岐阜県各務原市にある築100年の古民家をリノベーションしたお店「喫茶室 山脈」。2019年4月のオープン以来、ノスタルジックな空間でおいしいコーヒーとモンブランが楽しめると評判を集め、今では地元だけでなく遠方からも連日多くの人が訪れる人気店となっています。
その人気を後押ししているのが、店内の雰囲気やメニューの魅力を写真と文章で巧みに伝えるプレスリリースやInstagramでの情報発信です。本記事では、同店を運営する株式会社SANMYAKUの小木曽米利子さんにインタビュー。積極的な情報発信に取り組む理由や、お客さまとのコミュニケーションで工夫していること、今後のお店づくりについて話を伺いました。
喫茶室 山脈(株式会社SANMYAKU)(岐阜県各務原市):最新のプレスリリースはこちら
喫茶室 山脈(株式会社SANMYAKU)
岐阜県出身。学生時代のアルバイト先で喫茶店とコーヒーの世界に興味を持ち、卒業後はコーヒーの製造・販売業店で製造業に従事。その後、会計事務所に勤務し会計実務に携わる中で店舗運営について関心を持つ。2011年に現在の(株)SANMYAKUオーナーと共に一店舗目の大型の喫茶店を開店。2019年に喫茶室山脈を開店。店長、経理、EC、広報業務を担当。2024年11月中旬に物販専門店、焙煎室山脈を開店予定。
全国から訪れたくなる喫茶室の実現と販路拡大
──小木曽さんが書かれるプレスリリースは人に話しかけるような暖かい印象を受けますし、Instagramの投稿は山脈さんらしさを感じています。こういった情報発信はいつ頃から取り組まれているんでしょうか。
実は私たちは山脈をオープンする以前に、大型の喫茶店を7年ほど営業していたんです。そこは地元の方々に愛されるお店ではありましたが、大型である分、経営のことを考えると来客数を増やす必要がありました。また、東海地区は喫茶店の数が多い地域で、ライバルがたくさんいるんですよね。その経験や環境もあって、お客さまがゆっくりと特別な時間を過ごせるお店にすること、そして「ほかの喫茶店との違い」を伝えて、遠方からも来ていただけるお店にしたいといった想いを抱いて山脈を営んでいます。
Instagramは、集客につながると思い、オープン前から発信を始めました。古民家をリノベーションした店舗の雰囲気と、喫茶室をコンセプトとした岐阜県産の栗をつかったモンブランなどの商品を合わせた写真は好評で、当初500人ほどだったフォロワーも、現在では17,000人ほどまで増えています。
プレスリリースは、ECサイトのコンサルタントの方から、プレスリリースの配信をしたほうがよいと「PR TIMES」を紹介していただいて始めたんです。
Instagramや「PR TIMES」での発信がきっかけで、JR東海さんが運営しているECサイト『いいもの探訪』や東海テレビさんが運営している『東桜デパート』でも私たちの商品を扱っていただけるようになりました。
──広報PRは未経験からのスタートとのことですが、プレスリリースの書き方や写真の撮影などご苦労もあったのではないでしょうか。
そうですね。プロの方にお客さまの興味を惹きつけるような書き方などをアドバイスしていただきますが、プレスリリースを書いてみて感じたのは、何よりも「おいしさ」を文章で伝えるのが想像以上に難しいということです。
伝える内容をいろいろと検討する中で、体験談を中心にしたプレスリリースに方針転換した点もあり、初期のプレスリリースと比べると少しずつ変化していると思います。
また、プレスリリースに掲載する写真はカメラマンさんに撮影をお願いしているのですが、こだわっているのは、「ECサイト用の商品写真」と「店舗の雰囲気を伝える写真」とで撮り方を変えるということです。例えば、商品写真は商品そのものが引き立つことはもちろん、優しい雰囲気も大切にしていますし、店内の写真は具体的なニュアンスやほしい画を伝えて撮影していただいています。
私たちが大切にしているのは、プレスリリースを読んだお客さまが「商品を買ってみたい」「山脈に行ってみたい」「そういえば最近行ってなかった」と想起していただくこと。そのきっかけをつくるためにも新商品や限定商品を生み出し、新しいニュースとしてプレスリリースを配信しています。
参考:濃厚な栗とバター、生クリームを練り上げた贅沢な秋のお取り寄せ。喫茶室山脈の「栗のテリーヌ」「キャラメルナッツと洋梨のモンブラン」季節限定販売。
狙ったところ以外の場面でも広報PRの効果を実感
──喫茶店の激戦区ということですが、オープン以来順調に運営できたのはなぜでしょうか。
いえいえ、ずっと順調というわけではないんですよ。山脈がオープンして、お客さまが増えてきて「これから」という時にコロナ禍に突入してしまい、テイクアウトしかできない時期がしばらく続きました。
コロナ禍が長引くと、東京や大阪など大都市圏の人たちが人込みから離れられる地方に訪れてくれるようになり、多くのお客さまが私たちの店にも来てくださったんです。
ここ数年は、おかげさまで順調ではあるものの、お客さまが多いときと少ないときとの差が激しいなと感じています。だからこそ、外に向けての発信が大切だと思うんです。暇な時期を想定して常に種まきをして、忙しい時期にたくさん来ていただけるような活動をしています。
私たちは田舎にある小さな個人店ですし、これまで広報PR活動をしたことがなく未経験からのスタートですが、とにかく「やれることは全部やってみよう」「楽しそうと思ってもらえることはすべてやってみよう」という思いで取り組んでいるんです。
──これまでに、広報PRの効果を感じる出来事などはありましたか。
2022年に雑誌の取材を受けたときでしょうか。「モンブラン特集」に紹介していただいたのですが、今までとはまったく違うお客さまの層に知ってもらうことができたと思います。
