりました。EC担当だった私は広報PRに関する知見がなく、社内にも広報PRのノウハウはゼロ。ひとり広報として、何をしたらよいかわからない状態からのスタートでした。

そこでまず、2020年春のコロナ禍ど真ん中に発売した「シャイニーアンブレラ(旧:オーロラビニール傘)」の広報PRに注力することに。プレスリリースの配信やSNSでの発信をしたところ、『Fashion Press(ファッションプレス)』さんに取り上げていただき、かなり話題になったんです。実際ECサイトで完売になったり、小売店で行列ができたりと、最終的には累計39万本のヒットになり、広報PRの力を実感しました。これをきっかけに「Wpc.」の名が一気に広まったとも感じています。

ファッションプレスさんは、画力とかデザイン性といった面を重視して取り上げてくださるメディアなので、本商品の世界観を伝える広報PRが目に留まったのかなと思っています。

参考:Wpc.™より見るたびに表情が変わるオーロラビニール傘を発売開始。

広報PRの視点で開発した「クリームソーダアンブレラ」

──このほかにもユニークな傘が多いですが、商品開発はどのように行われているのでしょうか。

角谷:商品開発には、需要があるから商品を作るマーケットイン型と、明確な需要が存在するかわからない、市場自体を作り出すプロダクトアウト型とがありますが、当社はマーケットイン型6割、プロダクトアウト型4割で商品開発をしているのが特徴です。また、商品のアイディアはデザイナーだけでなく、営業、総務、広報PRなど、全社員が出すという独自の体制になっています。

先ほど紹介した「シャイニーアンブレラ」はプロダクトアウト型の代表で、従来は雨を避けるために使う傘を「SNSで見せる傘」として市場を作り出した商品です。ただ、プロダクトアウト型の商品はもともと市場があるわけではないので、明確な目的による来店や検索は期待できません。そのため、広報PRでプッシュすることが非常に重要になるわけです。

──全社員からアイデアを出すことで、さまざまなニーズに答えた商品、個性豊かな商品になっているのですね。

中村:2022年3月に発売した「クリームソーダアンブレラ」は、私が企画から販促まで担当した商品で、広報PRを前提に「自分が広報PRするならどんな商品だとPRしやすいか?」という発想からデザイン性を意識したプロダクトアウト型の商品です。

SNSでいろいろリサーチしていると、全国を巡りクリームソーダの写真をひたすらSNSにアップしている旅する喫茶さんのアカウントと出会いました。当時、昭和レトロや喫茶店ブームが盛り上がっていたこともあり、そこから着想を得て「クリームソーダアンブレラ」に反映しました。また、「旅する喫茶」さんとコラボレーションするにあたってこだわったのが、テーマ付けです。「雨の日とクリームソーダ」をテーマに据え、「雨宿りに訪れた喫茶店で、キラキラ輝くクリームソーダに出会い、憂鬱な気分が晴れていく」というストーリーを伝えるようにしました。「クリームソーダアンブレラ」は30万本のヒット商品に成長したのですが、世界観と傘の美しさが訴求力を高め、多くの方から注目いただける結果につながったのだと思います

中村:テーマ付けをしたのがよかったようで、メディアの方も興味を持ってくださり、「なぜテーマをつけているのか」「どのように開発したのか」などを取材されることが多かったですね。企画時も、ただ美しい印象を与えるだけだと、大きな広がりにはならないだろうと危惧していたので、テーマを設定したからこその広がりが生まれたのかなと思っています。

参考:旅する喫茶 meets Wpc.「クリームソーダアンブレラ」発売 シュワシュワとソーダの泡が弾ける様子を表現したビニール傘

店舗はブランドの世界観を伝えるショールーム

──コロナ禍に新しく3店舗もオープンされていますが、こちらはどのような目的があったのでしょうか。

角谷:店舗は売上面での貢献は後回しで、ブランドの世界観を伝えるためのショールーム的な役割が大きかったですね。もともとBtoB主体の販売だったので、ブランドの世界観を伝える場所がほしいとずっと思っていて。広報PRでブランドを知ってくださった方に、次のステップとして店舗に来ていただきたいですし、もしくはたまたま店舗に寄ってくださった方に対しても、その場では売れなくてもいい、いつかどこかで当社の商品を手に取っていただきたい、そんな想いで出店しました。

また、実際に出店してよかったひとつが、メディアからの取材対応です。これまでは事務所や小売店の売り場などで取材を受けていましたが、直営店で受けることでブランドの世界観みたいなものが画面からにじみ出るようになったと思います。それを見たお客さまがたくさん店舗に来てくださるようになり、良いサイクルが生まれています

タイトルだけで世界観を伝えるプレスリリース

──ここからはプレスリリースについてお伺いします。プレスリリースをたくさん配信されている中で、どのような点を意識していますか。

中村:広報PRを強化するにあたり、社内的に「推したい商品はすべてプレスリリースを配信する」という方針にしたので、当時は年間70本ほど配信していました。現在は、より質を重視するようになったこともあり少し減っていますが、それでも年間50本は配信しています。こだわっているのは、キービジュアルとキャッチ―なタイトルの2つ。特にタイトルやメインコピーは、それだけで商品の世界観が伝わることを重視して作成しています

