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デジタルシフトとは? 推進する流れ・具体的な施策・成功のための5つのポイントを解説

情報技術の発展、デジタルデバイスの多様化などに後押しされ、生活者を取り巻く環境ではあらゆるコミュニケーションがデジタル化しています。また、ビジネスシーンにおいてもそれは同様であり、企業はさまざまな取り組みを通じアナログからデジタルへの転換「デジタルシフト」を図っています。しかし、具体的にデジタルシフトとはどのようなことを指すのでしょうか。また、デジタルシフトとはどのように進めるべきなのでしょうか。

本記事では、デジタルシフトの概要を基本から整理しつつ、そのメリットや推進する流れ、注意すべき点などを解説していきます。

目次
  1. デジタルシフトとは

  2. デジタルシフトとDXの違い

  3. デジタルシフトを行う3つのメリット

  4. デジタルシフトを進める4つのステップ

  5. デジタルシフトで行う具体的な施策

  6. デジタルシフトを推進する際の注意点や、成功させるために重要な5つのこと

  7. デジタルシフトを推進している企業事例

  8. 「ありたい姿」になるための手段としてデジタルを活用する

  9. デジタルシフトに関するQ&A

デジタルシフトとは

デジタルシフトとは、アナログで行っているものやサービス、あるいは業務をデジタル化することを指します。これまで書類のやりとりが発生していた契約書や決裁書類などの手続きをWeb上で行うようにしたり、紙で配布していたチラシをアプリで見られるようにする、電話で対応していた問い合わせやヘルプデスクサービスをチャットボット対応にするなどが代表的な例です。

デジタルシフトとは

デジタルシフトとDXの違い

デジタルシフトと混同されがちな言葉に、DX(デジタルトランスフォーメーション)があります。DXとは、デジタル技術を用いて社会やビジネスシーンに変革をもたらすことを指します。デジタルシフトはDXに含まれる手段のひとつと考えてよいでしょう。

デジタルシフトを行う3つのメリット

デジタルシフトを行うとどのような変化があるのでしょうか。ここではデジタルシフトによるメリットを見ていきましょう。

1.業務の効率化やコストの削減ができる

アナログで行う作業というのは、時間や手間がかかります。作業を行うために決まった場所に移動しなければならないなどのケースも多く見られます。コンテンツをデジタル化することで、手書きしていたものがパソコンで簡単に入力できるようになったり、タブレットやスマホなどのデバイスを活用して、場所を問わずに閲覧できたり入力ができたりと、作業の効率化を実現できます。また、これまで紙で作成していた書類などのデジタル化は、紙や印刷にかかっていたコストを削減できるといった利点もあります。

2.リソースの全体最適を図ることができる

アナログで行っていた時にかかっていた時間がデジタルシフトにより削減されれば、その分別の業務を行うことが可能です。また、これまで特定の業務に張り付いていなければならなかった人的リソースが解放され、新たな施策やユーザーとのエンゲージメント強化など、人間でなければできない本質的な業務に専念させることができます

3.生活者に最適なサービスを提供できる

デジタルシフトで、これまで有人対応ではカバーできなかった時間帯の対応を可能にするなど、サービスの拡充を図ることが可能です。また、有人対応でなくても目的のサービスにたどり着ける層には、デジタルでより速いサービスを提供する一方、高齢者などデジタル化への対応が難しいいわゆるデジタル弱者へは人的リソースを割くなど、生活者に応じた最適なサービスの提供を可能にします。

デジタルシフトを進める4つのステップ

実際にデジタルシフトは、どのように進めればよいのでしょうか。ここでは4つのステップでの進め方を見ていきます。

STEP1.現状の課題を把握する

まず、現在の業務や提供するサービスにおける課題を把握しましょう。業務運営において効率が悪いことや工数を要していることなどを洗い出し、その課題の性質を考えてみます。

例えば、「電話による問い合わせが多く、その対応に工数を割いている」という課題があった場合、問い合わせが多い内容が人でないと対応が難しいものなのか、デジタルでも対応できるものなのかを考えてみましょう。デジタルシフトが可能な課題であれば次のステップに進みます。

デジタルシフトそのものを目的化してしまうと、かえって工数が増えるなど本末転倒な事態になりかねません。集客を増やしたい、対応時間の拡充を図りたい、省力化を進めたいなど、デジタルシフトによって実現したいことは何かを明確に定めましょう

STEP2.デジタルシフトのゴールを明確にする

STEP1で洗い出した課題解決に最適な手段を考えてみます。デジタル化と言っても手段はさまざまです。STEP1で例にした課題であれば、Webサイトによくある質問内容をQ&Aページにして掲載するのか、一次対応をデジタル化するのか、その場合デジタル音声で使用するのか、Webを窓口にしてチャットボット対応にするのかなど、さまざまなソリューションが考えられるでしょう。

