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事業に貢献する広報PR。社会の声と事業価値を重ねた施策・企画の立て方とは|株式会社うるる

広報PR活動を、いかに事業貢献へとつなげるか。よく聞くお悩みのひとつです。

プレスリリース配信サービス「PR TIMES」を運営する株式会社PR TIMESでは、6月13日に「事業に貢献する広報PR」をテーマとしたユーザー会を実施。「労働力不足を解決し 人と企業を豊かに」をビジョンに掲げる株式会社うるるで、SaaS事業の広報PRを担う高橋久美さんに登壇いただき、社会の声と事業価値を重ねるPR施策について伺いました。

当日、お話いただいた内容を元にまとめています。

株式会社うるる ブランド戦略部 ブランド戦略課

高橋 久美(Takahashi Kumi)

1993年生まれ、山梨県出身。2016年に株式会社出前館に新卒で入社。飲食店向け営業を経験後、同年9月より広報チームへ異動。未経験で広報機能を立ち上げ、プレスリリースや企画書の作成、取材対応、メディアプロモート等の広報業務を担当し、BtoCサービスの広報経験を幅広く積む。その後、2022年11月に株式会社うるるのブランド戦略部に入社。BtoB向けSaaSの広報を主に担当しながら、インナーブランディングにも携わり、企業カルチャーの醸成・浸透に取り組む。2024年4月よりブランド戦略課 課長を務める。プライベートでは、2歳と3歳の子育てに奮闘中。

ベースとなる「事業に貢献する広報PR」

──まずはうるるの事業について、ご紹介をお願いします。

うるるは「労働力不足解決カンパニー」というビジョンを掲げたIT企業です。日本は少子高齢化が進み、労働生産人口が減少しているため、私たちはIT/AI技術を活用しながらDX化を推進することで、日本全体の生産性向上を目指し、さまざまな事業を展開しています。

現在はSaaS事業(Software as a Service)をメインとしていますが、創業時はBPO事業(企業の業務プロセスの一部を受託する)から始まりました。当時は、女性の活躍が今以上に進んでおらず、特に子育てや介護で家にいなければならないといったケースも多い時代でした。そのため、在宅でスキマ時間にできる仕事、特に「データ入力」に需要があったんですよね。現在はBPO事業とクラウドソーシングで得たノウハウをかけあわせて、複数のSaaS事業を運営しています。

──広報PRを担う「ブランド戦略部」は、どのような体制で運営されているのでしょうか。

大きく分けて3つのミッションを掲げて運営しています。

1.コーポレートブランディング
ミッション:労働力不足解消といえば「うるる」という認知を獲得
業務:コーポレートブランディングにおける戦略の設計と実行など

2.インナーブランディング
ミッション:社員が自分の言葉で会社のことを語れる状態を継続、リモートワークでも絶えないカルチャー醸成
業務:イベントの企画運営やコミュニケーション施策の旗振りなど  

3.事業広報
ミッション:広報PR活動による事業課題の解決
業務:各事業サービスの広報 PR戦略の設計やプレスリリースの作成など

これらの業務を、管掌役員のもと4名(1名育休中)のメンバーで推進しています。また、事業部門にもそれぞれ広報PRの窓口となるメンバーがおり、彼らと連携を図りながら取り組んでいます。

ブランド戦略部では、事業部から「この情報を発信してほしい」とオーダーをもらった際はそのまま発信するのではなく、「お客さまの好みに合わせた料理を作るシェフ」といったイメージを常に意識しています。お客さま(=メディア関係者や生活者)へ、いかに情報を伝えられるかを考える(=調理する)ようにしているんです。

株式会社うるる ユーザー会「事業に貢献する広報PR」資料 広報の役割

──では実際に広報PR施策を考えるときは、どのようなことを大切にされているのでしょうか。

うるるの広報PR施策で核となっているのが、「事業に貢献する広報PR」という考え方です。うるるの事業は社会貢献性が高く、扱う情報も何かしらの社会課題に紐づいているのが基本となります。そのため、扱う情報のどこに課題があるのか、もしくはすでに顕在化されている課題であっても、その奥にさらなる課題があるのではないかと疑い、仮説を立てるようにしています。その仮説を調査などによって顕在化し、社会に問いかけ共通意識を生み出し、さらにその課題を解決するのが自社の事業サービスである、とつなげることを大切にしています。

情報を発信する方法はさまざまで、代表的なものは調査レポート、サービスの最新情報、導入事例をはじめとする情報のプレスリリース、企画書がありますが、基本的にはこの考え方をベースに作成しています。