例えば、コスメのボトルをイメージした傘「コスメティックアンブレラ」はデザインがシンプルな分、推しポイントが弱いと感じていました。そこで、完全に後付けになるのですが、ピンクの傘を開くと顔の血色がよく見えるのでは、という発想から、傘をチークのようだと表して「傘でメイク」というコピーをつけることに。さらにパープルはみずみずしいグロスに、ブルーは化粧水のイメージにつなげ、プレスリリースに記載しました。傘とメイクという良い意味での違和感を生んだことで、多くのメディアで取り上げられ、2023年ではもっとも取材の依頼をいただいた商品になりましたね。

参考:傘でメイクを。コスメボトルからインスピレーションを得たビニール傘が登場 淡いグラデーションカラーで顔まわりを華やかにし、血色感や抜け感を演出Wpc.「コスメティックアンブレラ」発売

──タイトルやコピーを考える際のポイントはありますか。

中村:実際に書くときには、最初は商品を見た印象からざっと書いてみて、そのあと「記事にしたくなるような要素ってどんなものだろう」と考えて肉付けするようにしています。他社さんのプレスリリースをたくさん見て参考にしていて、「コスメティックアンブレラ」はコスメがコンセプトなので、化粧品業界のプレスリリースを見て参考になるキーワードを探していましたね。

角谷:当社の広報PRで一番大切にしているのが、機能それ自体ではなく、ベネフィットを伝えることです。「遮熱率100%」「遮光率100%」「UPF50+」などと言ってもわかりづらいですね。それよりも、傘の下が涼しくなる、日焼けがしにくくなる、汗の量が減るなど、具体的に得られるメリットを伝えることのほうが大切です。傘は本来、雨の日に濡れるのを防いだり、暑い日に日差しを防いだりするものなので、ネガティブなシーンを連想する方も多いですよね。そこをいかにポジティブに変換して、お客さまの気分を上げられるか。当社の商品開発や広報PRでは、そこをさらに追求していきたいと思っています。

参加者から、ワールドパーティーのお二人へ質問

参加者のみなさまから、お二人へたくさんのご質問をいただきました。ここからはその中でも特に多かったご質問について、回答をご紹介します。

──広報PRの予算は後回しにされがちですが、予算確保のためにしたことや、お金をかけずにできる取り組みなどがあれば教えてください。

中村:私の場合はとにかくプレスリリースをたくさん配信しました。最初は何をしていいかわからなかったので、量を重視していましたね。それから、キービジュアルの撮影は社内で出たアイデアを元に広報チームが対応しています。何より小道具、モデル衣装のコーディネート組み、傘の見え方などすべて自分たちで考えてみると、いろんなアイデアが生まれるんです。そこで生まれたアイディアをどんどん形にしていったのが、売り上げにもつながったのだと思っています。

──メディアリレーションで意識していることはありますか。

中村:一度つながったメディアさんとのつながりを大事にして、定期的にご連絡させていただくようにしています。例えば男性用日傘の場合、まだ抵抗感のある男性も多くて記事化にはつながらないことがあるとしますよね。そんなときは記者さんに商品をお渡しして、次にお会いするまで使ってみてくださいと伝えるようにします。すると、使ってみた感想をいただけたり、なかには「実際に使ってみた」という記事を作ってくださる記者さんもいらっしゃるので、そういうちょっとした日々のコミュニケーションが大切かなと思っています。

──プレスリリースを配信する前後の動き方で、意識していることはありますか。

中村:当社の場合、販売チャネルが直営店3店舗、小売店、ECなど複数あるので、プレスリリースを配信する前には必ず共有し、すべての売り場で在庫がある状態にしてもらうようお願いしています。これは売り上げに直結することなので、すごく重要です。

──プレスリリースの技術向上のために、なにか勉強はしていますか。

中村:とにかく他社さんのプレスリリースをたくさん見て研究するのが一番効果的だと思います。例えば当社のようにメインで扱う商品が単体の場合は、靴下や帽子、バッグを展開する同様の会社形態のプレスリリースが参考になります。どういう視点で発信しているのかを学んできましたし、最近はそこから派生した商品・サービスのプレスリリースも参考にしています。例えば日傘の場合、日焼けをすると脱毛できないので、そこから脱毛サロンのプレスリリースを参考にするなど、「当社でも取り入れられる要素はないか」という視点で見ています。

まとめ:広報PRの視点で売上拡大に貢献

コロナ禍による業績低迷から、大規模な投資と広報PRによって大復活を遂げたお話は、とても励みになる内容でした。お二人のお話から、あらためて広報PRの持つ力を実感したのではないでしょうか。

株式会社ワールドパーティーの広報PR施策から学ぶポイントは以下の4点です。

  • 厳しいビジネス環境でも、広報PRの力は売り上げに寄与することができる
  • 広報PRのしやすさから商品アイディアを出すことも有効
  • プレスリリースはタイトルだけで世界観を伝えられること、目に留まりやすいキービジュアルが大切
  • 広報PR活動と実店舗を連動し、タッチポイントを増やすことで新たなファンが生まれる

小売店向けに卸売りをしているメーカーや、商品開発に悩む企業の広報PR担当者は、ぜひ参考にしてみてください。

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この記事のライター

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『PR TIMES MAGAZINE』は、プレスリリース配信サービス「PR TIMES」等を運営する株式会社 PR TIMESのオウンドメディアです。日々多数のプレスリリースを目にし、広報・PR担当者と密に関わっている編集部メンバーが監修、編集、執筆を担当しています。

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