自社が生活者に対してどういうサービスを提供していきたいのかゴールを明確にし、それを実現する手段を検討しましょう

STEP3.適用するツールやデジタル技術を選択する

STEP2でイメージしたソリューションを実現するツールやデジタル技術を検討します。実現したいソリューションが複数ある場合は、もっとも効果の高いと思われるものを優先的に検討していきましょう。

導入後の運用や最終的に実現したい将来像を鑑み、機能の過不足がないものを選ぶことが重要です。それには、STEP2で考えた自社が実現したいゴールイメージを明確にベンダーなどに伝えることが必要です。たとえ高性能でも複雑で操作が難しいとなると、メリットは目減りします。操作の難易度が、実運用に適しているかどうかも併せて検討しましょう。

STEP4.デジタルシフト後の業務フローを策定する

スムーズなデジタルシフトを実現するには、導入後の業務フローをきちんと策定することが大切です。アナログで行っていたときの作業が具体的にどう変わるのかを使用者全員が理解し、正しく使うためのマニュアルも併せて作成しましょう。対外的なサービスの一部として導入する際には、利用者からの問い合わせを想定した対応マニュアルも作成します。

デジタルシフトで行う具体的な施策

具体的にどのようなものがデジタルシフトの対象となるのでしょうか。いくつか代表的なものを紹介します。

1.帳簿のデジタル化

紙ベースで管理している帳簿をデジタルベースにすることで、検索や科目ごとの集計などデータ活用がスムーズに行えるようになります。各自がデータを直接システムに入力する形式のほか、紙ベースで集めたデータを人力で入力する、またはOCR(Optical Character Reader)などを用いてデータ化する形式などがあります。

2.顧客対応のチャットボット化

電話やメールで行っている顧客対応の一部を、チャットボットで自動対応にします。問い合わせ内容で特に多いものや、製品の使用方法など汎用的な内容については自動対応とし、個別性の高い問い合わせ内容については人が対応するようにします。

そうすることで、対応に工数を要するものや柔軟な対応が必要な問い合わせにリソースを割くことができます。チャットボットの回答に対する満足度をアンケートなどでヒアリングし、不都合がある場合は改善しましょう。

3.BIツールによるマーケティングの自動化

BI(Business Intelligence)ツールで自社内に蓄積する膨大なデータを収集・分析・加工し、マーケティング業務に活用します。社内のデータを自動で集約できるよう既存システムと連携させ、いつでも最新のデータにもとづき分析できる仕組みを作ることで、より精度の高いマーケティングを実現し、自社のビジネス展開に役立てることができます。

4.顧客情報・対応履歴のデジタル化

CRM(Customer Relationship Management)ツールを用いて、顧客に関するすべての情報および自社内の対応履歴を一元管理します。これにより、その顧客に対して自社内からいつ・誰が・何のためにコミュニケーションしたかを確認することができます。履歴を踏まえることで、次にとるべきコミュニケーションが明確になり、最適なタイミングで効果的なアプローチができるようになります。

5.チャットツールによる情報共有

SlackやMicrosoft Teamsなどに代表されるチャットツールを、新たなコミュニケーションツールとして情報共有などに役立てることができます。テキストの形で履歴が残るため、これまで会話ベースで行っていた依頼事などの備忘にもなります。また、ツールによってはテーマごとにグループ化することもできるため、部署やプロジェクトごとに切り分けてノウハウやナレッジを蓄積することも可能です。

近年導入が進むテレワークなどでメンバーの就業場所が離れている環境下では、コミュニケーション不足に陥りがちです。会話調で気軽に交流できるチャットツールを用いれば、より円滑なコミュニケーションを実現できるでしょう。

6.請求書・契約書のデジタル化

これまで紙ベースで行っていた請求・契約関連の書類のデジタル化です。電子署名を用いたデジタル契約や電子請求書への切り替えは、紙資源や郵送費のコスト削減、印刷・封入作業などの工数削減にもつながります。また、書類の保管スペースも不要になり、書類情報の検索・閲覧ができるため、保管期限などの管理も容易になります。

デジタルシフトを推進する際の注意点や、成功させるために重要な5つのこと

メリットが多く感じられるデジタルシフトですが、アナログからの移行には注意すべき点もあります。移行に際しての注意点や成功させるポイントについて見てみましょう。

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1.デジタルシフトすべき箇所としない箇所を分ける

業務やサービスの内容によっては、すべてをデジタル化したほうがよいものと、アナログでの運用を併用したほうがよいものがあります。特に生活者向けのサービスなどのエンゲージメントにつながる顧客対応においては、アナログ対応ならではの優れた点が多く見られます。サービス利用者の特性と自社が実現したいゴールイメージを考え、本当にデジタル化すべきところをきちんと見極めましょう