「TELハラ」から紐解くPR施策

──ここからは具体的な施策について伺います。これまで行った広報PR施策の中で、反響の大きかった事例を教えてください。

もっとも反響が大きかったのは、「fondesk(フォンデスク)」という電話代行サービスの広報PR施策です。「TELハラ」という印象的なフレーズでPRしたことで、多くのメディアで取り上げていただきました。この施策を行ったのは2021年3月。コロナ禍により日本全体でリモートワークが推進されていた頃で、電話代行サービスのニーズが高まっていました。

コロナ禍以前も順調に契約件数は伸びていたのですが、コロナ拡大後は一気に契約件数は拡大。一方でアフターコロナを踏まえると、同様の成長率は難しいと考えていました。それまでデジタルマーケティングの施策のみだったこともあり、新たな施策が求められていました。

そこで「TELハラ」のPR施策を展開することにしました。オフィスにおける古い電話習慣として、電話対応が新人教育に使われたり、女性や総務担当者が電話に出るといった暗黙のルールがあります。コロナ禍によって一時的になくなった電話対応が、アフターコロナでは復活することが予想されました。声を上げにくいけれど、変えてほしいと思っている人がいるのではないか、と仮説を立てたわけです。

この調査の結果をもとに、「今こそ、職場から『TELハラ』をなくすとき。」というコピーを作成し、世の中の皆さんにオフィスの電話問題について考えてもらうきっかけをつくったんです。「TELハラ」にした理由は、「オフィスの電話問題を変えよう」とメッセージを発信したところで、この根深い習慣はすぐには変わらないと感じたことから。そのままキャッチ―かつインパクトのあるワードで世に問いかけたことで多くの方に届けることができました。

また、社内にも協力を仰ぐことで、結果的にインナーブランディングにもつながりました。

(広報PR施策「TELハラ」で取り組んだこと)

  1. プレスリリースの配信(調査リリース)
  2. 新聞紙面への広告出稿
  3. noteの発信
  4. 全社へ取り組み背景の説明と、シェアの協力依頼

参考:「fondesk」が年齢や肩書によって電話対応を押しつけられる状態を「TELハラ(テルハラ)」と命名

株式会社うるる ユーザー会「事業に貢献する広報PR」01

──この施策による成果をもう少しお伺いできますでしょうか。

まずパブリシティ面での成果としては、広告の影響もあって続々取材が入り、テレビは6番組で紹介いただき、トータル120本以上のメディア掲載につながっています。SNSでも多くの方が話題にしてくださり、X(旧 Twitter)では国内トレンド2位のトレンドにまでなりました。

指名検索も伸び、マーケティングへも効果が波及。セールス面においても、これまで引き合いの少なかった業種の方からのお問い合わせが増加したんです。

そして、メディアやSNSを通じて話題になったことで、社会的な行動変容に触れられたのが大きな成果でした。コロナ禍における課題にフォーカスするのではなく、アフターコロナ、つまり未来の課題を予兆して訴求ポイントを作れたのがよかったと思っています。

このように「TELハラ」の施策は特に大きな反響をいただいた事例ですが、うるるの広報ではどの施策でも、考える際にはフレームワークを必ず活用しています。

株式会社うるる ユーザー会「事業に貢献する広報PR」資料 PR施策を考える時のフレームワーク

社会の声を事業にフィードバックしたPR施策

──「TELハラ」の施策はまさに「事業に貢献する広報」を体現した事例ですね。そのほかの事例についてもご紹介いただけますか。

では次に、社会の声をもとにした2つの事例をご紹介します。入札情報速報サービス「NJSS」と、幼稚園・保育園向けオンライン写真販売サービス「えんフォト」の広報PR施策について、それぞれご説明します。

入札情報速報サービス「NJSS」

「NJSS」は弊社の収益の半分を占める基幹事業で、全国の官公庁・自治体等の入札情報を提供するサービスです。「入札」というのは生活者にとってはあまり身近なものではなく、広報PRを行ううえでの課題となっていました。

そこで、「NJSS」が保有する入札案件のビッグデータを活用し、「入札」を身近に感じてもらうことを目指した企画を考えました。例えばその年の入札案件の検索数は、1位「高騰」、2位「脱炭素」、3位「万博」。ここから、社会の関心が高いテーマや社会のニーズが読み解けるのです。

これらの情報の調査リリースでは、より身近に感じてもらうために、これらのワードをランキング形式やマップ形式などポップに見えるデザインにし、トレンド感を演出したビジュアルにもこだわりました。

このプレスリリースは2023年11月23日に配信したのですが、これは「いいにゅうさつ」にかけて私たちが登録した記念日なんです。こういった仕掛けも工夫ポイントですね。

