PR TIMES MAGAZINE|広報PRのナレッジを発信するWebメディア
記事検索
title

企業理念とは?経営理念との違いや構成要素、浸透させる5つのポイントを解説

「企業理念がなかなか浸透しない」「社内外への適切な発信が難しい」と、感じている広報PR担当者も多いのではないでしょうか。

企業理念は、企業の存在意義や方向性を明確にし、従業員やステークホルダーが共通の価値観を共有するための重要な指針です。

本記事では、企業理念を浸透させるポイントや必要な構成要素、経営理念との違いなどを詳しく解説します。企業理念を組織の成長や信頼構築のきっかけにつなげられるよう、ぜひチェックしてみてください。

企業理念とは

企業理念とは、企業が事業活動を通じて実現したい目的や価値観、社会的使命を明文化したものです。

経営の指針として、従業員や関係者が共有すべき基本的な考え方や行動基準を示します。経営の方向性を明確にし、従業員が価値観を共有することで組織の一体感を高めるほか、長期的な戦略の基盤にもなり得ます。

また、顧客や取引先、地域社会に対し企業の姿勢や目的を伝えることで、信頼関係を構築する重要な役割も果たすでしょう。

経営理念との違い

企業理念が企業全体の価値観や存在意義、社会的使命を示す包括的な指針であるのに対し、経営理念はその企業理念を基に具体的な経営方針や行動指針を示すものです。

企業理念が「企業は何のために存在するのか」を明確にするのに対し、経営理念は「どのようにその目的を達成するのか」を示します。これは、日々の経営判断や業務の進め方に直接的に関わる内容を含むのが特徴です。

経営理念は実践的な指針に近く、従業員にとって行動基準や意思決定の参考となる重要な役割を果たします。企業理念が大枠を定義するのに対し、経営理念は具体的な行動に結びつける役割を担っているといえるでしょう。

企業理念を制定し、浸透させるメリットと重要性

企業理念を制定し、浸透させることは、企業内外でさまざまなメリットをもたらします。理念は単なる言葉ではなく、ブランドイメージの確立や取引先・顧客との信頼関係構築、組織の一体感を醸成し、採用成功率を向上するなど、企業活動全体を支える羅針盤として機能します。ここでは、企業理念を示すことで得られる具体的なメリットや重要性について詳しく解説します。

企業理念を制定し、浸透させるメリット

1.商品・サービスのブランディングの確立ができる

企業理念を基に商品やサービスの特徴や価値を明確にすることで、企業のブランドイメージが一貫性を持ち、顧客にとっての魅力がより伝わりやすくなります。

例えば、「この商品やサービスはどのような理念のもとに生まれたのか」を顧客が知ることで、その背景に共感し、購買意欲を高めることが可能です。企業理念の浸透は、企業全体の行動やメッセージに統一感を与え、他社との差別化にもつながります。

結果的に、企業の信頼性が向上し、ブランドとしての地位を確立するだけでなく、長期的な顧客との関係構築にも貢献するでしょう。

2.取引先への企業姿勢を示せる

企業理念を取引先に伝えることで、企業としての姿勢や価値観を共有し、信頼関係の強化を図ることができます。例えば、「品質を最優先にし、持続可能な方法で社会に貢献する」という理念を掲げた場合、取引先もその価値観に共感しやすくなり、長期的なパートナーシップの構築につながります。

さらに、「安さ」だけでなく、「品質」「信頼性」「付加価値」を重視する姿勢を示すことで、取引先に安心感を与え、企業の信頼性や透明性を向上させることも可能です。

3.株主・顧客へ企業姿勢を明示できる

企業理念を通じて、株主や生活者に企業の姿勢や方向性を伝えることは、信頼関係を築く重要なきっかけになります。

例えば、「環境保護と持続可能な社会を目指す」という理念を成長戦略や事業計画に反映することで、株主に経営の透明性や将来性を示すことができます。一方顧客には、理念に基づいた商品やサービスの提供を通じて、企業の一貫性を感じてもらうことが可能です。