2.既存のシステムが古い場合は刷新の必要性も生じる

デジタルシフトで新たなツールを導入しても、既存のシステムとの組み合わせによっては十分に機能させられないケースがあります。その場合、システム全体への影響度合いを鑑みて再度ツールの検討などを行いますが、ベースとなるシステムが古いと連携できるツールが限られる可能性もあります。

今回のデジタルシフトで実施すべき必須事項と最終的に実現したいゴールを明確にし、必要があれば既存システムの刷新も含めたプランを構築しましょう

3.スモールスタートで短期間の効果測定を繰り返し行う

デジタルシフトにおいては、ツールやシステムの導入費や維持費などの新たなコストが発生します。これらの費用は多機能であるほど高額になる傾向があるため、必要な機能をカバーした業務規模に合ったツールでスモールスタートするようにしましょう。将来的に機能拡充が必要な計画がある場合は、オプションとして機能を後付けできるWebサービスを利用するのも選択のひとつです。

また、コストを発生させる取り組みでは、費用対効果を意識して利用することも重要です。導入対象の業務における成果やほかの業務への影響など、定期的に費用対効果をチェックしましょう

4.こうありたいという「To-Be発想」を持つ

むやみにデジタルシフトするのではなく、自社が理想とするゴールを常に意識し、そこに近づくための手段として活用しましょう。現状から将来像に至るため解決すべき課題を可視化し、具体的な解決策を模索していきます。新たな取り組みについては都度効果測定を行い、想定した効果が出ていない時には施策を見直します。当初の施策に固執せずに、ゴールを見据えたうえで必要な方向転換を行える柔軟な姿勢で取り組みましょう。

5.外部のベンダーやサービスを有効活用する

自社内で可能なことと不可能なことをきちんと認識し、必要があれば外部のビジネスパートナーを活用しましょう。自社が解決したい課題や将来的に実現したいゴールを明確にし、それらを共有して具体的なプランに落とし込みます

無理に自社内で完結しようとするあまりに中途半端な結果となったり、あれもこれもと頑張って結果的に余分なコストや時間を費やしたりしないよう、外部の知見を適切に取り入れながら、着実なデジタルシフトを実現しましょう。

デジタルシフトを推進している企業事例

実際のビジネスにおいて、どのような視点でデジタルシフトを行えばよいのでしょうか。ここでは、効果的なデジタルシフトを推進している企業の事例を紹介します。ぜひ参考にしてみてください。

1.スマート予約で来店の混雑を軽減

回転ずしチェーン大手のくら寿司では、アプリを用いた顧客対応のデジタルシフトを実施。アプリでの予約を可能にし、さらに店内の混雑情報を提供することで、店舗内の混雑を緩和しています。また、持ち帰り注文用の受け取りロッカーをデジタル化することで、店員の対応時間を大幅に効率化しました。さらにセルフレジを導入し、店員がいなくても顧客が支払いを済ませられるようにしました。

2.メガネのオーダーデータをLINE上で管理

眼鏡販売大手のZoffでは、店舗やECサイトでの購入履歴をLINEで管理できる「デジタル会員証」を発行。視力の測定データや眼鏡の購入履歴をデジタルで一元管理することで、店頭での計測時間や待ち時間を大幅に削減することに成功しました。また、購入後のレンズ調整などの完了通知をLINEで送るようにしたことで、顧客は待ち時間を有効活用できるようになっています。

3.旅行代理店でビデオチャット接客を導入

旅行代理店大手のHISでは、全店舗にてビデオチャット接客を導入。来店しなくてもオンラインで顧客の相談に対応できる環境を構築しました。店舗が近くにない層の取り込みや、気軽な相談からの成約などの成果を挙げています。顧客とのコミュニケーション機会が増えるとともに、店内混雑の緩和と店舗運営の効率化、顧客エンゲージメントの強化につながりました。

「ありたい姿」になるための手段としてデジタルを活用する

今よりも便利になるイメージがあるデジタルシフト。たしかにアナログであることでコストや工数がかかっていたことを効率化し、その効果は大きなものかもしれません。しかし、デジタルシフトはあくまでも手段です。「まず導入ありき」では、本来の効果を発揮しません。大切なのは、自社が将来どうありたいかというゴールと、そのために取り組むべき課題を明確にすることです。その実現の手段としてデジタルシフトを効果的に活用していきましょう。

デジタルシフトに関するQ&A

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この記事のライター

戸所 奈央

戸所 奈央

新卒で大手人材サービスグループに入社、人材ビジネス以外の各種プロジェクトに参画の後、同グループの海外ブランドアパレルの輸入販売・外販部門にて広報を担当。1998年より同グループの技術系人材派遣・紹介を行う子会社に異動、広報として15年従事する。2015年よりフリーランスとして活動、若手広報担当者の育成や各種ライティング業務などを通じ、企業の広報活動を支援している。

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