そのほかにも、「入札リサーチセンターからのコメント」は私たち広報PR担当者も一緒に練りに練ったところですね。

また、このプレスリリースは配信して終わりではなく、「私たちの入札情報はこんな風に活用できるので、報道でお役立ていただけますよ」とメディアへ提案もしました。一目で内容が伝わるビジュアルにしたこともあってか、もっとこんなデータを出せないか、といった声をいただいたことも。

このプレスリリースを配信するまでに、事業部のメンバーと何度もディスカッションを重ね、広報としてPRしたいことと、事業部側が知ってほしいことを整理していったことで、違う部署のメンバーが1つのチームになれたことも大きな成果と考えています。

参考:【11月23日は「いい入札の日」】入札トレンドワードランキング2023、入札ワードマップ2023<IT・DX関連>を発表 入札トレンドワードランキング1位は物価高の影響で検索数が急上昇した「高騰」

幼稚園・保育園向けオンライン写真販売サービス「えんフォト」

次にご紹介したいのが、幼稚園・保育園で撮影された子どもの写真を保護者がオンラインで手軽に閲覧・購入できるサービス「えんフォト」の広報PR施策です。

私たちが子どもの頃は、園内に写真が掲示され、ほしい写真の番号を伝えて厳禁で購入するという写真販売方式だったと思いますが、それをオンライン上で行えるサービスです。このサービスの広報PRにおける課題は、プレスリリースできるネタが継続的にないことでした。ネタがないからと言って安易に調査リリースを作成するのは本末転倒です。

あらためてフレームワークに沿って子どもの写真に関する社会課題について考えてみると、その頃、子どもの不適切写真の悪用に関するニュースが注目されている時期で、これは世に問いかけて意識を変えないといけないだろうという結論に至りました。また、このテーマは注目され、報道される機会も多かったため、きっと保護者の意識が変化しているのではないだろうかという仮説も生まれました。その仮設をもとに調査し、この実態の顕在化をすることに挑戦したのです。

もともと「えんフォト」は、保護者の目に触れるまえに、運営側で不適切写真を自動検知できる機能を持っていました。この大きな強みを社会課題と重ね、大切なお子さんの写真を扱うサービスだからこそ、この問題と真摯に向き合っていることを伝えたんです。

パブリシティ掲載が6件。SNSやニュース記事でも皆さまからコメントがたくさん集まり、社会へ問いかけるという面でも成功した事例です。また、営業活動でもこの調査結果を資料としてお客さまへ配布することで、信頼感を持っていただけたという声も上がり、広報PRのメンバーで喜んでいました。

参考:子どもの写真のSNS投稿、プライバシー対策や配慮をしている保護者は9割超え!そのきっかけは「子どもへの悪質犯罪に関するニュース」が6割 プライバシー対策や配慮を開始した年齢は「0~1歳」が7割以上

ユーザー会「事業に貢献する広報PR」02

うるるの調査リリース設計に必要な8つの要素

──企業様の中には調査リリースを配信してみたいという方も多いのですが、うるるではどのように調査リリースを作成されているのでしょうか。

調査リリースを作成する際、いきなり調査項目から考えるというケースが多いようなのですが、うるるではまず、調査リリースの企画を設計することから着手します。そもそもの施策実施目的を明確にすることが大前提ですが、以下の8つの要素を企画書に盛り込み、そのあと「③仮説」をもとに具体的な質問を考えています。

株式会社うるる ユーザー会「事業に貢献する広報PR」資料 調査リリースができるまで

また、プレスリリースのタイトルは重要なので、私の場合、取り上げられたいメディアの記事を調査し、どういうタイトルが多いかを把握するようにしています。実際にタイトルを考える際は、それに合わせて作成することを心がけていますね。

まとめ:広報PRは事業・サービスの一番の理解者でありファンに

広報PR活動で事業課題を解決するために、うるるが大切にしている考え方から手法まで、具体がつまったセミナーとなりました。

「広報PRは自社の事業やサービスの一番の理解者であり、ファンであるべき」というメッセージを残した高橋さん。今後は事業広報のみならず、うるるの「労働不足を解決し 人と企業を豊かに」というビジョンに、よりフォーカスしたコーポレートブランディングも強化していきたいと語りました。

うるるの広報PR施策からの学びのポイントは以下です。

  • どんなアプトプットにおいても「事業に貢献する広報PR」となるよう意識する
  • 顕在化している課題の、そのさらに奥にある潜在的課題を見つける
  • 社会課題と事業サービスとの重なりを見つける・作り出す
  • フレームワークを活用して軸のぶれない広報PR施策を考える

セールスやマーケティングをはじめ、事業への貢献を目指す広報PR担当の方は、ぜひ参考にしてみてください。

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