企業理念の実践により、株主と顧客の双方から信頼を得られ、企業価値の向上につながります

4.組織内の一体感を醸成できる

企業理念を共有することで、従業員全員が同じ方向性を目指しやすくなります。これにより、部門間の連携が円滑になり、効率的な業務遂行が可能になるでしょう。

また、企業理念が日々の経営判断や業務の指針となることで、意思決定のブレが減り、迅速で適切な対応ができるようになります。さらに、新入社員の教育や既存従業員の成長促進にも活用することで、価値観に合う優秀な人材の確保にもつながるでしょう。

企業理念の浸透は、採用活動にも大きな影響を与えます。「お客さま第一主義」という理念が浸透している場合、営業部門が顧客の声を収集し開発部門が迅速に反映するなど、部門間の連携が強化されやすくなります。

5.よい採用の成功につながる

企業理念を新入社員研修などで共有することで、組織の価値観を早期に浸透させることが可能です。これにより、理念に共感する優秀な人材の確保や長期的な人材育成が促進されるため、よい採用につながりやすくなるでしょう。

前述の「4.組織内の一体感を醸成」「5.採用成功率の向上」において、企業理念の社内への浸透が寄与した企業の事例を以下で紹介していますので、併せてご覧ください。

企業理念の活用方法・活かし方

企業理念は、社内外それぞれで活用していくことで深く浸透していきます。ここでは、社内での具体的な活用方法に加えて、採用面やカスタマー領域など、社外に向けた活用方法についても解説します。

社内での活用方法・活かし方

企業理念は、組織文化の醸成、社員教育、意思決定の基準としての活用が有効です。例えば、社内報や掲示板、社内向けプレスリリースなどで理念を定期的に発信することで、従業員が理念に触れる機会を提供し、一体感やモチベーションを高めるきっかけになり得ます。

また、入社時や定期研修で企業理念を共有し、その意義を具体例を添えて説明することで、従業員の共感を促進し、理念を行動指針として落とし込みやすくなるでしょう。業務上の意思決定やトラブル発生時においても、理念がひとつの基準として機能しやすくなり、迅速かつ適切な対応につながります。

このように、企業理念は、従業員全員が共通の価値観で動ける組織基盤を築く重要な役割を果たします。

採用への活用方法・活かし方

企業理念を採用活動で活かすことで、理念に共感する求職者を集めやすくなり、定着率の向上も見込めます

例えば、求人情報や採用ページに企業理念を明確に掲載し、理念に基づいた職場環境や働き方のビジョンを伝えることで、自社の魅力を具体的に発信することが可能です。面接や選考プロセスでも理念を共有することで、求職者がその理念に共感しているかを確認でき、自社に合った人材の確保と、入社後のミスマッチの防止にもつながるでしょう。

さらに、内定後や入社時のオリエンテーションで理念を説明する機会を設けることで、新入社員への浸透が深まり、モチベーション向上のきっかけにもなり得ます。このように、企業理念は採用の段階から人材の成長を支える基盤にもなるでしょう。

カスタマー領域での活用方法・活かし方

企業理念をカスタマー領域で活かすことも可能です。従業員が理念を理解し、顧客との接点で実践できるよう教育することで、サービスの質が均一化されます。企業理念が顧客体験を通じて伝わるようになるでしょう。

例えば、企業理念を指針とした顧客対応マニュアルを作成し、実際の対応に活かすことで、クレーム時などにも一貫した対応ができるようになります。この結果、従業員は安心して仕事に取り組めるようになり、満足度も向上しやすくなるでしょう。

企業理念の考え方

企業理念を考える際は、「なぜこの企業が存在するのか」(存在意義)、「どこを目指しているのか」(目標・未来像)、「どう行動するのか」(価値観・行動指針)の3つを軸にすることが重要です。これらを具体的で共感を得やすい内容にまとめることで、従業員や顧客への浸透がスムーズになります。

さらに、ミッション(使命)、ビジョン(将来像)、バリュー(価値観)などをバランスよく取り入れることで、理念全体の一貫性と実用性が高まるでしょう。また、社会貢献や環境への配慮、持続可能性なども理念に含めることで、CSR(企業の社会的責任)や環境保護への姿勢を明確にし、信頼の向上にもつながります。理念を業務フローや顧客対応マニュアルに反映させることで、実務での活用も可能です。

なお、企業理念の設定や表現方法は企業によりさまざまです。「行動指針」「ミッション」「バリュー」など、企業の特色や目標によっても異なるでしょう。経営理念を基に詳細な行動指針を示す企業もあれば、ミッションやバリューなどに重点を置き、企業としての全体像を明確化するケースもあるでしょう。