ほかにも、登山アウトドア用品専門店の「好日山荘」さんが運営しているメディアでブログを書いている方が、「Instagramを見てずっと来たかったんです」と来店してくださったことがあるんです。そこからご縁があって、2023年の山の日には好日山荘さんの近隣の店舗と「山の日イベント」のコラボイベントを実施することができました。
店名が「山脈」なので、これまでも山登りをする人が多く来店してくださっていましたが、そのイベントを機に、より認知が広がったと思います。狙っていたところだけでなく、それ以外のところにも広がってつながりが生まれるのは、広報PRの効果として感じている部分です。
非日常感を大切にした「山脈」のコミュニケーション
──さまざまなご縁が生まれているんですね。お店でのことを伺いたいのですが、お客さまと接する際に小木曽さんが大切にしていることはありますか。
お客さまに対する「思いやり」でしょうか。山脈は「ゆったりしていて穏やか」というイメージを大切にして情報を発信していますが、それに合った接客をしたいと常々思っています。
例えば、古民家をリノベーションした店舗ということもあり、冬場は暖房をつけていても冷え込んでしまうんですね。そこで、最初にお客さまへ提供する水を冬場はお白湯に変えてみたところ、とても喜んでいただいたことがありました。
私たちが得意とするのは、お客さまに喜んでいただいたり楽しんでいただけたりする体験を提供すること。それはスタッフも同じ思いでいるので、「程よい距離感」を大切にしながら、とても親切な接客をしてくれていると思います。
また、私たちは「非日常感」も大切にしていて、お客さまが来店された際には「いらっしゃいませ」ではなく「ようこそ山脈へ」とお声がけしているんです。山脈の特別な空間で、コーヒーの良い香りに包まれながらゆったりと過していただけるようなお店づくりを心がけています。
──父の日に開催されたイベント「オリジナルブレンドサロン開催」はユニークな取り組みですね。こうした体験型のイベントでは、山脈の深いファンをつくることができているのではないでしょうか。
そうですね。私たちは「個人ではなくお店として有名になっていきたい」という思いが強いので、普段はお店をたくさんの方に知っていただくための活動をしていますが、ワークショップでは普段なかなか密に関わることができないお客さまとの接点を持つことができる大切な時間になっていますね。
本当はもっとたくさんの方に参加していただきたいのですが、一人ひとりに自分たちの思いを丁寧にお伝えしてコミュニケーションをとっていくことを考えると5人が精一杯で。お客さまの想像よりも少し上の「いいな」を目指して、無理な運営にならないよう私たちができる範囲で開催しています。
参考:ちょっと良いコーヒーをお父さんに。喫茶室山脈にて父の日フェア:オリジナルブレンドサロン開催&大人気コーヒーゼリーやアイスコーヒーギフトの贈り物も。
ほかにも、私たちのお店が旦那さんとの思い出の場所だという常連のお客さまがいて、旦那さんが亡くなった後もお供物のお菓子を買いに来てくださったり、旦那さんを知る方を連れて来店してくださったりするんです。この店で過ごしたことが思い出として心に残っていて、今後もいろいろな人にその話をしてくださるのだと思うと、とてもうれしい気持ちになります。普段はなかなかお客さまとゆっくり話すことができませんが、ふとした会話の中で「この店に来てよかった」という言葉を耳にすると、いつでもそうと思っていただけるお店でいたいと思いますし、これからもしっかりその想いは伝えていきたいなとあらためて感じますね。
──これから「喫茶室 山脈」をどんなお店にしていきたいですか。
一番の目標は、全国からもっと多くの方に来ていただけるお店になることです。私たちが得意とするのは、お客さまに非日常を味わっていただき楽しんでいただくことだと思っていて、その原動力になっているのはお客さまに対する「想い」です。
「特別な時間を過ごしてほしい」「お客さまの思い出に残る場所になってほしい」という想いを大切にしながら、これからも多くの方に愛されるお店であり続けたいと思います。
まとめ:「行ってみたい」につなげる喫茶室「山脈」の情報発信
自分たちらしさを忘れず、丁寧な情報発信によって全国にファンを広げる株式会社SANMYAKUが営む「喫茶室 山脈」。小木曽さんが大切にしている山脈らしい情報発信によって、「このお店で働きたい」と思ってくれるスタッフの採用にも影響していることもお話いただきました。
テクニックだけではない、山脈に掛ける想いと「お客さまにとって特別な時間を提供したい」という想いが込められた「喫茶室 山脈」の情報発信におけるポイントは以下の通りです。
- オープン前から行った積極的な情報発信
- 古民家、看板商品である岐阜名産「栗」のモンブランなど自分たちらしさを表現
- 普段の投稿から山脈らしさを大切にすることで、雰囲気にあった人材の獲得に
- 記憶に残るためにもお客さまとのタッチポイントをたくさんつくる
- プレスリリースは読み手の興味を惹きつける書き方と写真、「ほかとの違い」を意識
重んじることは、単に情報を発信するだけでなく、自社のストーリーや大切にしている価値観を明確にし、それに共感してもらえる方法で情報を届けること。「喫茶室 山脈」の広報PRにつながる情報発信は、飲食店だけでなくさまざまな企業の広報PR担当者にとって、参考にしたい考え方ではないでしょうか。
PR TIMESのご利用を希望される方は、以下より企業登録申請をお願いいたします。登録申請方法と料金プランをあわせてご確認ください。
PR TIMESの企業登録申請をするPR TIMESをご利用希望の方はこちら企業登録申請をする