企業理念に必要な構成要素

企業理念を構成する要素は、企業の存在意義や方向性を明確に示し、組織全体に一貫性をもたらします。ここでは、各構成要素の具体的な意味や企業活動への影響について解説します。

ミッション(Mission)

ミッション(Mission)とは、企業としての使命や目的を明確に記述したものです。「私たちは◯◯を通じて、◯◯を実現します」といった表現で、企業の存在意義や社会的役割をわかりやすく伝えることができます。

例えば、食品メーカーの場合、「安全で美味しい食品を通じて、人々の健康で豊かな生活を実現します」といったミッションを掲げることで、顧客や取引先と企業の方向性や価値観を共有できるでしょう。

ミッションを明確にすることで、従業員の業務指針となり、一貫性のある意思決定を可能にします。

ビジョン(Vision)

ビジョン(Vision)は、企業の将来的な目標や理想の姿を具体的に示すものです。「10年後にどのような企業でありたいか」「社会にどのような影響を与えたいか」を明確に記述することが重要です。

例えば、「2025年中に世界で最も信頼されるエネルギー企業を目指します」といった具体的な目標を掲げることで、従業員のモチベーションを高めるだけでなく、顧客や取引先にも企業の真剣な姿勢を伝えることができます。

バリュー(Value)

バリュー(Value)は、企業が大切にする価値観や行動指針を明示したもので、従業員の日々の行動や意思決定の基盤となる重要な要素です。「お客さま第一」「誠実である」といった端的でわかりやすい表現は、社内外に企業の価値観を効果的に伝えるメリットがあります。

さらに、「革新的なアイデアで社会を前進させる」「多様性を尊重し、新しい価値を創造する」といった独自のバリューを掲げることで、他社との差別化を図ることも可能です。これにより、顧客や取引先との信頼関係を構築し、企業の独自性を強調できるでしょう。

スピリット(Spirit)

スピリット(Spirit)は、企業の根幹にある精神や哲学を示し、企業活動全体を支える基盤となる要素です。理念や方針よりも深い価値観や情熱を反映し、組織全体の方向性を支えます。スピリットを加えることで、従業員が日々の業務で「企業らしさ」を実感し、一体感を生み出す役割も果たすでしょう。

例えば、「挑戦する心」や「地域社会への感謝」といったスピリットを明示すれば、従業員がその価値観を行動により結びつけやすくなります。また、スピリットは企業文化の醸成や長期目標の達成を後押しし、外部からの信頼構築にも寄与するでしょう。

スローガン(Slogan)

スローガン(Slogan)は、企業理念やビジョン、存在意義を簡潔に表現したフレーズで、企業の方向性や価値観を社内外に伝える重要な構成要素です。スローガンは、従業員にとって行動指針となるだけでなく、顧客やステークホルダーに企業の存在意義を短い言葉で伝える役割を担います。

例えば、「未来をつくる力」や「すべてはお客さまの笑顔のために」といったスローガンは、企業の目指す方向性や価値観を一言で伝えます。このように、スローガンは企業文化を反映すると同時に、ブランディングの基盤としても機能するといえるでしょう。

企業理念を浸透させるための5つのポイント

企業理念の浸透には、理念を明確化し、社内外で適切に共有する取り組みが欠かせません。浸透しやすい理念は、具体的でシンプルな表現や経営層の率先した実践、広報PR活動による発信など、多角的なアプローチが求められます。ここからは、企業理念を実際の行動や組織全体に浸透させるための具体的なポイントを紹介します。

ポイント

ポイント1.具体的でシンプルな表現を採用

企業理念を浸透させるには、抽象的な表現を避け、具体的でシンプルな言葉を採用することが重要です。簡潔でわかりやすい表現は、日常業務に取り入れやすく、従業員の行動指針として機能します。

例えば、「お客さま第一主義」という理念を、「すべての行動は顧客の満足度向上のために」と言い換えることで、従業員が具体的な目標をイメージしやすくなります。明確な理念を持つことで、全従業員が共通の理解を持ち、業務に一貫性を持たせることが可能です。

ポイント2.経営層が率先して実践

企業理念の浸透には、経営層が理念を率先して体現し、その行動や発言に反映させることが不可欠です。理念が経営判断や目標設定の基準となれば、組織全体の信頼性が高まり、従業員への影響力も強まります。

「環境保護」を掲げる企業であれば、経営層自ら省エネ対策や持続可能な資源利用を推進することで、理念が単なるスローガンに終わらず、実行力を伴ったメッセージとして従業員に伝わるでしょう。

ポイント3.採用・育成プログラムへの活用・活動方針の設定

企業理念を基に採用や育成プログラムを設計すると、従業員が企業の価値観や目指す方向性への理解を深めることができます。

例えば、採用プロセスで企業理念を明示しておくことで、自社の価値観に共感する人材の採用につながりやすくなるでしょう。社員研修などの育成プログラムにも企業理念を組み込むことで、自身の業務が企業にどのように貢献しているのかを理解でき、モチベーションの向上や自発的な成長の促進も期待できます。

採用や育成プログラムにも理念を活用することで、従業員のエンゲージメント向上につながるでしょう。

ポイント4.プレスリリース配信など広報PR活動を通じて社外に発信

プレスリリースの配信をはじめ、広報PR活動で企業理念を発信することも大切です。例えば、新商品や新サービスのプレスリリース発表時に企業理念を明記することで、発表案件とともに企業姿勢を示すこともできます。
例えば、福助株式会社がポップアップショップ「福助横丁」を開催した際のプレスリリースでは、企業理念があることでなぜ同社がこの取り組みをしているのか、のWhyの部分を伝えています。キヤノン株式会社が製品に再生鉄材料を採用開始した際のプレスリリースは、企業理念とともに過去の実績を記載することで、企業の取り組み、姿勢の一貫性を感じる内容です。
千寿製薬株式会社と第一三共ヘルスケア株式会社のような共同開発のプレスリリースには、それぞれの企業が目指すものが通ずることを示すためにも企業理念の記載が必要。また、側島製罐株式会社が新たな報酬制度を導入した際のプレスリリースのように、人事に関わる発表は、企業としての姿勢を示すために重要になってきます。
ほかにも、商品づくりに対する思いが感じられる株式会社松治郎の舗の新商品の発売のプレスリリースも参考にしてみてください。

公式ホームページやSNSでも企業理念が伝わるメッセージを発信することで、企業の独自性が伝わりやすくなるでしょう。

ポイント5.社内コミュニケーションを通じた社内文化の醸成

社内コミュニケーションは、従業員が企業理念への理解を深めるきっかけとなり、自らの業務との関連性を実感する機会にもなり得ます。それにより、理念が一方的なスローガンとしてではなく、日常業務に根付いた指針として機能しやすくなるでしょう。

キックオフミーティングや表彰式、社員研修などの社内イベント時に、理念を意識したプログラムを組み込むことで社内文化が醸成される機会が増え、企業理念が従業員への浸透促進に寄与します。

まとめ:企業理念の浸透には共感を伴う一貫した発信が重要

企業理念の浸透を目指すためには、明確で理解しやすい表現を心がけることが大切です。広報PR活動では、企業理念に基づいた一貫性のあるメッセージを発信することで、理念の浸透を後押しできるでしょう。

従業員参加型の社内外でのイベントや採用プロセス、従業員育成でも、理念に基づいたプログラムを組み込むことで理念を体感する機会を増やすことも重要です。

企業理念の浸透には少し時間がかかりますが、適切な取り組みを実施することで文化として根付かせることができるでしょう。

PR TIMESのご利用を希望される方は、以下より企業登録申請をお願いいたします。登録申請方法料金プランをあわせてご確認ください。

PR TIMESの企業登録申請をするPR TIMESをご利用希望の方はこちら企業登録申請をする

この記事のライター

熊谷英恵

熊谷英恵

フリーランスのSEOライター。2005年にアパレル業界に入社し、販売やEC運営、管理職を中心にプレス業務にも携わる。2020年に副業でWebライティングを開始し、2023年より専業ライターとして独立。toB向けメディアを中心に執筆活動を行い、企業の情報発信をサポートしています。現在は子育てを通じて子どもの心理に関心が広がり、チャイルドコーチング資格の取得に向け勉強中です。

このライターの記事一覧へ